凛世ちゃんがお香を焚いてお出迎えする話

「よろしくお願いいたします……」

 襖を開くと、凛世が三つ指をついて出迎えた。

「おお、凛世がやると雰囲気出るな」

 和室に並べられた布団、そこに佇む凛世の白襦袢、まるで時代劇か大河ドラマのワンシーンのようで、画になるなと思わずにはいられなかった。撮影したところで見せる気など毛頭無いが。

「勿体無いお言葉にございます……」

 凛世は白い頬をほんのり朱に染める。

「勿体無いなんて、布団もきっちり整えて細かい所まで丁寧で、これぞ凛世って感じがするよ」
「よく見て、いらっしゃるのですね……」

 凛世は顔を俯け、さらに頬を朱に染める。
 部屋に入ると、甘く芳しい香りが漂ってきた。

「この匂いは……?」
「はい……香を、少々……」

 墓参りの杉線香とは異なる、甘くコクのある香りは空気を濃密に変え、日常の寝室を淫靡な空間に仕立てる。

「お香を焚くだけで雰囲気って変わるもんなんだな、準備万端って感じだ」
「凛世は……今日、この日を……心待ちにしておりましたゆえ……」

 凛世の隣に座り、向かい合う。

「凛世……」
「はい」

 名前を呼び合い、心を確かめる。
 見つめる瞳が淡く濡れ、俺の一挙一動を心待ちにしているかのよう。
 その期待に応えるように彼女の肩に手を添え、その襟を開いた時だった。

「あ……」

 ふわりと、凛世の胸元から香りが漂ってきた。
 部屋の香と絡み合った、凛世の香り。
 甘い香の香りに乗って、凛世の髪、肌、汗……普段から感じる凛世の匂いが、今はより強く俺の嗅覚に訴えかける。
 きっと香を焚いている間に、彼女に染み込んだのだろう。その香りはスパイスのように彼女の香りを強く、強く引き出していた。

 息を吸うと、凛世の香りが鼻腔を満たす。
 息を吐くと、残り香の余韻が鼻を撫でる。
 吸えども吐けども香りは抜けず、むしろ呼吸をする度香りに包まれていくようで。
 凛世の香りに溺れるーーそんな表現が丁度良いと思う頃には、俺の意識はすっかり奪われーー

「あの、お気に召しませんでしたか……?」

 声に気づいて意識を取り戻すと、彼女は怯えた表情をしていた。

「いや、どうしてそう思ったんだ?」
「貴方さまが険しい顔をされていましたので……」

 そんなに怖い顔をしていたのか、眉間に手を当てると、随分と眉が寄っていた。気づかないうちに酷いしかめ面を晒していたようだ。

「すまない、違うんだ」

 それを凛世は俺の嫌悪と捉えたのだろう。
 違うんだ。否定したが、凛世はどこか申し訳なさそうな顔をしている。
 こうしている間も、凛世から漂う芳香は俺の理性を削っていく。

「なにぶん不慣れなもので、勝手が分からず……」

 違う、違う……違う!
 顔を暗くする凛世に、俺は焦りと興奮がないまぜになっていく。

「これからは、勝手な真似は慎みますので……」
「違うんだ!」
「きゃっ……」

 肩に添えた手に力を込め、凛世を布団に沈めた。
 また、凛世の香りが弾けて漂って……もう俺のブレーキは効かなくなった。

「もう、抑えられそうに無い」

 必死に振り絞るように、凛世に告げた。
 もう、限界なんだ。

「プロデューサーさま……あっ」

〜ここから理性が弾けたプロデューサーの獣のような交尾が始まる感じでお願いします〜
最終更新:2020年02月05日 12:48