〜前回までのあらすじ〜
めでたくプロデューサーと結ばれた凛世!!やったね!!仕事だけでなくプライベートでも得難いパートナーを得て幸せそうに過ごす2人!!関係は順風満帆に思えたが……ある日!プロデューサーは夜のマンネリ化に危機感を抱いてしまう!!いかん、何か刺激を取り入れなければ、焦るプロデューサーの手元にあったのはアイマスク!!!ひらめいた!!プロデューサーの思いついた秘策とは一体……
〜〜〜〜〜〜
「目隠しをしながら……?」
プロデューサーさまと想いを通わせてから幾月、既に唇を重ね、肌も重ね、全てを曝け出したある晩のこと、プロデューサーさまは不思議な提案をされました。
「たまには趣向を凝らすのもどうかと思ってな。夜行バスで余ったアイマスクを使って、目隠ししながらしてみようと思うんだが……」
貴方様は赤く染めた頬を掻きながら話します。
恥ずかしそうに目を逸らす様子から察するに、どうやら貴方様にとっても未知の試みのようで。
思い返せば、これまでの夜伽は薄暗くしていたとはいえ、互いの肌の輪郭や身じろぎはしっかりと目に映っていました。
しかし貴方様が提案される目隠しというものはそれすらも見えぬ真っ暗闇。
何も見えないことも恐ろしいのですが、それ以上に──
「それは……貴方様の、お顔も見れないということでしょうか……」
それ以上に凛世は、寂しく思いました。
手を取り指を滑らせ凛世の全てに触れる事を許した時も。
貴方様の物が凛世を貫いた時も。
凛世が初めて果てた時も。
全て貴方様の優しい笑みがあればこそ、凛世は満たされたというのに。
何故、そのような意地悪を仰るのでしょうか。
「人間って情報の九割を視覚から得ているって聞いたことはあるか?」
「はい……似たような話を……」
「だからってわけじゃないけど……俺たちは多分自分で思う以上に見ること、見られることでイメージが固まってる。それを塞ぐことで、互いの見えなかった一面が見えてるくんじゃないか……って思うんだ」
プロデューサーさまは凛世の目を見て話しますが、すぐに顔を赤らめおどけました。
「って、こんな変な話になに屁理屈こねてるんだって感じだけどな。単純に興味がわいただけなんだ、すまん」
プロデューサーさまのお顔はみるみるうちに赤く染まってゆきます。
その表情を目に焼き付けてから、凛世はまぶたをゆっくり閉じました。
──互いの見えなかった一面
目を閉じれば、その表情も仕草も闇の中。
目を閉じれば、貴方様を知る手掛かりは声と、僅かな衣擦れの音と、体温、匂い。
耳、鼻、肌。
塞いだ目の代わりに、他の感覚が意識を研ぎ澄ましてゆく。
目を塞いでも、貴方様は──
「ふふ、見えぬことで見えるものとは……面妖でございます」
見えぬことで見えるものはあるのか、凛世にはまだ分かりません。
ですが今宵ぐらいは、その戯れに付き合うのも一興でございましょう。
✳︎ ✳︎ ✳︎
アイマスクは両目を覆い、凛世の視界を黒く塗り潰しました。
視界に映るのはアイマスクの繊維の隙間から漏れ出た光の粒、それがぼんやりと電灯の位置を示す程度。
「凛世、部屋の電気も落とすぞ」
プロデューサーさまがパチッとスイッチを鳴らすと部屋の灯りが落ち、その微かな光の粒すら消えて無くなりました。
目の前を黒が覆い尽くし、いよいよ凛世は真っ暗闇の中。
……。
…………。
凛世は先にベッドの上に座り貴方様を待つ身、貴方様の存在は足音でしか掴めません。
しかし足音など普段から意識して聞いたことなどなく、凛世の耳に入るのは微かな雑音のみ。
