幸子ちゃんのガシャを引き続ける話

 なんてこった、まさかSSR二周目が来るとは。しかも期間限定SSR。担当アイドルの恒常SSR引いて高みの見物してたプロデューサー達も、同じガシャ地獄に引きずり落とされる恐怖を抱いて過ごさなければならなくなったのだ。恐ろしい……

 まあでもぼくはSSR幸子引いてるし限定SR幸子も手に入れてるからそこまで無理しなくてもい「ガシャ更新!期間限定幸子カワイイガシャに新SSアイドル輿水幸子登場!!」ぬわああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!

 というわけで期間限定SSRに幸子が来た世界のぼくの話するね。

 とある日の15時、期間限定幸子登場の知らせを受けたぼくは衝撃が走った。まずい、そろそろ引かねばならない""刻""が来たのかと。当然石の蓄えもあまりなく適当に無償石で2回十連回しても出るわけがなかったのね。仕方ないからiTunesカードを買いに走っては石を買い買っては石を買いを引くまで繰り返す作業に出るわけよ。

 一十連、データダウンロードなし
 二十連、データダウンロードなし
 三十連、データダウンロード、新規SR、幸子じゃない
 四、五、六、七……いくら十連を回しても幸子が見えない。十八、十九、二十、三十、四十、五十…………

 ぼくのデスクがiTunesカードで埋まった辺りで、幸子ちゃんがやって来た。

「フフーン、聞きましたか?ふじえるさん!ついにボクの限定SSRが……ってなにしてるんですか!?」

 見ての通り、幸子を引くための儀式だよ。

 だけど幸子ちゃん、まさかぼくがここまでするとは思ってなかったらしく、めっちゃ慌てるのよ。

「ふじえるさん、流石にやりすぎです!お金はどこから出してるんですか!!!!」
「当然千川ファイナンスから融資を受けてる」
「既に手遅れなとこまで来てるじゃないですか!!もうやめてください!!」
「大丈夫、次で絶対来るから。心配ないよ」
「全然安心できません!」
「絶対。心配ない。絶対。心配ない。絶対。心配ない。絶対。心配ない。ぜったいしんぱぱぱぱぱぱぱぱぱ」

 もう一回十連、幸子なし。

 大きなデータがダウンロードしている。アハハ、大きい・・・SSRかな?いや、違う、違うな。SSRはもっとバーって刺繍があるもんな。

「ふじえるさん!」

 幸子ちゃんの声でぼくは我に返った。

「ふじえるさん……いくらカワイイボクのカードだからって、そこまでするのはやめてください……たかがカードじゃないですか……それよりも今ここにいるボクを見てくださいよ……」

「幸子ちゃん……」

 そうだね、ぼくはSSRにかまけて大事なことを忘れてたんだ。それにようやく気付いた。

「ねえ、幸子ちゃん……」
「はい……」
「それは違うよ」
「え?」
「いいか?SSR、しかも期間限定ということはな、その輝きは一瞬でしかないんだ。そんな一瞬の幸子ちゃんを手に入れられなかったらぼくは生涯後悔を背負い続ける羽目になる。ぼくはこの一瞬の幸子ちゃんに全生涯を賭けているんだ、いいな?」
「はぁ……?」
「現実の幸子ちゃんがぼくに話しかけてくれると思うか?」
「今してますけど」
「現実の幸子ちゃんがMVのように踊ると思うか」
「しますけど」
「現実の幸子ちゃんがおねシンソロ歌うと思うか」
「歌いますけど。というよりそれ歌ったのボクじゃないですか」
「現実の幸子ちゃんがぼくに抱きついて『ふじえるさん、今日はボクをふじえるさんの好きなようにしていいですよ♥』って言ってそのままベッドシーンに入ると思うか」
「それどっちのボクもしませんよね!?」
「だから次こそは幸子を引くんだ、律する小指の鎖も自分の心臓に突き刺して誓った以上逃げるわけにはいかない」
「なんで自分の首を絞めにいくんですか」
「見てろ幸子、俺の生き様を!!!」

これが命をかけた正真正銘の最後の十連!!!
引けッッッッッ!!!



白封筒 


あっ
最終更新:2016年06月02日 23:45