幸子ちゃんとの戯れをありすちゃんに見つかる話

 またいつものように幸子ちゃんを可愛がってたらたまたまうちの事務所に顔出しに来た兵庫の狂犬こと橘ありすちゃんに見咎められてあわや通報までいきそうだった話をするね。

 まあいつものように仕事がひと段落ついて幸子ちゃんと事務所のソファお戯れタイムしてたのね。で、しばらくしてたらふと顔上げたら俺を信じられないような目つきで睨む、キレたジャックナイフこと橘ありすちゃんと目が合ったわけだよ。ぼく(あんれー?なんでうちの事務所に世界に牙剥く無差別論破マシーンこと橘ありすちゃんが来てるんだー?)って思ったけどそういえば先輩のプロデューサーと話があってその担当アイドルも先にこっち来るってことすっかり忘れてたことを思い出したのよ。
 (あっやっべーなこれ通報されても美城専務にチクられても詰みじゃんやっべー)って急いで幸子ちゃんから離れて、冷や汗ダラダラ流しながら「おっありすちゃんが来たのか。ま、まあここに座りなよ。お茶でも飲むかい?紅茶もあるよ」って平静を装って取り繕おうとしたけど、インテリジュニアヤクザこと橘ありすちゃん俺を見る目がもう既に人間を見るそれじゃないの。

「……っ!芸能界である以上多少はそういう大人もいるとは思ってましたが、まさかこんな近くにいるとは思いませんでした」
「待ってくれありすちゃん、これは」
「気安く話しかけないでください。この件は事務所に報告させてもらいます。いい年して幸子さんみたいな女の子にはしたなく迫って、恥ずかしくないんですか!?」
「違うんだ。これは誤解で幸子もイヤなわけじゃ」
「そうやって立場を利用して同意を強要する!それが大人のやることですか!卑劣すぎます!!」
「ワ、ワン……」
「あのー、ありすさん……ボクならヘーキですよ?」
「幸子さんも!そんなに優しくするからつけこまれてしまったんですよ!こんな人に同情なんかすることありません!今すぐこんな人クビにしてもらいましょう!!」
「クゥーン……クゥーン…………」
「そ、それは困ります!ふじえるさんにはボクのプロデューサーをしてもらわないと!」
「大丈夫です、幸子さん。幸いにしてうちは大きい事務所ですからすぐに別のプロデューサーが見つかるはずです。それなら幸子さんの仕事に支障はないはずです」
「ワォーン………キャヒィン、ヒーンヒーン……」

 って具合でどんどんクソコテを加速させていくありすちゃんと焦る幸子ちゃんと情けない犬のふじえる。烈火纒身クールタチバナこと橘ありすちゃんを抑えられるものは誰一人いない、俺は死刑宣告を待つのみ、となったときにちょうど先輩が来てありすちゃんを宥めてくれて助かったわけ。

 流石にぼくがこれ以上何言ってもいちご大好きチョロカワガールこと橘ありすちゃんは聞く耳を持ってくれなさそうだから幸子ちゃんと別室に移ってもらって幸子ちゃんに説得を任せたのよ。ぼくはもちろん先輩と仕事の打ち合わせね。

 その後しばらく経ってから2人と合流して、とりあえず仕事の説明を進めた上で、今日のところは解散となったわけ。
 合流したときのありすちゃんはさっきまでの敵愾心丸出しの剣呑な雰囲気は一応収めてくれてたのよ。警戒心というか冷たい目線は相変わらずなんだけど。でもあのカミソリドラゴンエンプレスこと橘ありすちゃん相手に幸子ちゃんが説得に成功したのは驚いた。だから説得の技能値初期値のクセしてやるな、後で技能値にボーナスあげようかなと思ったんだけど今度は幸子ちゃんがそわそわしてるんよ。なんだろうな、おかしいなって思ったら別れ際にありすちゃんから

「ふじえるプロデューサーのことは分かりました。見逃してあげましょう。でも、大人なんですからもう少し節度を持って行動してください」

って言われたから、ハハーン、これは幸子ちゃんがなにかやらかしたなって解散後幸子ちゃんを問い詰めたら、案の定だった。
 なんでも説得が議論になっていき、話の焦点が合意か合意でないか、なぜ合意するのかということに移っていった結果、ぼくのことが好きみたいなニュアンスの発言をして自爆してしまったらしいんよ。カワイイ。まあでも元はと言えばぼくの行動が原因だし多少は自省して控えめにしようかと少し懲りたお話でした。

 後日一連の騒動を耳にした美城専務とポエムバトルを繰り広げさせられたのはまた別の話。
最終更新:2016年05月30日 20:58