貴方様は、灯りを落としてからどこに行かれたのでしょう。
…………。
………………。
よもや──
「ああっ……」
数秒の無音が耐え難き恐怖に変わり、凛世は虚空に手を伸ばさずにはいられませんでした。
いずれ来ると分かっていても、待つ間が、刹那の無音が、怖くてたまらない。
「プロデューサーさま、どこに……」
無我夢中で手を振るい、貴方様の存在を探します。
腕を振る、空を切る。
手首を曲げて探る、空を切る。
手を握る、空を切る。
よもや、よもや凛世を置いて部屋を去ってしまわれたのでは──
「ここだ、凛世」
想像が悪夢に変わる寸前、温かい感触が凛世の手を包みました。
凛世の手を握る、貴方様の手。
──ああ、いつもの優しい温もり。
「悪い、俺も真っ暗だから慎重になりすぎた。怖がらせてすまん」
「いえ、凛世は……」
「いい。声が震えてる」
「あ……」
既に一つ、見えぬことで見透かされてしまいました。
貴方さまの前では、声も嘘をつけない。
「大丈夫、もう離さない」
「はい……凛世も、離したくありません……」
互いの手を握り、その感触を確かめ合う。
優しい温もりと、さらさらとした肌に、ゴツゴツとした骨の感触。
この暗闇の中、触れ合う手だけが二人を繋ぐ唯一の接点。離したくないと、いつもより強く感じます。
「……凛世」
触るぞ──凛世の名前を呼ぶ、その一言だけで理解しました。
「……はい」
それに対する凛世の返答も、一言。
「ひゃっ……」
凛世の返答が待ち遠しかったのか、プロデューサーさまの両手は直ぐにぬるりと凛世の腕を駆け上がります。まるで獲物を捕らえる蛇のように。
握り合ったはずの凛世の手から逃れ、二の腕を登り、凛世の肩、肩甲骨を這い──
とすん。
「プロデューサー……さま……?」
いつの間にか抱きしめられ、凛世は貴方様の胸の中にすっぽりと収まっていました。
頬が肩に触れ、より貴方様の存在を感じられます。
「あったかいな」
「はい……」
いつものように優しい、ゆっくりとした、包み込むような……それでいて力強く、凛世を決して逃さない、捕らえるような抱擁。
今は目の前が真っ暗な分、よりその感触が強く感じられます。
何も見えぬ闇の中、凛世の耳に入るのはプロデューサーさまの息の音。鼻に入るのはプロデューサーさまの微かな香り。肌に触れるのはプロデューサーさまの優しい抱擁。
まるで──
「世界に凛世と二人きりになった気分だ」
「ふふ、はい……」
この温かな暗闇が永遠に続けばよいのに、そう思うほどに心地よく時間が流れていきました。
「凛世……」
やがて背中に回された腕が解け、抱擁が終わりを迎えます。
両の手は手繰り寄せるように凛世の肩、首筋を伝い、頬へ。
そのまま、ぐっと身体が引かれ、顔を寄せられ──
「んっ……」
されることは一つ。
夜伽を始めるいつもの接吻(あいず)。
見えていないのに、思わず凛世は目を閉じました。
しかし、
「……ん?」
期待した感触は唇ではなく鼻頭に。
ふにっと湿った柔らかな感触は、見当違いの場所に着きました。
「ん……あれ?」
「プロデューサーさま……?」
「す、すまん!」
プロデューサーさまも失敗に気づき、慌てて唇を離されました。
思わぬ失敗に慌てる貴方様の声に、凛世は思わず笑ってしまいます。
「ふふっ……見えぬことで、見えぬものもあるのですね……」
「からかうなよ……」
真っ暗で何も見えませんが、貴方様の顔は真っ赤なのでしょう。
きっと、触れれば熱いほどに。
──触れてみたい
「では、凛世も……」
暗闇の中で灯った小さな衝動に、凛世は身を任せることにしました。
