あのねー、ぼくねー、おっきくなったらー、さちこちゃんとけっこんするんだー!!えへへー。
ろくがつにけっこんしきあげることをじゅーんぶらいどっていってー、みんなのあこがれなんだってー!!
なんでこんなはなしするかというとねー、じむしょにさちこちゃんがいてねー、たきしーどにみをつつんだまさしくだんそうのれいじんってかんじだったのよー。
ぼくはふみかねーちゃんにかりた、ありふみ?っていううすいほんをかえそうとじむしょにはいったらねー、そんなさちこちゃんをみつけるのよー。
さちこちゃんはぼくのすがたをみるといつものようにふふーん!ってね、わらいながらね、どうです!まにっしゅなぼくもかわいいでしょー!っていうのよー。
ぼくのこたえは、もちろんかわいいー!まにっしゅなさちこちゃんはかわいすぎて、です13がはつどうしちゃいそうー!ってかんじたのねー。
そんなさちこちゃんをみてたらねー、ぼくのむねのおくからふつふつとねー、さちこちゃんとのけっこんがんぼうがわいてきてねー、さちこちゃんに、けっこんしようって、えへへー、ぷろぽーずしちゃったー!
だけどさちこちゃん、あきれたかおしてるのー。なんでだろうー?
なんでもねー、さちこちゃんはじゅうよんさい?だからけっこんできないし、さちこちゃんはたきしーどをきるがわじゃないからこのすがたみてけっこうしようっていうのはへんなんだってー!!
えー、やだやだ、さちこちゃんとけっこんしたいー!さちこちゃんにおむこさんになってもらいたいー!ぼくがはなよめになるー!!ってだだこねたらさちこちゃんこまったかおするのよー。すっごいめんどくさそうなかおしてねー、またぼくをどうやってやりすごそうかかんがえてるのー。
……クソッ、ふざけやがって。
いくら俺が結婚しようと説得しても彼女は首を縦に振りやがらない。お高く止まった女だ。俺の言葉を冗談だと受け取って本気にしようとしない。それこそ冗談じゃない。
俺は彼女を手に入れる為にどんな手も尽くした。どんな犠牲も厭わなかった。これ以上彼女は何を望む?俺はどうすれば幸子を手に入れられる?
俺は焦りと苛立ちを隠せず、銜えていたマルボロを噛み潰し灰皿に乱暴に擦り潰す。
「……俺は本気だ、幸子。これ以上は茶化さないでくれ」
「だから茶化すもなにもボクはまだ14才ですからできませんって言ってるでしょう?」
「法律がなんだ。お前はそんなしがらみに囚われて輝きを曇らせる女だったか?お前と俺なら乗り越えられるはずだ」
「いくらボクでも法律はちょっと厳しいですしそもそもわざわざ乗り越える気がないんですけど。ボクが16になるまで待つのがそんなに難しいんですか?」
「……俺は今したいんだ。幸子、お前と今結婚がしたい。異論なんか口に挟ませない」
「なんでこういうとこで融通が利かないんですか!」
まだ幸子は引き下がらない。何故だ、何が彼女をそこまで頑なにさせる?彼女の心の鎖を縛っているのは一体何なんだ。後もう少しで手に入れられるはずなのに、彼女の心に届かない。
……仕方ない。俺は覚悟を決めた。こうなれば残る手段は1つだ。
幸子を拉致し、無理矢理結婚させる。嫌われようが構わない。俺の手中に、彼女が入るなら。
「……許せ、幸子」
俺が幸子に手を伸ばそうとしたそのときだった。
--身体が、動かない。
首の後ろから圧し掛かるように寒気が襲い、俺の全身が鎖で縛られたかのように動かせなくなった。
クソッ、遅かったか……こんな芸当ができるのは、あの女しかいない。
「白坂、小梅……」
「……ふじえるさん…………幸子ちゃんを……襲ったらダメ…………」
俺の身体を押さえつける寒気が重くなる。俺は倒れ込みそうになる身体を必死に抑え、それでも幸子ちゃんへと手を伸ばそうとする。この程度では止まれない。止まるわけには--
突如、首に刃物を叩き付けられたような感覚と鈍い打撃音が響き、俺の意識は闇に沈んだ。
意識が沈みきる寸前、俺の目に映ったのは、黒い眼帯と赤いフードを被った少女だった……
最終更新:2016年06月04日 16:14