「なぁ、そろそろ帰ってもいいか?」

魅音……じゃなくて詩音に誘われてデザートフェスタに訪れたのが運の尽き。
人形を買わされた挙句、強制連行されて延々と詩音の話し相手にされていた。
時計の針は既に十時を回っている。
いくら自宅へ連絡済とはいえ、これ以上遅くなれば親も心配するだろう。
……しかし、詩音が実在するとはな。
確かに今までの詩音とは、雰囲気が微妙に違う気がする。

「えぇーー!? まだ十時ですよ? 話したいことはまだまだたくさんあるのに」
「もう飽きるほど話しただろ……それにさっきの。魅音と詩音のどっちを助けるかって、昨日も聞いただろ? なんで同じことを何度も聞くんだよ」
「えっ!? ……そ、そうでしたっけ? あは、あはははは……」

憶えてない、というより知らないらしい。
……ってことは昨日のアレは、やはり魅音か。
姉妹揃って同じことばかり聞いてくるとは、なんというか。

「と、とにかく! 葛西が戻ってくるまで、ここに居てください。こんな遅くに自転車で帰ったら危ないですよ……?」

葛西ってさっき俺たちをここまで運んでくれた人か。
すぐ戻ると言い残してしばらく経つが、まだ帰ってこない。

「そろそろ帰ってくると思いますから、それまでいいじゃないですか。……いいですよね?」

詩音が俺を上目遣いに見つめてくる……。
あーあー、そんな目で見るな。

「ハァ……わぁーったよ。でもしばらくして来なかったら、自転車で帰るからな」
「本当ですかっ!? はいっ!! 葛西が来なかったら、どんどん帰っちゃってください!」

……ったく、調子のいい奴だな。

「それで、まだ話すような事なんてあるのか?」
「はい。……えぇっと、学校の友達の話なんですけど……」

詩音はそう前置きすると、ポツリポツリと話し始めた。

「その子はですね、好きな人がいたんです。片想いでした。……でも、ある日突然に彼は居なくなってしまった」
「……いきなり重い話だな。いなくなったって、行方不明になったってことか?」
「はい。何の前触れもなく、消えてしまったんです……」
「何かの事件に巻き込まれたとか……?」
「それは分かりません。……その子は彼を必死に探したり、居なくなった原因を調べたりしました」
「そりゃ好きな奴の為だもんな。それくらいはするだろうな」
「……でも見つからなかった。原因も分からなかった。……そして、何の手がかりも無いまま、一年が過ぎました」

どんな理由があって居なくなったのかは分からない。
だが一年も探し続けて貰えたのなら、そいつは果報者と言えるだろう。

「その子は一年経っても、まだ彼の事が好きでした。……でも、他の人を好きになってしまったんです。一目惚れでした」
「それはまた、なんというか」

人間の感情ってのはロジックじゃない。
誰かを好きだったとしても、他の誰かを好きになるなんてことがあってもおかしくはない。

「その子は一目惚れした相手のことは、知人から聞いて知っていました。そして、実際に会って話をしているうちに、どんどん好きになってしまったんです」
「……それで?」
「でも、その子はまだ行方不明になった彼を好きなんです」
「なるほど。まだ行方不明になった奴を好きだから、一目惚れした相手にどう接したらいいか分からない、ってとこか」
「はい。その子はどうすればいいんでしょうか……?」
「……ふぅ~む」

確かに難しい問題のように思える。
でも、これってそんなに悩むようなことか……?

「簡単だな。その一目惚れした奴に好きだって伝えればいい」
「えぇッ??! そ、それじゃ行方不明になった彼はどうするんですッ!?」

詩音が素っ頓狂な声を上げて身を乗り出してくるので、思わず仰け反ってしまった。

「ど、どうするって……居なくなったんだろ? いつ戻ってくるかも、そもそも戻ってくるかも分からない」
「だって……だって一年も想い続けた相手なんですよッ?! その人を忘れろって言うんですかッッ!!?」
「……なんでそうなるんだよ。忘れる必要はないし、ましてや嫌いになる必要だってない」
「なら……行方不明になった彼を好きなまま、一目惚れした相手と、その……お付き合いとかしてもいいんですか……?」
「なにか問題でもあるのか?」
「だ、だって……そういうのって、軽薄というか……」
「そうかぁ? 俺は逆に、一年も好きだった奴を簡単に忘れる方が薄情だと思うけどな」
「でも、相手は嫌がるんじゃ……」
「なんでだよ? それだけ想った相手がいるのに、それでも自分を選んでもらえたのなら普通は嬉しいんじゃないか?」
「……でも……」
「それに一年も想い続けたのなら……既にその子にとって心の一部みたいなもんだろ。それを否定して付き合っていくってのは、ちょっと考えられないんじゃないか?」
「………………」

