幸子ちゃんとかき氷を食べる話

 季節は夏!夏といえばかき氷!こないだ大須行ったらかき氷屋ができてたからつい食べたけどやっぱり美味しいよね。舌の上でやんわり溶けていく氷のシャリシャリした感触に舌に広がるシロップの爽やかな甘味。そして熱気のこもった口内を冷ましてくれる川の水のような冷たさ。口の中で溶けた氷水をゴクリと飲むことで冷たい水が喉を通り抜けていく感覚。これら全てがかき氷の醍醐味と言っても過言ではない。そして最後に皿に溶け残ったシロップの溶けた氷水をグイッと飲んで、至福の時間に終わりを告げる。かき氷は夏の暑さを癒すささやかなオアシスだよね。

 ということで幸子ちゃんとかき氷を食べたいなって思って、夏の屋台で幸子ちゃんとかき氷を頼んで一緒に食べたのね。ぼくはレモンで幸子ちゃんはイチゴ味。

 近くのベンチに腰かけて二人でそれぞれ山盛りのかき氷を食べながら雑談してたんだけど、幸子ちゃんが突然俯いて頭を押さえたのよ。

 出たなアイスクリーム頭痛。かき氷食べてると冷たくて気持ちいいけどキーンって頭痛くなるのがネックよね。原因はいくつか考えられてるらしいけどこれというものは決まってないらしい。顔をしかめて頭痛に耐える幸子ちゃん、かわいそうだけどカワイイ。
 でもずっと幸子ちゃんを頭痛で苦しませるのもアレだしとっておきの特効薬を幸子ちゃんに提案したわけよ。

「幸子ちゃん、かき氷の頭痛をすぐ治すいい方法があるんだけどやってみないかい」
「なんですかそれ……ぅぅ……」
「まず目を閉じて舌を突き出すんだ」
「まだやると言ってないですけど……仕方ないですねえ……」

 ぼくの提案に半信半疑ながらも従う幸子ちゃん。イチゴのシロップで真っ赤になった舌と珍しく従順なその姿にちょっとイケナイ気持ちが芽生えそうになったけどグッと堪えて幸子ちゃんの目の前にこっそり顔を近づけるわけ。幸子ちゃんが頭痛から眉間にしわを寄せながらも、何が起きるのか不安そうなのね。

 そんな幸子ちゃんの顔をちらりと見た後、ぼくは幸子ちゃんにズギュゥゥゥゥン!!と唇を奪ったのよ。
 幸子ちゃんの突き出した舌を吸うようにぼくの口に迎え入れ、幸子ちゃんの頭を抱いて幸子ちゃんの逃げ場をなくした上でしつこくキスを続ける。ビックリした幸子ちゃんが目をしどろもどろにさせながら舌を引っ込めようとするんだけど関係ない、ぼくの舌と幸子ちゃんの舌を絡ませ、ちゅると幸子ちゃんの舌を吸ってぼくの舌から逃さない。そのまま舌と舌の深いキスを強制的に続ける。幸子ちゃんは舌じゃどうしようもないからぼくの胸をドンドン叩くんだけど無視して舌による愛撫を続けた。かき氷で冷えきった舌と舌を擦り合わせ、しつこく擦り合わせ、幸子ちゃんの舌を舐め、舌で撫ぜ、その体温を取り戻させるように温め合う。幸子ちゃんの舌に染みたシロップのくどい甘みがぼくの舌にも伝わってくるほどにしつこいキスを続け、かき氷で潤った口からはしたない水音が響いていくらか経った後、ようやくぼくは口を離して幸子ちゃんを解放したのね。

 キスから解放された幸子ちゃんは荒くなった息を整えた後にぼくを涙目で睨みながら、「なにするんですか!」って抗議するのよ。そりゃそうか。
 だけどこれには訳があった。アイスクリーム頭痛の原因の一つとして、冷えすぎた舌から伝達される信号を頭痛だと誤解されるらしいというのがあるのね。だから舌を温めると早く治るらしいのよ。ぼくはこの知識をキッズgooで知ったのよ。ありがとうぐっぴょん!!こんなときに役立つとは思わなかったぜ!
 だからぼくは至って冷静を装い、幸子ちゃんの頭痛が治ったことを指摘してうやむやにするのよ。指摘されて頭痛が治ったことに気づいた幸子ちゃんは腑に落ちない表情をするのね。そんな幸子ちゃんにまた頭痛がしたらいつでも言ってねって言ってかき氷に戻りました。

 その後も幸子ちゃんが頭痛を患っていそうに見えたらそのまま無理矢理キスをするのを繰り返してたらいい加減に幸子ちゃんがかき氷食べて涼んでたはずなのに顔真っ赤にして「ふじえるさんのヘンタイ!もう知りません!」って言って先に帰っちゃいました。あらら、やりすぎちゃった。


 そんなかき氷事件から数日後、休日の昼を自室でクーラーガンガンきかせて過ごしてたらインターホンが鳴ったのね。
 なんだろう?とドアを開けたら幸子ちゃんが袋詰めのかき氷を持ってぼくに言ったのよ。
「ふじえるさん、今日も暑いですね。…………かき氷食べませんか?」

最終更新:2016年07月13日 00:00