両手を貴方様の身体に這わせ、やがて両頬に添えて。プロデューサーの頬は思った通り、とても熱くなっていました。
そして凛世も同じようにキスを試みます。
今度は外さぬよう、親指で唇の位置を確かめながら。
「んむ、ちゅ……」
二回目は無事、貴方様と繋がりました。
唇から指を離し、頬を抑えていた手を貴方様の頭の後ろへ。
濡れた唇を絡ませ、唾液を塗り合い、甘い痺れが唇を溶かしてゆく。
目が見えない今、貴方様と凛世を繋ぐのは艶かしい水音と、首に回した腕と、唇の感触だけ。
貴方様が逃げることなんて絶対ない。頭では分かっていても、唇が求めて離れません。
はしたないと分かっていても、貪ることを止められません。
首に回した腕も、より深く貴方様に巻きつき、
「ん、凛世、ち、ちょっ」
「はぁ、あむ……ちゅ……」
くぐもった声は蕩けた脳の前では雑音に終わり、
「り、りんぜ、んむ、まっ……」
「ちゅう……ち、じゅっ……」
息を吸う間すら惜しく、離れる貴方様の唇を追いかけ、もう一度。
「ちゅっ……ちゅぶ……」
もう一度、「むちゅ……」もう一度──
「……り、凛世、待った!」
プロデューサーさまに肩を押されて我に返り──
「い、息、吸わせてくれ……」
「……っ!」
凛世は、己の痴態に気づきました。
「っあ、凛世は……」
なんと恥ずかしい真似をしていたのか。プロデューサーさまを無視して自分勝手に口付けに浸り、酔っていたなど。
呼吸を忘れるほどに没頭し、息を止めさせていたなど。
荒くなった貴方様の呼吸は、それだけ凛世が無理をさせていたことの証左に他ならず、
「がっつきすぎだ……」
「申し訳、ございません……」
凛世も頬が熱くなってゆくのを感じました。
「……見えないってそんなに心細いか?」
プロデューサーさまは優しく問いかけます。
「い、いえ……」
「なんかグイグイ来るというか、離したくないって言ってるみたいだったぞ」
「そ、それは……」
「……もしかして、怖いか?」
凛世の思いはまたも見透かされていました。
この暗闇で姿の見えぬ貴方様から離れる事が怖い。
さっきの口づけにしてもそう。離してしまえば、貴方様が闇に溶けてしまいそうで。
「……」
「……そうか」
悟られぬよう静かに頷いても、プロデューサーさまは察してしまわれたようで、頬がより一層赤らむのを感じました。
貴方様の言う通り、恐ろしいのも、寂しいのも本当でございます。
「もし続けるのが怖いなら、ここまでに──」
ですが──
「いえ……どうか、このまま……」
ですがそれよりも、この暗闇に浸っていたい気持ちが強いのでございます。
このまま貴方様と、二人きりの闇の中で。
「凛世……」
「このまま……この先、最後まで……どうか……」
「……わかった」
プロデューサーさまは静かに答えると、再度凛世の肩を掴みました。
そのまま肩を押され、凛世の身体は柔らかいベッドに沈んでゆきます。
「……あっ!」
プロデューサーさまの責めはすぐに始まりました。
肩の上を滑る、ざらざらとした生温かい感触。じっとりと湿った物が肩から首筋まで這いずり回り、たまに吸われるような感覚が肌を襲う。
これは……プロデューサーさまの、舌でしょうか。
「はぁっ、あっ……」
凛世の肌が舐められるたび、喉から声が漏れ出る。肌に走るぞくぞくとした感覚。
鎖骨に吸いつかれたと思えば、首筋を舐められ、不意打ちで耳に息を吹きかけられ……見えぬせいで次にどこを触られるのか分からず、全てが不意打ち。心の準備もできぬまま、凛世は貴方様にされるがまま。