詩音が黙り込んでしまったので、ぬるくなったコーヒーを口にする。
……それにしても詩音が友達の事でここまで真剣になれるとは、ちょっと意外だったな。
……まぁ、悪い奴だとは思ってなかったけど。

「……それで……」
「ん?」
「それで、ですよ。もし一目惚れした相手とお付き合いしたとして……行方不明になった彼が帰ってきたら、どうするんです?」
「……随分と都合よく帰ってくるんだな」
「でも、ありえないとは言い切れないじゃないですか」
「……それはそいつが帰ってきてから考えればいいさ」
「……帰ってきたら……ですか……」
「ああ。……そんな事より、そいつはさっさと一目惚れした奴に気持ちを伝えた方がいい」
「ど、どうしてですか……?」
「だって前の奴には片想いだった。つまり気持ちを伝える前に行方不明になったんだろ? ……なら、今回の奴もそうならないとは限らないじゃないか」
「えっ!!?」

詩音の顔から血の気が引く。

「……い、居なくなっちゃうんですか? 一目惚れした彼も……」
「いや、例えばの話だ。でも、気持ちを伝える前に居なくなれば、そいつはきっと後悔する」
「……はい……絶対に後悔すると思います……」
「なら、迷う必要はないはずだろ?」
「………………」

詩音は視線を落とし、またしても押し黙ってしまった。
何度か口を開きかけるが、そのたびに言葉を飲み込んでしまう。
一体どうしたんだ……?

「……圭ちゃん……」
「なんだ?」
「黙ってたんですけど……実は、その子には双子の姉がいるんです」
「へぇ~……」

………………双子……?

「双子の姉は、一目惚れした彼とはとても仲がいいんですね。男女の関係を超えた仲なんだと思います」
「そ、それで……?」
「でも、姉は彼を好きになってしまったんです。そして、彼のことを楽しそうに話す姉を見て、その子は彼に興味を持った」

……お、おい……これって……。

「その子は彼に会ってみたくなった。そして、実際に会ったら……好きになってしまった」
「そ、そうなんだ。詩音、話の途中で悪いんだけどさ。葛西さんも戻ってこないし、俺そろそろ帰るからっ!!」

俺は早口でまくしたて、席を立つ。
そのまま玄関へ向かい、ドアノブに手を掛けようとし…………後ろから抱きつかれた。

「し、詩音……? は、放してくれないか……?」
「……いやです……。……私の話を最後まで聞いてくれるまで、放しません……」

詩音は俺の身体を、その細い腕で締め付ける……。

あぁもぅ、バカバカバカ、俺のバカ!
なんでもっと早く気付かないんだよっ!!
こんな事なら余計なアドバイスなんかするんじゃなかった。
他人事だと思って無責任なことを話している数分前の自分を殴ってやりたい……。

「……話を続けますね。その子は思い切って相談してみたんです。……一目惚れした相手に」
「け、結構大胆なことするんだな、そいつ……」
「……その子はきっと、行方不明になった人の事は忘れたほうがいい、って言われると思ったんですよね。……でも、彼の答えは違った。忘れる必要なんてない、って言ってくれた」
「…………ぅぅ……」
「……嬉しかったんですよね、その子は。……だって他の人を好きだって気持ちも、全て受け入れてもらえるなんて思ってなかったから……だから、ますます好きになった。どうしようもないほど好きになった」
「で、でもさ! そいつは、その子のカラダが目当てでいい加減なことを言ったんじゃないかっ?! だ、だからあんまり真に受けない方がいいような……」
「……そんなことないですよ……」

詩音は、俺の背中でじゃれるように頬をすり寄せる……。

「……だって、その人は自分のことだって気づいてませんでしたから」

ああぁーーーーーーーーッ!!
バレてる、気づいてなかったってバレてるぅぅうぅううッッ!!?

「……でも、そんなに好きなのに……その子は彼に気持ちを伝えられないんです……」

……へっ……?

