月末ガチャの自称・愛され系の輿水幸子ちゃんってほんとヤバイよねって話するね。
まず特訓後の誘うようなポーズと表情が完全にえっちで夜のLIVEバトルが捗っちゃうし特訓前の犬にじゃれつかれて肩がはだけちゃってるいやらしさがほんとNiceすぎる。
Niceすぎてコンボ切った。
そして極め付けはあのセリフ、「構って欲しいなら犬になってください」。
もうこれ犬になるしかなくなるよね。
犬になったら幸子ちゃんにお手!おかわり!してもらえるしちんちんもワンチャンある。ワンちゃんだけにかってやかましいわ。
幸子ちゃんとちんちんしたい。めっちゃちんちんしたい。
そういうわけで犬との撮影が終わった後の事務所でもワンちゃんごっこの余韻が忘れられず幸子ちゃんに犬のようにじゃれついちゃうのね。
幸子ちゃんがボール投げたらハッハッて舌出しながら四つん這いで取りに行ったり、幸子ちゃんに頭ワシャワシャ撫でられたり、お手!おかわり!したり、おやつにドッグフード食べさせてもらったり。(でも全然ちんちんはさせてもらえなかった)
そんな和やかな雰囲気に誘われて、犬を飼ってるしぶりんとか聖來さんがぼくを一目見に事務所に立ち寄るようになるわけよ。
それにつられて他のアイドルの子もぼくにお手!したりドックフード食べさせたりと可愛がるようになって、事務所のアイドルみたいになっていったわけよ。(幸子ちゃんは自分が最初に可愛がってたのにってちょっとむくれてた)
だけどそんなある日だった。
「事務所でペットを飼うことは禁止だ。すぐにその犬を連れて帰れ」
突如事務所に現れた美城専務から輿水幸子へ、冷酷な通告が出された。
「ここはプロの現場だ。居るべきはアイドルとそのプロデューサー達のみ。仕事に関係のない部外者を連れ込むな」
「そんな……だって犬を連れてきてる人なんて他にもいるじゃないですか!」
「太田優のことか。あれは言うなれば仕事道具のようなものだ。そこの犬のように事務所で遊ばせているわけではないだろう」
「で、でもふじえるさんは頭も良くて、ボクの言うことを理解して物を取ってきたり色々と手伝ってくれて……」
「それがなんだ。人手が足らないなら事務員を増やせばいいだろう。多少人の言葉が理解できる犬に人間の仕事を任せられると思うのか」
「それに、みんな癒されるって言ってますし、それに…」
「公私混同をするな。それは事務所である必要はないはずだ。とにかく、すぐに飼い主を呼んで連れて帰れ」
「う………それは………」
「……まさか迷い込んだ野良犬をそのまま住み着かせていたというのか?呆れたな。すぐに保健所に連絡して引き取ることにしよう」
「ま、待ってください!!そんな可哀想なことやめてください!!」
「……可哀想か。私からすると、同情から無責任に施しを与え続ける方が可哀想だと思うがな」
「……それじゃあ、ボクが飼い主を見つけます。それでいいですか」
「………1週間だ。それまでに見つからなければ私は保健所に連絡する。いいな?」
「はい……」
突き放すように言葉を放ち、美城専務はその場を後にした。
だが、当然ではあるが、美城専務が立ち去った後も事務所内の重い沈黙が破られることはなかった。
あてもないまま受けたふじえるの飼い主探しに、幸子の表情は不安に染まっていく。そして幸子の暗い表情を見たふじえるも、表情を心配そうに伺いながら幸子の足元をくるくると歩き回る。幸子の暗い表情の理由が自分にあると知らずに……
それから3日間、幸子は手当たり次第人を探し、ふじえるの引き取り手になってくれないか聞き回った。
案の定ではあるが、飼い主となってくれる人はなかなか見つからず、飼い主探し難航していた。当然だろう。ふじえるは大型の成犬だ。維持費がかさむ大型犬を飼ってくれる人はなかなか見つからない。しかもその中で成犬をわざわざ買いたい人が何人いるのか。
飼い主探しを通して幸子は、ペットを飼うことがどれほど責任を伴う行為か、そしてそれを自分がいかに見ないふりをしてきたのかを痛感させられた。
だがもう遅かった。
飼い主を見つけられなければふじえるは保健所に連れて行かれる。待っているのは殺処分だろう。自分が不用意に餌をやったばかりに、ふじえるは苦しみながら死んでしまう。何故こんな事になったのか、幸子は後悔から涙を流した。
その夜、幸子はある決断をした。
「…………ふじえるさん、ごめんなさい…………」
幸子はとあるロケ地の山奥で、ふじえるを捨てる事にした。
ロケの移動中に寝ているふじえるをダンボールに詰め、少しばかりのおやつと毛布の切れ端と共に、山奥の静かな林の隅に、置き去った。
これでいい、殺されるくらいなら、人目につかない場所で生きてくれた方が幸せなはずだ--
ふじえるを見捨てる罪悪感を隠すように必死に正当化を重ねながら、幸子は逃げるようにロケバスに乗り込んだ。
だがいくら言い訳を重ねても、幸子の目から涙が止まることは無かった。
その涙は自身への怒りか、ふじえるへの贖罪か、もう幸子にすら分からない。
感情がグチャグチャなまま、幸子は涙を流し続けた。
そして美城専務の定めた刻限の日、幸子は沈んだ気分が晴れないまま朝を迎えた。
もう美城専務に伝える嘘は考えてある。
飼い主が見つかったと。幸せそうに暮らしていると。
その二言、笑顔で嘘を吐けばいいだけ。
それだけをこなせばいい、簡単な仕事のはずなのに、幸子の気分は暗い澱みを拭い去れなかった。
いつもの朝日もギラついて責め立てるように眩しい。億劫に感じながらもカーテンを開いた瞬間、幸子は目を見開いた。
「ワン!ワン、ワン!!」
そこには、人里離れた山奥に捨てたはずの、ふじえるの姿があった。
どうして、どうして………どうして!!
幸子は急いで玄関を飛び出してふじえるを迎える。
幸子の姿を見つけたふじえるは、嬉しそうにキャヒヒィンと鳴きながら幸子に飛び込んだ。
飛び込んだふじえるを幸子はギュッと抱き留める。
「ふじえるさん、どうして………どうしてボクなんかのところに来たんですか……!!」
「ワン!ワンワン!」
「ボクに裏切られたのに、なんで戻って来ちゃったんですか……!」
「ワン!ワン!ワン!」
「ごめんなさい!ボクが間違ってました……!ふじえるさんの飼い主は他の誰でもありません、このボクです!!」
「ワン!!」
こうしてふじえると再会を果たした幸子は、両親を説得しふじえるを飼う許可を得た。当然生き物を飼う以上、色々と条件をつけられたが、幸子はそれを全て快諾した。
そしてその日の事務所でも
「ふじえるさんの飼い主が見つかりました。飼い主はボクです!!」
「……そうか、覚悟を決めたようだな」
「えっ、どういうことですか?」
「今度とある動物バラエティ番組で犬を飼っているアイドルの募集がかかった。うちの事務所からも何人か候補を決めているが……君も出てくれるな?」
「……はいっ!」
ペットを飼う責任、家族として迎え入れる覚悟、ふじえるを飼うことで幸子はそれらを学んだ。もう幸子とふじえるの行く手を阻むものなどいないだろう。
一人と一頭の二人三脚はここから始まるーー
最終更新:2017年04月02日 00:37