ぐいと襟を広げられ、より肌が外気に晒されました。寝巻きの薄い布から解放された肌に涼しい空気が当たります。
そして緩んだ襟元は貴方様の手の侵入を容易く許しました。
「んっ、く……」
身体を這い回る違和感と、肌と肌が擦れる心地よさが混ざり、凛世の身を捩らせる。
ぞくぞくと震える。
貴方様の手は凛世の胸がお好きなようで、這い回った手が胸にぴとりと貼りつくとそこを集中して弄び始めました。
くるくると回りながら撫ぜたり、指先を沈めてみたり、波打つように指を踊らせたり、掌を包むように押し付けたり。
目の見えぬ暗闇ですが、貴方様の手先は手に取るようにわかります。
幾度となくその手で触れられたのですから。
「っ、はぁ……ぁっ」
いつ触れられてもこの感覚には慣れません。ぞわぞわとするようで、不思議と嫌悪感はなく、身体の芯に熱が溜まっていく感覚。
むしろ目隠しをした今晩はより強くなっているようですらあります。
凛世の反応に気を良くしたプロデューサーさまは胸の頂にまで指を伸ばしてきました。
ぴりりと、甘い痺れが胸先から走ります。
「ひぅ、あっ……あ!」
「いつ触っても、凛世はここ弱いんだな」
「それは……っ! あ、あなたさまが……そのようにっ、触れるから……っで」
意地悪を言う貴方様にささやかな反論を試みようとしますが、乳頭をきゅうと摘まれ封じられてしまいました。
逃れようと身を捩ったり振り払おうとしますが、貴方様の手は執拗に這い寄ってまた乳首に張り付き、刺激を与えてきます。
「や、やめ……」
「止めない」
凛世を逃すまいと、いつの間にか後ろから抱きすくめられ、凛世は貴方様の腕の中に囚われてしまいました。
「凛世、逃げないで」
「あ、あぁっ……ん、や、あっ……」
背中はプロデューサーさまの身体が温かく包み、胸はプロデューサーさまの手によって容赦なく責められます。
ずっとこのまま抱かれていたいのに、一刻も早く責めから解放してほしい。
そんな相反した思考を抱いている間も絶え間なく、容赦なく胸を弄ることを止めてくれない。
逃げ場もなく快楽に追い詰められていく身体は──
「ぃあ、あ、ああ──!」
貴方様の手中で容易く果ててしまいました。
爪先に力が籠もり、じわりと痺れる感覚が甘く全身を浸して、溶かす。
脳が、胸が、子宮が、痺れて真っ白に──
「り、凛世!?」
「──っ、はぁ…………あっ……」
「大丈夫か……?」
息を整え、身体の痙攣が治まった頃。
甘い痺れの余韻から覚めた頭は別の事を考え始めました。
「大丈夫……」
「そ、そうか……」
──大丈夫か
きっとプロデューサーさまは突然大声を上げた凛世に驚いて問いかけたのでしょう。
それが絶頂の嬌声だと気づき、安堵しながら気遣われたのでしょう。
ですが──
「何が、大丈夫なのでしょうか……?」
「え?」
凛世の腹の虫が収まりません。
「逃げる凛世を執拗に追い縋り……容赦無くいじめた貴方様が……凛世を気遣われるのですね……」
「そ、それは目隠しで見えなかったから仕方なく」
「仕方なく……?」
「……すまん」
やり過ぎたと、ばつが悪そうな声で謝るプロデューサーさま。
ですが、今晩はすまないの一言で済ませる気はございません。
「ではこれからする事も、目が見えぬ故……仕方のないことでございますね……」
貴方様の腰に手を這わせ、仕返しをすることにしましょう。
腰から足の付け根、その奥へと手を滑らせると、その中心に固く熱い感触がひとつ。
凛世を抱きすくめていた時にも当たっていたソレは、撫でさするたびにヒクヒクと反応しています。
