夏といったらホラーだよね。でもホラーといっても怖い話とかホラー小説は好きなんだけど、ホラー映画とかホラーゲームは苦手なんよ。
こないだも小梅ちゃんから借りたホラー映画を幸子ちゃんと二人で見たんだけど、終始ビビりっぱなしで幸子ちゃんにしがみついてワンワン言ってたのよ。そのせいで映画見終わった後に幸子ちゃんに「あんまりにもふじえるさんが怯えるから全然怖くなかったですよ。というかふじえるさんがうるさすぎて映画の内容全然頭に入ってこなかったです」って言われてぐぬぬってなったのね。（ちなみにその晩怖すぎて一人で寝れず幸子ちゃんと一緒に寝てもらうよう何度もお願いした。幸子ちゃんは子供ですかもうって言いながらも付き合ってくれた）
そんなわけで、ぼくはホラー耐性がないっつってんのにみんな面白がってやたらホラー映画勧めるのよ。加蓮ちゃんとか面白いオモチャを見つけたと言わんばかりに日常的にホラー画像仕込んでくるからタチ悪い。小梅ちゃんは純粋に好きなものを勧める感覚で心霊現象起こすから別ベクトルでタチが悪い。
そんなある日、杏ちゃんと紗南ちゃんが今流行りのヘッドマウントディスプレイを着けてゲームしてるから気になって声かけたのね。
そしたら二人いわく、今度の番組の収録でVRゲーム特集をやるらしく、資料として事前に色んなVRゲームを貸してくれたから二人でだらだらやってたらしいのよ。ぼくもVRには興味があるからちょっとやらせてってヘッドマウントディスプレイ借りてゲーム一覧眺めたわけ。
まだまだインディーズのゲームが多いなあと思いつつざっと目を通したら、「The Screaming House 」というタイトルが。
あっこれあかんやつや。ぼくはそっと「あっプロデューサーじゃん♪面白そうだからそれやってよ」またお前か加蓮んんんんんんんんんん！！！！！
ヘッドマウントディスプレイを外して後ろを振り返ったら加蓮と幸子ちゃんが。休憩中に立ち寄ったらぼくの姿が見えたから声かけたらしいのね。よし、チャンスだとばかりに加蓮に勧めようとしたらやり方わかんないからパスって逃げられた。幸子ちゃんも逃げようとしたけど死なばもろともと捕らえて無理矢理普通のディスプレイの前に座らせた。ぼくの膝の上に。
幸子ちゃんをぼくの膝の上に座らせて両手を回し、絶対に手を離すなよ？と鬼気迫る表情で幸子ちゃんにお願いした後に、VRホラーゲームを起動。
ゲームシステムはよくある一人称視点の探索型アドベンチャーで、館の中を歩き回るゲームだ。プレイヤーは館の中の寝室からスタートして、脱出することがゲームの目的らしい。ぼくは恐る恐る一歩を踏み出す決意をした。一歩を踏み出そうとした。今、まさに決意の一歩を「いい加減ゲームを進めてください」はい……
その後も、あまりにもビビりすぎて一向に進まないぼくを幸子ちゃんがサポートしながら進め、ギミックが出たときは二人仲良くビックリして驚いてを繰り返して進め、本来なら5分で進む箇所に30分かけたのね。ちなみにコースとしてはまだ10%くらいらしい。おい、なっげえぞ。
そんな遅々として進まないふじえる一行にしびれを切らした加蓮ちゃんがとうとう奥の手を使ってきた。ぼくからコントローラーを奪い紗南ちゃんにパス。ぼくの視点は無理矢理加蓮ちゃんが後ろから首を曲げさせて見せるという体制をとってきたのよ。やめて。無理無理無理無理無理無理。助けて。いまはえらべる。ずっとはまたない。やりなおそう。
必死の抗議の甲斐もなく紗南ちゃんによる恐怖の館爆走レースが始まった。脱出フラグを立てるために全ホラーイベントを回収する紗南ちゃん。その度にヤバイ箇所を見せるために首を曲げさせられるふじえるくん。やめて、見せないで、いるのは知ってるから。見せないで。やめて。ぼくが絶叫し泣きわめく様子を見て面白そうに笑う加蓮ちゃん。ほんと絶対後で覚えておけよ。ぜったあああやめて見せないで見せないで死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬワンワンワンワン。
ゲームがクリアできた頃にはぼくはすっかり憔悴しきって、虚ろな目で涙を流し続けていました。でもそんな状態でも幸子ちゃんは絶対に離しませんでした。（幸子ちゃんはぼくにずっと抱きしめられ続けたせいで恥ずかしいのとゲームが怖かったのでごちゃごちゃのままぼくの膝の上に納まってました）
そんなVR体験から数日後、幸子ちゃんにもVR体験の話が来て、VR体験セット一式貸してくれたのね。
よし、あんなことがあったし今度は別のゲームでもやろうか幸子ちゃ「ふじえるさん、またこのゲームやりませんか？……ボクはふじえるさんの膝の上にいるので」
……幸子ちゃん、ぼくの膝の上に座るのが好きになっちゃったんだね。ぼくはまた絶叫しながら幸子ちゃんにしがみついてゲームをプレイすることになりました。めでたしめでたし。
最終更新：2016年07月18日 08:36
