幸子ちゃんにシゴかれる話

「幸子ちゃん、それは洒落にならないよ……」

ガラスの破片が敷き詰められたオナホールを持った幸子が、麻縄で全身を縛られた俺を見下ろす。

幸子はにっこりと笑いながら、

ざくりーー

俺の下腹部にそれを振り下ろした。


ガラスの刃が、俺の陰茎を切り裂く。

「あああああああああああああ!!!!」

鋭い痛みから視界が明滅し、俺は熱さに悶え苦しむ。全ての思考が激痛に集中し、何も物を考えられない。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

身体が本能的に痛みから逃れようとのたうち回る。
まるで痙攣を起こしたかの様に手足を無意識に暴れされるが、俺の四肢を堅く縛る麻縄がそれを阻み、無理矢理に俺を痛みと直面させる。

絶叫を終えた俺の口は喉を切ったのか鉄の味が広がった。血生臭さに吐き気を催す。

もう許してくれ、痛みから俺の口から命乞いにも似た情けない声が漏れる。

「ひっ、いっ、いたい……いたい……やめて……いたい……」

まるで蚊の鳴くような声で懇願する俺を、幸子は冷徹に見放した。

「ふふっ、ふじえるさん。気持ち良さそうによがってますねえ。もっとしてあげますよ」

何を、言ってるんだ。

幸子の言葉に耳を疑う間も無く、幸子はその手に持った凶器を上下に動かし始めた。

ざくり、ざくり、ざくり、ざくり、ざくり。

動かす度に俺の陰茎が切り裂かれ、入口から血がドクドクと溢れる。

切り裂かれる度に脳が激痛で灼かれる。

「いぎっ、あ"っ、いぁ"、いっ"、がぁっ」

「ふふーん、ふじえるさん、まるで喘いでるみたいで面白いですねえ」

「あ"がっ、やめっ、やめ、ぉ"、ざっぢ、やめ"」

「こんなに喜んでくれて、ボクも準備した甲斐がありました。ふじえるさん、もっとしてあげますね」

ふざけるな、やめてくれ。
痛みから逃れたい一心で精一杯の怒気を込めて俺は叫ぶ。

「ぐっ、ぶ、ふざけるなぁ"っ!やめろど、いっでぇぁあああああ!!!!!やめ"ろ"!!やがっ、めっ、ろぉああああああ!!!!」

俺の必死の叫びが届いたのか、幸子は手を止めた。

俺は息を整え、掠れた声で幸子に命乞いをする。
「なぁ……もうやめてくれよ……ひぐっ、痛い……痛い……死にそうなんだ……もうやめてくれ……十分だろ……」

しかし幸子は、俺に冷酷な目を向けたままだった。

「ふじえるさん、そうやってボクも、何度もやめてって言ったのに聞いてくれませんでしたよね?」

それはあまりにも無慈悲な、死刑宣告だった。
幸子はまた手を上下に動かし始める。

「あ"っ、ぐぁっ、ぎぁっ、がぁ、いぎぃ」
「何度もっ、何度も、なんどもッ!!ボクはイヤって言いましたよねっ!!嫌だって!止めてって!!」

咳き込み過ぎて喉の奥で出来た血溜まりが涎の泡と共に破裂し噴き出す。
嘔吐感も遅い、胃液が無理矢理喉からひり出してくる。
充血した視界には、俺に対する激しい怒りを籠らせた幸子の鋭い眼光が映った。

「でもふじえるさんはやめてくれなかった!!本当は嬉しいんだろって!気持ちいいだろって!!勝手な事ばかり言って!!!全然やめてくれなかった!!!」

過呼吸による酸欠のせいか、血が流れ過ぎたせいか、脳が意識を手放し頭が沈んでいく。

「嫌だったのに!痛かったのに!気持ち悪かったのに!!ふじえるさんはっ!!何度もっ!何度もっ!ボクを弄んでっっ!!!ボクを踏み躙って!!」

瞼が開けられないほど重い。
俺はもうすぐ死ぬだろう、無意識に俺は気付き始めた。
幸子も俺の死相を悟って、手を止め蔑む表情で見下ろす。
その目には、仄暗い憎悪と嫌悪感が溢れている。

「……ふじえるさん」

幸子の声が遠くなっていく。

「あなたは死ぬ瞬間すら、気持ち悪いんですね」

死の間際、俺は涙と血と唾液と胃液にまみれたグズグズの顔で、満面の笑みを浮かべた。

幸子の心に、消えない楔を打ち込めた事を喜びながらーー
最終更新:2017年02月06日 23:35