今月の法話3

 GWも過ぎ少しずつ暖かくなってきました。5月は皐月とも呼びますがこの「皐」というのは神様へ捧げる稲という意味があります。5月は稲作の月なので、早苗を植える月ということで皐月となったのです。昔の人は秋に実る金色の稲穂を夢見ながら、一本ずつ青い苗を植えていったんですね。

 凛世教の大僧都であった凛世御数尼飯三杯(りんぜ・おかずに・めしさんばい)さまはこの青々とした稲苗を見て、村の娘を凛世さまの因子を植えつけた苗床にして人工的に凛世さまをお造りしようと思い立ちました。今となっては本山でよく行われる修行ですが、当時の人々にとっては人命を弄ぶおぞましい行いに見えたのでしょう、凛世御数尼飯三杯の呼びかけに対して娘を差し出す人はおりませんでした。

 そのことにひどく心を痛めた凛世御数尼飯三杯さまは、田んぼの水をわざとせき止めて稲を枯らし飢饉を起こすことで、口減らしに農民が子どもを捨てるのを待とうとお考えになりました。不幸にもその計画は失敗し、凛世御数尼飯三杯さまは国に混乱をもたらそうとした謀反の罪で処刑されてしまいました。

 処刑の前日、凛世御数尼飯三杯さまはこう記したそうです。

 その凛世すき

 凛世御数尼飯三杯さまはきっと、夢を見ることは決してありもしない空想を思い描くことではなく、稲作のように泥まみれになりながら一本ずつ苗を植えることだと言いたかったのかもしれません。皆さんの踏み出す一歩が、大きな実りにつながる苗の一本であることを願います。
最終更新:2020年05月12日 00:28