幸子ちゃんにセクキャバ通いがバレる話

 SSR限定美波のあまりのえっちさに己がリビドーを抑えきれなくなったふじえるがとった行動はセクキャバであった。アイドルに手を出す訳にもいかずどう発散させるか悩んだふじえるは導かれるように夜の町に繰り出してはセクキャバに通いつめる日々を送っていた。

 そんなある日、たまたま鞄の中に忘れてしまったキャストの名刺を輿水幸子が目ざとく見つけてしまったことから事件は始まる。

「ふじえるさん……こんな店にずっと通いつめてたんですか!?ヘンタイ!フケツです!!」
「違う、違うんだ。これは違……」
「何が違うんですか!ふじえるさんはヘンタイですが、こんなことまでやるとは思ってなかったです!これ以上ボクに近づかないでください!ヘンタイが感染っちゃいますから!!」

 どうも、セクキャバ通いが幸子ちゃんにバレてまずいなあ、まずいなあと冷や汗をかいてるふじえるです。いやでもだってね?仕方ないよね?美波がえっちすぎるし?こないだの三船さんもえっちすぎるし?このちんちんのイライラをどう発散するかって言ったら風俗でしょ?アイドルで発散する訳にはいかないでしょうよ。もしそれがなかったらぼくは幸子ちゃんに襲いかかるしかなくなるよ?いいの?

 必死に弁明しようとするぼくの話を聞こうともせず一方的に罵声を浴びせる幸子ちゃん。幸子ちゃんも幸子ちゃんで頭ん中がしっちゃかめっちゃかに混乱してるんだろうなってのは見てとれるからぼくは幸子ちゃんの言葉を仕方ないなって受け止めるのよ。
 でもそろそろ精神的にこらえるのが限界になってくるのね。一方的に攻撃的な言葉を浴びせられるのはいくら幸子ちゃんからといえどちょっとつらいから。そんなときだった。

「ふじえるさんなんてもう知りません!キライです!」

 幸子ちゃんのその一言でぼくの意識はプツリと切れてしまった。
 瞬間、身体中の細胞が灼熱となり、沸騰するように振動を始めた。眼球も皮膚も指も足も内蔵も、全てが熱さに疼き始める。
 変化はそれだけに止まらなかった。皮膚が鉄のような硬質の鱗に覆われ、爪が鋭く、細く硬く伸びていく。骨も変形を始め、身体の全てが、変形というよりは変態するかの如く変化していった。

 そこには、もうふじえるの姿は無く、薄桃色の鱗に覆われた、一頭の龍が座していた。

 それこそぼくが"龍の血"を覚醒させた姿、ドスケベドラゴンなわけよ。

 ぼくはこの龍の姿のまま、幸子ちゃんに話しかけるのね。

「ククク……我は性欲にまみれし煩悩ノ龍、ドスケベドラゴンだ……」
「そんな、ふじえるさんが……」
「先刻は我に対し好き放題に物を言ってくれたな……」
「で、でもそれはふじえるさんが……」
「黙れ小童が!」
「ヒッ!」
「我がセクキャバに行って何が悪い!セクキャバドラゴンはドラゴン達のちんちんドラゴンを鎮めるための店ドラゴンだ!我は抑えきれない性欲ドラゴンを貴様らアイドルに向けぬようセクキャバドラゴンに通っただけのこと!幸子ちゃんを守るための手段なのだ!!」
「……それでも!それでも、ふじえるさんがそんなお店に通うのはイヤです!これ以上そういったお店に行くのは止めてください!」
「ほう……?我のこの姿を前にしてまだそんな口が利けるとは。……いいだろう。我との勝負に勝てたら、セクキャバドラゴンへ行くのは考えてやらんこともない」
「!それじゃあ……」
「逸るな幸子ちゃん。逆に我との勝負に幸子ちゃんが負けたときは、我のセクキャバブレスを食らい、我専属のカキタレドラゴンになってもらうぞ……」
「っ!ふじえるさん……」
「さあ、どうする……?勝負を受けるか、受けないか」
「……うう、分かりました。その勝負、受けて立ちましょう!」
「ククク、勝負を受けたか。それでは我はドラゴンデッキを使用する」
「ボクはロイヤルを使います」

