食というのは私たちが生きる上で欠かせないものです。人びとは長い歴史の中で食べることに対して常にその意味を問い続けてきました。
例えば食べる時間を交流の場とすることで互いの仲を深めてきましたし、より安全でおいしいものを食べるために調理を覚えました。食べてはいけないもの、食べるときにしてはいけないことを決めて生活を律する機会にもしました。生きるための栄養補給であった行為は人びとの生活の中で「食事」という文化に進化を遂げたのですね。
中国の薬膳では「同物同治」という考え方があります。病気などで弱った身体の部位と同じ所を食べれば強くなるという考え方です。例えば肝臓が悪ければ牛や豚のレバーを食べて直そうというわけです。クルミは脳の形に似ているから頭を良くするなんて面白い考えもありました。
凛世教の僧正だった凛世出栗務女体盛(りんぜで・くりいむ・にょたいもり)さまも中国へ修行に行き、この同物同治の考え方を学びました。当時の凛世教はあまり食を重要視していなかったのでその発想は目新しかったことでしょう。
それまでの凛世教では凛世さまが食べたもの以外口にしないことで凛世さまに近づこうという考えが主流だったため、公式で食べてないものを口にはできず栄養が偏っておりました。しかし凛世出栗務女体盛さまが同物同治を広めたことで「凛世さまに似ているものを食べれば凛世さまに近づけるのだ」と多くの僧侶が悟り、凛世教の食事は改善されました。今でも修行中に供される凛世大根や凛世しりしりもこの時に作られたとされています。
凛世出栗務女体盛はその後も同物同治の考えを深め、遂には自分は凛世さまになったと悟った末に自身を食べ始め殉教しましたが、その前日にこう言い残したと伝えられています。
その凛世すき
現代の食事は種類も豊富でどれも美味しいものばかりです。その一つ一つに凛世大根や凛世しりしりのような生まれた歴史があると考えると、当たり前に食べてきた料理も何だか味わい深くなるような気がしてきます。
最終更新:2020年05月27日 12:53