「り、凛世そこは……」
「さて……何でございましょうか……? 目が見えぬ故、凛世には見当も……」
とぼけたふりをしながらも股座をさする手を止めません。
ズボン越しに爪を立て、その先端をカリカリと擦ると、貴方様も凛世と同じような嬌声をあげました。
「あっ……!」
「ふふ、貴方様も……可愛らしいお声を出されるのですね……」
「そこばっかり擦るのは、やめっ」
「そことは……どこでございましょうか……」
「分かってて言ってるだろ……っ!」
凛世がされた時と同じように、貴方様の反論を無視して凛世の手は貴方様の熱い猛りを弄びます。
……同じようにするなら。
「こちらも……同じように触って差し上げなければなりませんね……」
胸板に顔を埋め、シャツ越しに舌を這わせ、プロデューサーさまの乳首を突きます。
「ん……じゅっ」
「ひあっ!」
舌先でちろちろと擽った後に、シャツ越しに吸いたてます。
唾液を啜ってわざと音を立てながら吸うと、プロデューサーさまは呼応して声を大きくされました。
「り、りんっ、ぜ……ああっ!」
「んじゅっ……じゅぅ……」
唾液塗れにされた貴方様の胸先が、凛世の舌の上で硬さを増してゆきます。
飴玉を舌で転がすような感覚と、貴方様の嬌声が心地よく、凛世が貴方様を気持ちよくさせているのだと思うとより舌に力が篭ります。
──おや
貴方様の局部を触れていた掌に、わずかに粘ついた感触を感じました。
指で擦ると、ぬめぬめとまとわり付くこれは──
「ふふ……」
凛世が微笑みかけると、貴方様はおずおずと返事を返しました。
「凛世、その……悪かった──」
「──じゅ」
「あっ!」
ベタベタになった胸に再度口付け、甘噛みをしてプロデューサーさまの言葉を遮りました。
謝罪の言葉などいりません。
なす術なく果てた凛世のように、貴方様もなればいい。
「じゅる……んぐ……プロデューサーさま……ずず……」
「あっ、う……」
「プロデューサーさま……」
乳首を舐りながら、凛世は貴方様のズボンに手をかけました。
碌に抵抗する隙も与えず下されたズボンはスルスルと貴方様の脚を滑り、下着を巻き込んで貴方様から剥がれました。
「ま、待て……んっ!」
「じゅぷ……ぺろ……」
貴方様の抵抗を舌で封じながら、露わになった脚の付け根──その真ん中の、熱く反り立つ陽物に触れました。
手で握ると優しく脈動するそれは、ズボン越しに触れていた時よりもずっと熱く、少し握るだけで手汗をかいてしまいそうな程。
「ふふ、熱い……」
舌を胸からプロデューサーさまの身体を伝って下ろし、下腹部へ近づけます。
下へ降りるたび感じる、視界を塞がれていても伝わる熱と、雄々しい匂い。
そして目と鼻の先まで近づいた時、熱く脈打っているであろうそれにゆっくり口を近づけ、
「あむ──」
口の中に頬張りました。
「あっ……!」
プロデューサーさまの漏れ出た声に呼応して、口の中でぴくぴくと震える感覚が伝わります。
舌先には、熱く硬い竿の感触と、弾力のある先端の感触。
優しく舌でなぞり、唾液に浸し、舌先でくすぐると、より激しく脈打ち暴れます。
「じゅぷ……ん……ぇろ……」
「ぅ、凛世……」
「んっ、む……ちゅ……」
歯を立てぬよう気を付けながら口をすぼめて吸い、より口とソレを密着させると、貴方様の反応がより顕になってゆきます。
凛世の口では貴方様の全てを受け止められないのが残念でございますが、せめて舌の届く範囲は悦んでいただきたい──その想いが凛世の舌に熱を込めてゆく。
「ずず……ちゅぷ……」
唾液を溜め、潤滑剤代わりに舌を滑らす。
