幸子ちゃんに文香ちゃんの本なのにぼくの物だと疑われた話

 文香ちゃんっていろんな本読むのはいいんだけど管理は慎重に行って欲しい。これから鷺沢文香ちゃんが引き起こした一件のインシデントについて話すね。

 ある日ぼくが営業から帰って事務所に戻ると、なんかぼくのデスクでなにかを囲うように142'sの3人が集まってるのね。なんだろうなって挨拶したら3人ともぼくに一歩引いたようなよそよそしい態度で挨拶を返すのね。特に幸子ちゃんがいっちゃんドン引きしてるのよ。目が語ってる。
 なんで!?ぼく今日はまだ幸子ちゃんになにもしてないよね!?って思ったんだけど、ふとぼくのデスクの上に、紺色の布製のブックカバーと、ブックカバーから取り外された1冊の文庫本が目に入った

 「少女陵辱監禁 憧憬が隷従に変わった日」

 なにこれ。裏面見ると

「十四才、女子中学生の杏奈は近所の憧れの大学生、有史の家に遊びにいく。しかし有史は杏奈を監禁し、幼い肢体を弄んでいく。激しい愛撫と陵辱の中、憧憬が絶望に、絶望が依存に変わり、杏奈の心は有史のテクに魅せられ堕ちていく--」

 なにこれ。……なにこれ。

「ふじえるさん、い、いくら寛大なボクでも、ふじえるさんに監禁されるのはちょっと……」

って幸子ちゃん言うけど待って。これ知らない。ぼくこんなこと考えたことない。(でも幸子ちゃんに監禁されるシチュエーションはめっちゃ考えてる。病んだ幸子に監禁され四六時中キスされまくるあのssほんといいよね。すき)
 誤解だ、これは俺のじゃないって弁解しようと近づいたら小梅ちゃんと輝子ちゃんに阻まれ取り押さえられた。

 というわけで第87回ふじえる裁判が始まりました。(説明しよう!これはぼくが幸子ちゃんに粗相をする度に現行犯逮捕され開かれる裁判だ!これまで86回開かれ8割くらいぼくの有罪で終わる魔女裁判だぞ!)
 被告はぼく、ふじえる。原告、輿水幸子。裁判長及び検事、白坂小梅、星輝子。

 今回の裁判の争点は、「この書籍は果たして被告人の所有物か」「被告人は常日頃から原告に対しこのような意図を持って接しており、実行の意思があったのか」の二点なのね。

 もちろんぼくはその二点とも断固として否定するんだけど、検事と原告の三人は疑いの目をやめない。なぜかというと、書籍の主人公である杏奈は背が低く身長が141cmという描写があり、身長が142cmの幸子ちゃんと酷似しているらしいのね。ぼくはその本読んだことないから一向に知らないとしか言いようが無いけど、三人も頑として譲らない。

 痺れを切らした幸子ちゃんがとうとう「いい加減に認めてください!ふじえるさんがボクを家に入れるのもそういう意図があったんでしょう!?」って爆弾を投下した。
 まずい、今この場でそのCOはまずい。
 二人とも「え……幸子ちゃんを家に連れ込んでるの……?もう真っ黒じゃん……」って目でぼくを見つめるのよ。
 あー、ぼくは冤罪で処刑されちゃうんだー。って思ったそのときだった。

「あの……私の本を見かけませんでしたか?紺色のブックカバーなのですが……」

 野生の鷺沢文香ちゃんが現れた。
 文香ちゃんがブックカバーから外された「少女陵辱監禁 憧憬が隷従に変わった日」を見た瞬間、顔を真っ赤にして「すみません!どうかこのことはご内密に……」って言いながら慌ててブックカバーと本を回収していつもの文香ちゃんとは思えないスピードで事務所を出てったのね。
 あまりにも唐突な、呆気ない事件の解決に呆然とするぼくたち。

 まあでもこれで一件落着だよね。晴れてぼくもむざ
「幸子ちゃんを家に入れてるって…………どういうこと……?」

あー小梅ちゃんやっぱそっちいっちゃうかー。
というわけで今回の裁判も有罪となりました。


 数日後、妙に上機嫌なありすちゃんを見かけたから声かけたら、
「今度文香さんの家にお泊まりすることになったんです。いろんなお話を聞かせてもらえるそうなので、有意義な時間にしたいと思います。遊ぶわけじゃないですよ?」
って嬉しそうに話すんだけど、うん……なんというか、その…………強く生きて欲しい。南無。
最終更新:2016年05月30日 22:03