番組の企画でとある洞窟にロケの撮影にいったら迷子になった話をするね。
とあるバラエティ番組の人気企画で「ゆけゆけ!輿水幸子探検隊」というのがあるのね。世界一カワイイ輿水幸子ちゃんがそのカワイさを広めるという名目でさまざまな場所で人やらUMAと出会って、最後は幸子ちゃんのブロマイドを渡して締めるっていう流れなんよ。そこまでの幸子ちゃんが困難に立ち向かう姿や焦る姿に人気があるんだけど、斜に構えた自称テレビをわかってる人はこんなのヤラセだとかバカにするのね。でも知ったこっちゃない。この企画はカワイイ幸子ちゃんを愛でる企画だ。すっこんでろ。
探検隊メンバーはうら若き新鋭の冒険家、輿水幸子隊長とその護衛兼囮役の担当プロデューサー、ふじえる隊員がレギュラーで、たまにキノコと聞いて駆けつけるアイドルやら魚と聞いて駆けつけるアイドルやら幽霊と聞いて駆けつけるアイドルやらがゲスト隊員でやってくるという感じなのよ。
まあ今回はぼくと幸子隊長の二人で、未開の山中にある謎の洞窟に潜むとされるUMA、シアエガを見つけろ!っていう内容でロケしたのね。
国内某所、この洞窟がある山は昔から山の主がいるという伝説があり、山の主は立ち入るものを一切許さず呪い殺すとされているのよ(ここでそれっぽいイメージ画が流れる)。
そのため古来より近隣に住む人々は近寄ろうとせず、その山を「冥府の門」(ここで山の写真と共におどろおどろしいフォントで「冥府の門」というテロップが流れる)と呼んで畏れたわけ。
そんな説明を受け怯えぼくことふじえる隊員と幸子隊長。でも幸子隊長のカワイさを世界に広めるためはこの山の洞窟にたどり着かなければならない。この死の山、「冥府の門」を。(ここで怯える二人の様子と共におどろおどろしいフォントで「冥府の門」というテロップが流れる)
なんか「⇒ハイキングコース3.6km」とかいう立て看板が見えるけど、誰も近寄らない「冥府の門」を。(ここで怯える二人の様子と共におどろおどろしいフォントで「冥府の門」というテロップが流れる)
カメラに気づいた一般のハイキング客が笑顔で手を振ってるけど、呪いの死の山、「冥府の門」を。(ここで怯える二人の様子と共におどろおどろしいフォントで「冥府の門」というテロップが流れる)
洞窟にたどり着くまでの道中は苛烈を極めた。ヘビが尻尾から落ちて襲いかかってきたり、動かないサソリが襲いかかってきたり、上から巨大な岩がポヨーンポヨーンとバウンドしながら転がってきたり(間一髪のところで幸子隊長は回避した!ふじえる隊員は間に合わなかった!なぜか幸いにも無傷だった)、次々と困難が襲いかかってくる。(ここで「これが山の主の呪いなのか…!?」とおどろおどろしいテロップが流れる)
それらの困難を乗り越え、ようやく洞窟の入り口に辿り着いた二人(とカメラさん)。
しかし入り口には、これまで山の主が死に追いやってきた挑戦者だろうか、見た目はボロそうだがどれも綺麗に形が残ってる骸骨の山が見える。当然怯える二人!しかしここまで勇気を持って乗り越えてきたのだ。二人は顔を見合わせ、決意したかの様に頷き合い、洞窟の中へその一歩を踏み出す!!カメラさんの後に。
洞窟の中は何故か歩きやすい階段が舗装されており、何故かアルミ製の手すりが取り付けられている(「山の主が住んでいるのか…!?」というテロップが流れる)。
一行はこの危険な洞窟の道を慎重に歩き進んでいく。
すると、突如洞窟内に大きな揺れが発生する!(その場にうずくまる二人!カメラもあまりの揺れの大きさに二人の姿を捉えることができない!決してカメラを大袈裟に揺らしているわけではない!)
