幸子ちゃんのために身体を張る話

 なんかAV出演で賑わってるけどぼくと幸子ちゃんの苦い経験を語らせてもらうね。

 ぼくことふじえるくんは下積み時代の輿水幸子ちゃんのお仕事を貰うために各所を走り回ってたんだけど、その中にはちょっと裏のある汚い人のところに行って頭を下げなきゃいけないときもあったのね。その人は金に物を言わせて私利私欲のまま振舞うことが理不尽に許されてて、輿水幸子ちゃんの営業用のPR書とかを舐め回すような目つきで厭らしく見て、そのお偉いさんが目を細めて、「どうしても私からお仕事が欲しかったら……この子を…分かってるね……?」ってぼくに問いかけるのよ。ここでこの人の機嫌を損ねて幸子ちゃんが干されるのもいけないし、幸子ちゃんがようやく手にできそうな大きな仕事だからとぼくは泣く泣く相手の条件を呑んだのよ。従うしかなかった。

 で、その日の夜から三日三晩ぼくはそのお偉いさんの醜い豚のような身体と醜悪な怒張に犯され続け奉仕を強要され、さらにその次の日からはお偉いさんに犯されるだけに飽き足らず、お偉いさんお抱えの男娼(みんな淫乱テディベアみたいなおっさん)に輪姦されたり、挙げ句の果てにお偉いさんやら男娼の糞便を身体中に塗りたくられ口に含まされと、思いつく限りの辱めを受け、その様子をビデオに撮られたのよ。

 それが終わって自宅に帰った頃にはもう涙がボロボロこぼれて、もう死んでしまいたいって何回も思って泣き続けたのよ。でもお仕事をくれたのは本当で、この案件を幸子ちゃんに見せたらきっと最高の笑顔で喜んでくれるだろうって思ったら死ねなくて、こんな泣き腫らした顔も幸子ちゃんに見せるわけにはいかないって決意して、翌日全てを黙って必死に繕った笑顔で幸子ちゃんにお仕事が取れたことを報告したのよ。そしたら幸子ちゃん

「フフーン!やっぱりカワイイボクにどんどん仕事が来るのは当然ですね!ふじえるさんは感謝してください!」

 って言うんだけど口がにやけて嬉しそうなのが全く隠せてないのよ。その笑顔を見て、ああ、ぼくが身体(主にお尻とお口)を張った甲斐があったな、あれは決して無駄じゃなかったんだ、死ななくてよかった、って思ったらやっぱり涙を堪え切れなくて、幸子ちゃんの前で情けなく号泣しちゃったのよ。そしたら幸子ちゃん慌ててぼくを慰めてくれたんだけどその日しばらく泣き続けちゃったのよ。それがKBYDのはじまり(大嘘)。


 その後はぼくと幸子ちゃんの頑張りもあって順調に人気を集め、もう少しでトップアイドルに輝けるって時に、幸子ちゃん宛に差出人不明のビデオレターが届くのよ。今時VHSなんてご家庭にないもんだから、事務所に誰もいない時に幸子ちゃんがどっかから古いビデオデッキを取り出してそれを再生したら、ぼくの汚辱にまみれた姿を映した映像が流れてしまったのよ。ぼくが醜く肥え太った中年の男性に犯され続けたりその怒張を口で慰めたり、男性に囲まれ糞便を(自分で想像してて本当に気持ち悪くなったから割愛するね。現実のぼくはまだ処女だからね)という映像が240分ずっとあるのよ。それを見て言葉を失った幸子ちゃんのもとにタイミング悪く営業から帰ったぼくが戻ってきてしまうのよ。誰もいないはずの事務所に戻ったぼくはビックリ。かつてのぼくの姿と、それを見て驚愕と困惑と絶望が入り混じったような表情で固まっている幸子ちゃんの姿があるんだから。