「デッキも決まったな。それではいざ尋常に」

「「勝負!!」」

 今宵も又、災いの樹の下で勝負が始まった。

 序盤はロイヤルの展開力を生かした幸子が優勢となり、ふじえるの体力を削っていった。ふじえるは守護や除去、バーンを駆使して覚醒まで耐え続ける苦しい展開となった。
 しかし、ふじえるが覚醒状態となり、[灼熱の嵐]を発動したことをきっかけに展開が切り替わる。これまで盤面を数によって制圧していた幸子のフォロワーが一掃され、幸子の手札も息切れを起こしてしまったのだ。ふじえるの大型フォロワーの連続展開により攻守が一変し、幸子は逆に体力を削られ続けていった……

「ククク幸子ちゃん、いい加減にリタイアしたらどうだ?」
「……ふ、ふふーん。このボクがリタイアなんてするわけないじゃないですか。ふじえるさんこそそんな余裕ぶってると足下をすくわれますよ?」
「どうだか。俺のフォロワーは[ドラゴンガード]に[フォルテ]。幸子ちゃんの体力は1!一方の俺は体力が8しかないが、幸子ちゃんの場には[王家の御旗]のみ!例え場を一掃しようが《守護》で固めようが俺の[エンジェルバレッジ]で止めを刺せるこの状態を見て、まだひっくり返せると?ならば見せてみろ!ターンエンドだ」
「くっ、勝負は、ドローするまで分かりません!ボクのターンです!ドロー!!」

 さあ来い幸子。何を出してくる?ルシフェルか?オーレリアか?乙姫か?いずれにせよ残り1ターンでは突破できまい。大人しく俺のカキタレドラゴンになってもらうぞ!
 勝利を確信しながら幸子を見やると、幸子の口元がニヤリと笑っていることに気づいた。

「残念ですがこの勝負……ボクの勝ちです」
「なんだと?」
「ボクは場に[カースドジェネラル]をプレイします!このフォロワーは場に兵士・フォロワーが出たとき、そのフォロワーに疾走を与えます!」
「カースドジェネラルだと!?まだそんなカードを持っていたのか!?」
「更にボクは、[フローラルフェンサー]を場に出します!」

「そして、[フローラルフェンサー]を《進化》です!フローラルフェンサーを進化させたとき、場に[スティールナイト]と[ナイト]を出します。この三体のフォロワーはいずれも兵士![王家の御旗]により+1/+0され、[カースドジェネラル]により疾走が付きます。これで場で動かせるカードはフローラルフェンサー5/5とスティールナイト3/2とナイト2/1になりました」
「クッ!だがいくら疾走をしようと[ドラゴンガード]の5/6による《守護》は突破できまい!俺の体力を削りきるには至らない!」
「まだです!ボクの最後の手札、[疾風怒濤]を発動!ボクの場に出ているフォロワーの数だけ相手のフォロワー1体にダメージを与えます。ボクの場に出ているフォロワーは4体![ドラゴンガード]に4ダメージです!」
「なにぃ!?」
「これで[ドラゴンガード]の体力は残り2、ボクの[ナイト]で突破できますね。……[ナイト]で[ドラゴンガード]を攻撃!」
「ぐあああああああああ!!!!」
「そしてトドメです![フローラルフェンサー]と[スティールナイト]でふじえるさんに、ダイレクトアタック!!」
「クソッ、クソッ、くそがああああああ!!」
「8ダメージでふじえるさんの体力はちょうど0…………ボクの勝ちです」

 残念、幸子ちゃんに負けてしまった。トホホ、セクキャバドラゴンも今日でおしまいか……ホロリと涙がこぼれてしまったとき幸子ちゃんがこんなことを言ったのね。

「ふじえるさん。ああいうお店はボクがいる限りもう行っちゃダメですが、代わりにボクのお買い物に付き合ってもらってもいいんですよ。どうせお金を使うつもりだったんでしょう?それならボクにプレゼントのひとつでもしてください!」

 ああ、幸子ちゃんはなんて優しいんだろう。幸子ちゃんの母性にほだされ、今日もまたお仕事頑張ろう。そう思える一日でした。
最終更新:2016年08月05日 08:08