揺れが収まった頃、幸子隊長がふじえる隊員が消えたことに気づく!必死に幸子隊長がふじえる隊員を呼びかけるも、ふじえる隊員の返事は無い。ふじえる隊員が行方不明となり探検隊は幸子隊長一人(とカメラさん)だけになるも、任務を遂行ためには洞窟を進むしか無いのだ。涙をこらえ幸子隊長は洞窟を進んでいく。
やがて幸子隊長が洞窟の奥に辿り着いた時、そこで待っていたのは黒人の中年男性だった!(「これが山の主か!?」というテロップの後CMが流れる)
~~~輿水幸子のカワイイCMが流れる~~~
洞窟の奥で幸子隊長を待ち受けていたのは黒人の中年男性だった!(「これが山の主か!?」というテロップが流れる)
恐る恐る幸子隊長が話しかけると、男は「ダレダ……?」と低いうなり声のような声で返す。幸子は息を飲むも、意を決して「ボクは世界で一番カワイイアイドル、輿水幸子です!」といつもの自己紹介をするも「アイドル……ナンダソレハ………ナニモノダ……?」と返事をする。どうやら男はアイドルを知らないらしい。話を聞くと、彼はこの洞窟でずっと暮らしていたらしく、テレビも何も知らないで生まれ育ったそうだ。当然衣服も布切れのようなものを身にまとっただけの簡素な服だ(手首に腕時計の跡が見えるが彼は腕時計など知るはずもない。きっと見間違いだろう)
そんな彼にアイドルとは何か話したあと、「アイドルを知らないアナタは幸運ですね!この、一番カワイイボクが初めてのアイドルなんですから!是非ボクのカワイさを知ってください!」といつもの様にブロマイドを渡す幸子隊長。彼は不思議そうに受け取ったあと、「サチコカ……イイダロウ……ファンニナッテヤル」と笑顔を見せた!さすが輿水幸子!また一人ファンを増やすことに成功したのだ!
彼と握手し互いに笑顔を見せる二人。こうして今回の輿水幸子の冒険は成功に終わった……
で、ぼくことふじえるなんだけど、何故か洞窟の中で大きな揺れに出くわした後目を開けたら二人とはぐれたのね。あ、二人って幸子ちゃんとカメラさん。
でも一応念のためにぼくもCCDカメラ持ってきてて、ぼくの様子も写してあとでスタッフに見せようかなってカメラを回して洞窟内を探索したわけよ。
洞窟を散策するんだけど、なんかさっきまでの洞窟と様子が違うというか、国内にこんな広い洞窟あったっけ?ってくらい広いのね。しかも全然舗装されてないし薄暗いし。
とりあえず幸子ちゃんはなんとかなるとして、ぼくはとっとと洞窟から出なきゃなあって思って歩くんだけど、全然どこかわかんない。歩いても歩いてもずーっと真っ直ぐ道が伸びてて、出口も何も見えないのよ。風の音も聞こえないし、水の音も聞こえない。暗闇と静寂だけが洞窟内を支配してて、まるで夢の中にいる様な感覚すら覚えてくるわけ。当然世界で繋がるソフトバンクもここじゃ圏外。やだなあ、怖いなあと思ったら後ろからブゥゥン……と羽音が聞こえるの。
なんだろうと思って振り返ると、そこには羽の生えた巨大な蟹の化け物がいたのよ。
ぼくはその姿を確認した瞬間、正気を失い、パニックになりながらその場を逃げ出した。
まずい、こいつはまずい!いくらぼくが蟹座だからってなんで蟹がやってくるんだ!恐怖と狂気で混乱した頭がとめどなく溢れる思考をぐちゃぐちゃにしながら、逃げなきゃだけは強く思ってて、息が苦しくなっても逃げるのを止めなかった。
でも、その蟹の化け物はぼくを追いかけてくるわけ。しかもぼくと一定の距離を保ちながら、まるでぼくをあざ笑うかの様にしつこく追いかけてくるのよ。ぼくが息を切らせて立ち止まると、そいつはわざとスピード落としてじっくり近づいて、ハサミをガチャガチャ鳴らして脅して、ぼくに走ることを強要させてくるんよ。
ぼくは汗も涙も涎も垂れ流しながら必死に逃げた。失禁しながら、嘔吐しながらそれでも逃げた。転んで血まみれになっても逃げた。
逃げ続けて、逃げ続けて、もう足が動かせないと思ったとき、洞窟が急に広くなって、大部屋みたいな場所にたどり着いたのよ。
そこでぼくは体力の限界を迎えて倒れ伏した。だけど追いかけてきた蟹の化け物の姿がようやく見えなくなったのを確認できた。ぼくはようやく安堵して涙をまた流した。
ひとしきり泣き切った後、息を整えながら周りの様子を見ると、なんか真っ黒な塊があるのね。そいつはめっちゃ触手をウネウネさせてて、なんだろうなって思ったらその黒い触手がぼくにせまぁgごbっ
最終更新:2016年05月30日 21:28