 ぼくが戻ってきたことに気づいた幸子ちゃんはぼくに

「ねえ…あれって嘘ですよね……?ふじえるさんじゃないですよね………!?こんなことするわけないじゃないですか………!」

 って問い詰めるのよ。でも幸子ちゃんは頭が良いから、映像の男性とぼくの、首元と顎のホクロが一致してることに気がついてしまってるのね。だからぼくはただ認めるしかできなかった。どうしてこんなことになったか話せるわけがなかった。だって話したら絶対幸子ちゃんは責任を感じてしまうから。話したら本当は幸子ちゃんの成功のきっかけが、幸子ちゃん本人の実力じゃなくてぼくの枕営業だったって言うようなものだから。ただ謝ることしかできなかった。でも幸子ちゃんの混乱は治らなかった。

「なんでこんなことをしたんですか!」
「その汚れた顔でこれまでボクと顔を合わせてきたんですか!なんで!!!!」
「その!!!汚い手で!!!!ボクに触れてきたんですか!!!!!」
「汚らわしい!!!!!!」
「あの時の握手も!!!!!あの時の言葉も!!!!ウソだったんですか!!!!!!」
「汚い!!!!汚い汚い汚い!!!近寄らないでください!!!!!」

 思いつく限りの言葉を吐き出して、流せる限りの涙を流して、幸子ちゃんはそのまま事務所を飛び出して逃げ帰ったのよ。それを見てぼくは「ああ、ここでぼくの役目は終わりだな」って悟って、一晩かけて引き継ぎ資料を作成した後に346のホープ武内くんに幸子ちゃんに引き継いでもらった後は遺書のように辞表を残して朝方に失踪したのよ。



 その後、CPに再編成された輿水幸子ちゃんは少しずつショックから立ち直り、武内くんや美城専務の厳しくも優しい支えもあったおかげが無事トップアイドルとなり、その後いろんなことやあんなことやこんなことやなんやかんやあって、現世を混沌と絶望に陥れようと企む悪意の生命体、"原罪ノ獣(ギルティ・フリーク)"との世界の存亡をかけた戦いに身を投じていくわけよ。

 その戦いの中で、かつてのあのお偉いさんが、"原罪ノ獣(ギルティ・フリーク)"の中でもトップクラスの7体の存在"七聖使徒(セプテム)"のうちの一体だったことが判明するのね。幸子ちゃんがそこでお偉いさんからあの映像の真相を知らされるのよ。で、幸子ちゃんがぼくが仕事を取ってきたときにぼくが涙を流した理由や、ぼくを突き放してしまったことやらで精神的に追い詰められてしまうわけ。当然幸子ちゃん座り込んで深い後悔に苛まれ茫然自失となってしまい、 その隙をお偉いさんが狙って攻撃を放とうとしたとき、

"熾天使-セラフィム-"として再転生したぼくが駆けつけるのよ。実はぼくは"熾天使-セラフィム-"だったけど幸子ちゃんをプロデュースしたくてこの時空に来たわけ。役目を終え失踪した後は"熾天使-セラフィム-"として草葉の陰から幸子ちゃんを守ろうとしたら"原罪ノ獣(ギルティ・フリーク)"に魂を穢された影響でなかなか時間がかかってしまってたんだ。その影響で"熾天使-セラフィム-"としての力も完全には発揮されず、もし本気を出したら聖なる光に穢れた魂が耐え切れず肉体が消滅するリスクを背負ってしまったんだ。だけど因縁を断つためになんやかんやでとりあえず本気出したら"原罪ノ獣(ギルティ・フリーク)"やら"七聖使徒(セプテム)"やら全部滅ぼすことに成功したのね。

 でも肉体の消滅は免れずまた幸子ちゃんと涙ながらの別れになるんだけど、今度はずっと離れないようにって僕の魂をくすんだ赤色の石に封印したペンダントを渡して消滅するのよ。そっから輿水幸子ちゃんは自称・天使を名乗るようにってこれなんの話だったんだろう。
最終更新:2016年05月30日 20:14