幸子ちゃんにハートドリンク50を飲ませる話

 新アイテム「ハートドリンク50」、だいぶ危ないおクスリな気がするんだけどめっちゃ気になる。これを幸子ちゃんに飲ませたらどうなるんだろう。めっちゃメロメロのジュンジュンになるんじゃないのって思ったぼくは早速計画を練り始めたのよ。PDCAサイクルのPlan(計画)だね!

 計画を練る上で一番の課題は「いかに幸子ちゃんにバレずに飲ませるか」と「途中で妨害が入らない環境で実行するか」だった。これをクリアするようなプランを考えている最中、思わぬ話が幸子ちゃんから出たのよ。

 聞けば幸子ちゃんの夏休みの宿題が思ったより量が多かったのと仕事が立て込んでスケジュールが乱れたらしく、土日にぼくの家で手伝ってほしいらしいのね。これは好機!と早速土曜日に幸子ちゃんと約束を取り付け計画の実行日もそこに決定したのよ。ククク、こんなに計画が簡単に進むとは思わなかった。休憩時間にこっそり幸子ちゃんにハートドリンク50を飲ませれば後はエロエロのぐちょぐちょのしっちゃかめっちゃかだぜ。ぼくは心の中で密かにほくそ笑んだわけ。

 そして土曜日、お昼すぎに幸子ちゃんがやって来る前にぼくは"仕込み"を済ませておいて、何食わぬ顔で幸子ちゃんを出迎えたのよ。幸子ちゃんはいつもの白ワンピにコンビニで買ってきたのかペットボトルのコーラとかお茶をレジ袋に入れて持ってきてたのね。幸子ちゃん曰く、ふじえるさんはすぐ喉乾くから飲み物買いに行ってボクの宿題の手伝いの手を止めてもらわないように予備で持ってきたというのね。

 そのとき、ぼくは幸子ちゃんの気遣い感謝しつつも内心では焦ったのよ。なぜかというと、ぼくの仕込みその1、「飲み物にハートドリンク50を混ぜて休憩時間に飲ませる」が潰されたから。これで幸子ちゃんの目をくぐり抜けて飲み物にハートドリンク50を仕込むのは難しくなった。だが、ぼくの仕込みはまだ残ってる。少しでも幸子ちゃんが隙を見せた時に第2第3の仕込みを発動させればよいだけだ。ぼくは気を取り直して幸子ちゃんの宿題を手伝うことにしたわけよ。

 その後も、「かき氷のシロップと称してハートドリンク50をかけて食べさせる」「ハートドリンク50を混ぜたアロマキャンドルを焚く」「元気が出るクスリと称してハートドリンク50を飲ませる」などの策を講じたがいずれも失敗に終わってしまったのね。チッ、幸子ちゃんはガードが固いな。なかなかハートドリンク50を飲んでもらえない状況に次第に焦燥感に駆られつつも、表面上は幸子ちゃんの宿題を真面目にこなしていったわけ。

 幸子ちゃんは私立で多少レベルが高くて進度が早くても所詮は中学レベル。難しくて幸子ちゃんが頭を捻らせてる箇所も難なく解いて幸子ちゃんに教えつつ並行して自由研究用の資料を用意したりして進めたのね。幸子ちゃんも真面目だから自分が解けなかった箇所をぼくの解説と一緒にノートにまとめたりしながら宿題を進めていったわけよ。

 そんなこんなしてるうちに夜になってしまったのね。マズイ、幸子ちゃんが帰ってしまうのではないかと思ったんだけど、幸子ちゃん宿題がまだまだ残ってるらしく、今夜はここで進めるって言うのね。想定外のラッキーチャンスに喜んだぼくはなんとしてでも幸子ちゃんにハートドリンク50を飲ませる作戦を練り直しながら晩御飯を作ったのよ。

 というわけで、ぼくが作った晩御飯を幸子ちゃんに振る舞ったわけよ。と言っても豪勢なものじゃなくて、昨日の残りのカレーなんだけど。幸子ちゃんは「このボクが来てあげたのにカレーしかないんですか?まあいいですけど」って言いながらもパクパクとカレーを食べ進めるのね。ついでにデザートにジュースを固めた簡単なゼリーも出して、幸子ちゃんに食べさせたのね。

 幸子ちゃんは「なんだかボクにも作れそうな物ばかりな気もしますが、ふじえるさんにしてはできた方なんじゃないですか?ボクが食べてあげたんですからふじえるさんは感謝してくださいね」なんて上から目線でぼくの料理を評しながらもキレイに完食してくれたんよ。