先端を咥え、舌をちろちろと転がすとビクビクと暴れ、亀頭がぱんぱんに膨らんでいます。
吐精を促すようにちゅうと吸うと、プロデューサーさまはがくがくと腰を震わせました。
「凛世……凛世! もう──」
もう限界でしょうか。まるで許しを乞うような声に、凛世の中の黒い感情がちくちくと刺激されます。
なら遠慮なく──
「れろ……はい、ほうふぉ……」
「……うああ、凛世っ!」
「んむっ……」
びゅうと勢いよく、口の中に温かい液体が吐かれました。
熱く、粘っこく、塩っぱく……苦い。
口の中いっぱいに広がる、濃厚な貴方様の匂い。
「ん……」
ベタベタと頬の内側を滴る精液を舌で拭い嚥下すると、喉をゆっくりと熱い感触が伝っていく。
喉の奥までプロデューサーさまに侵されているようで、ぞくぞくとした恍惚が背筋を震わせます。
「プロデューサーさま……」
飲み干した証にプロデューサーさまに声をかけた時でした。
ふわりと、頭に暖かい感触が乗りました。
優しい声と共に、優しく頭を撫でられる感触。
「これでおあいこだな……」
「ふふ……おあいこで、ございます……」
そう言いながらも撫でる手は変わらず優しいまま。
プロデューサーさまが撫でやすいようお腹から胸板に顔を寄せると、背中に腕を回され抱き締められました。
………………。
そのまま無言で時間が流れます。
撫でられ、抱かれ、温もりに包まれる無音の暗闇。
貴方様がいる、怖くない無音。
肩を擦り合わせるとくすぐったそうに返し、頭を撫で返される。
肩を撫で返すと、背中を撫で返される。
撫でつ、撫でられつつ……くすぐったさに身を捩らせながら全身を密着させるとまるで一つに溶け合っていくようで。
身体の奥で燻る焦ったい熱がまた、ふつふつと沸いた頃、
「凛世、そろそろ……」
「はい……」
凛世の太ももに、熱く硬い感触が再び起き上がってまいりました。
もちろん凛世も、とっくに。
……この先に何をするのか、語らずともお分かりでしょう。
「……服、脱がなきゃな」
「ふふ、はい……」
乱れに乱れ、もはや肌を隠す役目を捨てた服を脱ぎ、一糸纏わぬ姿に。貴方様はいつの間にかゴムを付けておりました。忘れないようズボンのポケットに入れていたとのこと。
互いに生まれた姿のまま、向かい合わせで再び抱き合いました。
「……どうぞ」
腰と腰を当てがい、貴方様の陽物に手を当て、凛世の秘部の入り口へ。
ぬちゅっとした粘っこい水音が、凛世の準備を伝え──
「……んあっ!」
いきなり腰を深く引き寄せられ、深く突かれました。
「プロデューっ……サーさ、ま……」
ずちゅ、ずちゅ──水を打つような音と共に、全身の力が奪われてゆく。
普段よりも激しく動いている気がするのは、貴方様が遠慮せず動いているからでしょうか。
それとも目隠しされ、意識が結合部に集中しているせいでしょうか。
ごりごりと擦られるたび、頭がぱちぱちと弾け、全身がふやけていくような気持ちよさが襲います。
「ふぅ……ん……んぐ……」
凛世の呼びかけに、プロデューサーさまは答えません。
荒い息を吐きながら行為に没頭し、抽送を繰り返しています。
「んっ……あ、あっ……」
アイマスクが涙で滲み、湿る。
何も見えず、容赦なく責め立てられ、どんどんと甘い痺れが全身を浸していく。
「はぁっ、はぁ……凛世……」
「はい……ぁあっ!」
名前を呼ばれるたび、その痺れは重さを増していくようで、きゅうきゅうと秘部が締まっていくのを感じます。
……もしや、普段からそうだったのでしょうか。
