今月の法話9

 凛世教は凛世さまを主神とし、凛世さまはこの世に後継者をお作りになりませんでした。そのため、凛世さまの血というものはこの世にはございません。
 しかし凛世さまに近づきたいと考えるのは至極普遍的な道理であり、凛世さまの血をいただきたいという信徒は昔より数多くおりました。
 その一人、当時の凛世教の大律師であった凛世首筋名奴名奴那(りんぜの・くびすじ・なめなめな)さまも凛世さまの血を強く望んでおりました。

 話は変わって、皆さまは錬金術をご存知でしょうか?
 人を不老不死にする、金を生み出すとされる賢者の石を生み出そうとする現代からすればオカルトのような試みですが、科学という学問の先駆けでもあります。

 さて、いきなり錬金術の話をして困惑されたかもしれませんが、実は凛世首筋名奴名奴那さまも西洋の錬金術から着想を得て実験を始めたのです。
 凛世さまの血をいただくため、生娘の生き血を啜り凛世教のチャクラと融合させて体内に凛世さまを宿そうと考えました。どこかの村からさらってきた生娘を贄に捧げ、どうすれば凛世さまを宿せるか四六時中考えてきたのです。

 しかしこの試みは当時の人々からはよく思われませんでした。今でこそ凛世教ではありふれた光景ですが、当時の人々にとっては人命を弄ぶ残虐な行いに見えたのでしょう。
 不幸にも時の幕府に目をつけられ、凛世教は歴史上13度目の焼き討ちに遭ってしまいます。
 焼き討ちに遭った凛世首筋名奴名奴那さまは逃亡を続けながらも研究と誘拐を続けますが、結果は実らずやがて幕府に捕まり処刑されてしまいます。捕まる前日、こう言い残したとされています。

 その凛世すき

 凛世首筋名奴名奴那さまの試みも錬金術も、歴史的観点から見れば失敗に終わってしまいました。しかしながら錬金術は後世の化学の発展への架け橋となり、凛世首筋名奴名奴那さまの殉教はありがたい教えとなって凛世教を支えてまいりました。
 たとえ思う結果が出せずともその過程は決して無駄にはならぬ。凛世首筋名奴名奴那さまの教えは私たちに諦めないことの大切さを今も説き続けております。
最終更新:2021年02月26日 19:08