今日は幸子ちゃんが僕の肩に頭をあずけてきた時の話をするね。
その日幸子ちゃんはたまのオフで、僕も外回りの仕事がなかった。だから僕は事務所でひとり、黙々と事務作業をしてたんだよね。ちひろさんは銀行に行ってた。しばらくPCと向き合って書類と格闘してたんだけど、気がついたら午後の三時くらいになってた。すると昼食が遅かったこともあってか、なんだかだんだん眠気が襲ってきたんだ。
耐えられなくなった僕はソファの上で横になって、しばらく休憩することにした。
すると、突然事務所のドアが開いた。
「おはようございます! カワイイボクがオフなのにわざわざ来てあげましたよ!」
いつもの元気な声が聞こえてくる。
「どうせふじえるさん暇してるんでしょう? このボクが暇つぶしに付き合ってあげます!」
幸子ちゃんにあんまりだらしない姿は見せられない。僕は身体を起こしてソファに座り直した。
「じゃ、失礼しますね」
するとすぐに幸子ちゃんが僕の隣に腰を下ろしてきた。幸子ちゃんはそのまま僕によっかかって、こんなことを言うんだ。
「カワイイボクの体重を支えられるなんてふじえるさんは幸せモノですね! ほら、ボクのこと、愛でて、撫でて、かわいがってもいいんですよ?」
フフーンといつものテンションで甘えてくる幸子ちゃんに、僕はもう眠気も忘れてしまっていた。
幸子ちゃん、撫でていいって言ってたしおもいっきり撫でてあげよう。
そう思った僕は手始めに幸子ちゃんの小さな肩に手を回して、ぎゅっと自分のほうへ抱き寄せる。
幸子ちゃんのカワイイ顔が真っ赤になるのを見ながら、そのままその手で幸子ちゃんの癖っ毛をなでつけてやる。
「ちょっ、ふじえるさん、くすぐったいですよ!」
幸子ちゃんがりんごみたいに赤い顔で、しかもとっても幸せそうに笑いながら言うもんだから僕もなんだか歯止めがきかなくなっちゃって、もうくちゃくちゃに幸子ちゃんの頭を撫で回したよね。
「あの、ふじえるさん、もういいですから、優しくしてください……」
しばらくしたらいい加減幸子ちゃんも力強くなでられるのが嫌になったみたいでそんなことを言ってきたんだ。
僕は短く謝ってから、今度は優しく、梳いて整えるように幸子ちゃんの髪の毛を撫でた。
「ふふ、いい感じです、ふじえるさん」
あったかい気持ちでいっぱいになりながら、そのまま幸子ちゃんを撫でていたら、ふいに幸子ちゃんが僕の肩に頭をのせてきた。
「……ふじえるさん、いつもありがとうございます」
突然そんなことを幸子ちゃんが言ってきて、驚き半分嬉しさ半分で幸子ちゃんを凝視すると、目を閉じたまま幸せそうに微笑む幸子ちゃんがいた。
「なーんて、ボクらしくないですかね」
僕はなんだかとっても恥ずかしくなって、いたたまれなくなって、気がつけば、また全力で幸子ちゃんをなでまわしてたよね。
結局ちひろさんが銀行から戻ってきて僕らを叱りつけるまで撫で続けてました。
最終更新:2016年08月20日 03:50