「気付いてなかったのか、いつもそうだったぞ」
「……っ! それは……恥ずかしい……」
こともなげに言う貴方様の態度に、前からそのような痴態を見せていたのだと悟り顔が熱くなる。
「凛世の名前を呼ぶとすごく反応するから、嬉しかったんだけど……無意識だったんだな」
「……申し訳……」
「いや、すごく可愛い」
「……っ」
さらに顔が熱くなる。
何と返しても甘い言葉を囁かれそうで、言葉に詰まってしまいます。
「凛世」
ですがそんな凛世などお構いなく、貴方様は耳元で甘く囁きかけます。
「凛世」
「……ぁっ」
「凛世」
「ひゃっ……」
「りんぜ」
貴方様の声が耳に溶けて、頭が蕩けてしまいそう。
囁かれている間も抽送は変わらず激しく、どろどろに乱していく。
──あ
「プロデューサーさま……もうすぐ……」
しつこく責められた果てに快感が溢れ出る、その予兆を感じる。
これ以上続くと、気持ちいいが溢れて、飛んでしまう。
「凛世、俺ももう……」
プロデューサーさまも息が荒くなり、腰の動きが速くなっていきます。
ぱちぱちとした痺れがどんどん頭を埋め尽くしていく。思考が、理性が、白く、白く染められていく。
もう凛世は──
「凛世、もう……っ!」
「はい……凛世も………っ!」
────っ
嗚呼、何も見えなくて良かった。
こんなにも熱く惚けた顔を見られずに済むのだから。
こんなにも緩んだ口元を見られずに済むのだから。
ですが貴方様のお顔を見れないのは、やっぱり残念でございます──
✳︎ ✳︎ ✳︎
ぱちん。
軽やかなスイッチの音と共に、久しぶりの光が目に入りました。
暗闇に慣れた目が光に驚き、瞬きます。
「凛世、もう見えるか」
声のする方に向くと、ようやく目にする貴方様の姿。時間にして数時間程度の戯れでしかなかったのに、その姿を見るのは随分久しぶりな気がします。
「はい……」
「ありがとな、俺の我儘に付き合ってもらって」
「いえ……とても、新鮮な経験でございました……」
「それならよかった」
後始末をこなしながら、今宵の営みについて感想を述べ合います。暗かった、心細かった、温かかった……気持ちよかった。
「シャワー、先浴びてきたらどうだ」
衣服を整えながら、プロデューサーさまは尋ねます。
互いの身体を見合うと、今宵も随分と汚してしまったようで、それを気遣ってのことでしょう。
「いえ……」
ですが凛世は首を横に振ります。
「俺はまだ後片付けが残ってるからさ、その間にシャワー浴びた方が面倒が少ないだろ」
「いえ、今宵は……」
「……? どうしたんだ?」
首を横に振る凛世に貴方様は首を傾げます。何故なのか、理解は難しいでしょう。
それは貴方様の姿を目にしたことがきっかけでした。
暗闇の中で貴方様の姿を焦らされ続けた燻りでしょうか。
闇の中でも愛してくださった貴方様への執着でしょうか。
今宵の営みを終えて……もう少し、甘えたくなったのです。
「今宵はもう……片時も離れずにいたいのです……」
「え……?」
「ですので……後片付けも、シャワーも……ご迷惑でなければご一緒に……」
「え!?」
「ご迷惑……でしょうか……?」
「いや、別にいいんだがどうして……」
「では……決まりで……ございますね」
貴方様へ駆け寄り腕を抱くと、困惑した表情を浮かべます。
暗闇の中で触れた腕の感触、体温。この腕が、身体が、凛世を愛してくださったのだと、目を閉じると分かります。
ですので今宵の残りは目を開いて、プロデューサーさまのお姿を存分に堪能させていただきますね。
最終更新:2020年08月24日 01:51