 普通の人ならせっかく作ってあげたのになんだこの子はと怒るかもしれないが、とんでもない、感謝するのはぼくの方だよ。


 そのカレーとゼリー、ハートドリンク50を混ぜてあるんだから。


 フフフ、クク、フハハハハハハハハハハ!!!!!!!!やった、やったぞ!!!幸子ちゃんがとうとうハートドリンク50を口にしたぞ!ぼくの心は達成感に満ち溢れた。あとは幸子ちゃんの親愛度が溢れに溢れてえっちな××も××から溢れるのを待つだけだ。ぼくは満足げに微笑みながら優雅にシャワーを浴びたのね。

 でもぼくは気付かなかったんだ。ぼくがシャワーを浴びる前の幸子ちゃんの、いや、それよりもずっと前、ぼくの家に来たときから、幸子ちゃんの瞳に妖しい光が見え隠れしていたことに。

 シャワーを浴びてリビングに戻ったぼくに幸子ちゃんが「宿題を手伝ってくれたお礼ですよ」って言いながら氷で冷やしたコーラを渡してくれたのよ。ぼくは幸子ちゃんからのささやかなお礼に感謝しながらゴクゴクと飲み干したのよ。風呂上がり(シャワーだけど)の冷たいドリンクは最高だぜ。熱い体内にスッと染み渡っていく。

 ぼくがコーラを飲んだのを確認した幸子ちゃんは「じゃあ次はボクがシャワー使いますね。入ってこないでくださいね?フリじゃなくて本気で通報しますからね?」って言いながら浴室に行ったのね。ぼくはどんだけ幸子ちゃんに警戒されてるんだ……と思いながら食後の後片付けを始めたのよ。幸子ちゃんに見つからないうちにハートドリンク50の空き瓶も隠さないといけないからね。

 台所でお皿を洗った後でハートドリンク50の空き瓶も袋に入れて隠そうとしたとき、何となく違和感を感じた。

 空き瓶が、1つ多い。

 使った回数を数え直したんだけど、どう考えても空き瓶が1つ不自然に多い。

 いつ使った?どこで使った?数は管理して目も極力離さなかったはずだ。考えるために空き瓶に手を取ったとき、ぼくは更なる違和感に気づいた。

 その空き瓶だけ、飲み口が濡れていたのだ。

 他の瓶は乾ききっているはずなのに。

 その事実に気づいたとき、ぼくはある恐ろしい仮説を思い立った。そしてその恐ろしい仮説は残念ながら、残酷なことに真実であった。

 シンクに円形の結露があったからだ。この結露は1.5Lのペットボトルを置いたときにできたものだろう。

 つまり、最後の空き瓶はーー

「ふじえるさん?」

 ドクンーー

 幸子ちゃんの声に呼応して心臓が跳ね上がる。ぼくは心臓を鎮めるように胸を押さえながら、声だけ取り繕って幸子ちゃんに返事をしようと振り返った。 

 ドクンーー

 幸子ちゃんの姿が視界に入った瞬間、更に心臓が跳ね上がった。痛いほどに心臓が暴れ、顔に血流が、熱が集まっていく。

「ねぇ、ふじえるさん」

 ドクンーー、ドクンーーーー

「ふじえるさんはホントにニブいですよねえ」

 ドクン、ドクン、ドクンーーーー

「ハートドリンク50、でしたっけ?あれを持ってボクにナニかしようとしてたんでしょう?全部、バレバレでしたよ。それに気づかずにボクの手のひらで踊らされて、ふじえるさんはカワイイですねえ」

 ドクン、ドクンドクン、ドクン、ドクンーーーー

「宿題の話も、飲み物も、お泊まりも、ぜーんぶボクの仕込みだったんですけど、ふじえるさんはラッキーだとなにも考えずに喜んでましたよね?目は正直でしたよ」

 ドクンドクンドクンドクン、ドクン、ドクンドクンーーーー

「あ、でもカレーとゼリーはわざと食べてあげましたよ?ボクの親愛度を上げさせようとするふじえるさんをぬか喜びさせるためもそうなんですけど、ボクもちょっと楽しもうかなって思ったので」

「ねえふじえるさん」

「ボクだけ親愛度が高まって、収まりつかないのをふじえるさんは大人ぶって冷静に楽しもうとでも考えたのかもしれませんがそうはいきませんよ」

「一緒に堕ちてください、ふじえるさん」

「ずっと、ずぅーーーっと、底にーー」

ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンーーーーーーーー

ーーーー

ーー



実験結果:どうやら幸子ちゃんの親愛度は飲む前からMAXだったようだ!

ふじえるの幸子への親愛度が50上がった!

ふじえるはしぼりつくされてしまった……
最終更新:2016年08月15日 19:28