「……ど、どうして?」
「だって、彼は双子の姉を好きになるから……」
「で、でも! そいつは、双子の姉には男友達みたいな感覚で接してる……と思うぞ……?」
「今はそうかもしれません。……でも、いずれ好きになる。絶対に好きになる。……事実、姉は彼を好きになってしまったんですから」

……お、俺が……魅音を……?

「そうなったら、勝てない。……だって、姉の存在は彼にとって大きすぎるから。……その子の入る隙間なんてないんです」
「……詩音……」
「……だから、その子は思うんです。私を好きになってくれなくてもいい。でも、せめて一度でいいから……肌を重ねたい。一つになりたい、って……」
「………………」
「……だからその子は、嫌われるかもしれない、軽蔑されるかもしれない、って思いながら、勇気を振り絞って言うんです」

俺を締め付ける腕の力がより一層強くなった……。

「今日だけでいいんです。私を好きになってください、私を抱いてください、って……」

……詩音の、恐れから来る震えが嫌でも伝わってくる……。

「……圭ちゃん。彼は、その子の想いを受け止めてくれるんでしょうか……?」
「………………。……多分さ、そいつは……そういうその場だけの関係を求められたって、素直に喜んだりはしないと思う……」

……背中から息を呑む音が聞こえた。
だから俺は、安心させてやるために詩音の手をぎゅっと握ってやる。

「……でも、その子が本当に勇気を出して言ったのなら……そいつは決して拒んだりなんかしない……絶対に」

……コツンと、背中に額が当たる感触。

「ありがとう、圭ちゃん……。圭ちゃんに……私の一番大切なものをあげますね」

詩音の手が俺の背後から伸びてきて……ドアの鍵をかちゃり、と掛けてしまった。
その音で混乱しかかっていた思考が平静を取り戻す。
同時に……これから誰にも見られたくない行為をするということを再認識し、今更ながらに迷いが生まれる。

……本当にいいのかよ、圭一。
詩音は今……ちょっと感情的になってて、こんなことを言い出したんじゃないのか……?
それに大切なものをあげる、って……詩音も初めてってことだろ……?

「ん~……しょ、っと」

だとしたら……詩音の望みを叶えてやることが、結果的に詩音の純潔を穢し、傷つけてしまうことになるんじゃないのか……?
やっぱり、お互いがもう少し冷静になってから決めたほうがいいよな……?

「なぁ、詩音。やっぱりさ、もう少し冷静に…………」

振り向いた瞬間、眼が点になった。
そこには……し、しし、下着姿の詩音が……。

「おまえ、何いきなり脱いでんだぁあぁああああああッッッ!!?」
「……なにって。私たち、これからエッチするんですよね?」
「えっ!? ……あ……う……?」
「エッチするんだから、服くらい脱ぎますよ。……私はエッチするつもりだったんですけど、圭ちゃんは違ったんですか? 抱く、ってことがエッチする、って意味だってことくらい知ってると思ったんですけど」
「だぁあぁああっっ!! 何度もエッチエッチって言うなぁッッ!!」
「まぁまぁ、いいじゃないですか。誰かに聞かれるわけでもありませんし」
「え、ちょ、おまえ……何する気だ……?」

詩音の手が俺の股間へ伸びる。
それを避けるように後ずさり……玄関のドアに背中をぶつけた。

「とりあえず、圭ちゃんには一回すっきりしてもらおうと思います」
「う、うそ……ちょ……っと、やめ……ろよ……!」

俺はなんとか詩音の手から逃れようと腰を落とす。
……それでも詩音は諦めるつもりなどないようだ。

「……ねえ、圭ちゃん。圭ちゃんは今、私のこと……好きなんですよね?」
「えっ?! いや、そ、そうだけど……」
「その好きな女の子が、自分の為にご奉仕したい、って言ってるんですよ? それを拒むつもりですか?」
「そ、そんな言い方はずるいだろっっ??!」
「……ずるくてもいいんです。初めてのときは、相手を先に気持ちよくさせてあげよう、って決めてましたから……」

詩音は俺の股を強引に開き、ジッパーを一気に下ろした。
そして、そのままパンツも下ろし……ビン、っと弾き出されるように怒張したソレが頭を覗かせる。

「……へぇ……想像してたのと全然違いますね。……こんなの入るかなぁ……?」
「……ぅ……うっ……」
「……それじゃ、始めますね」

詩音は小指を立てつつ、右手で俺のモノを握る。
そして、シュッ…シュッ…シュッ……と小気味よく擦り上げ始めた。

「ねぇ、どうです? 気持ちいいですか?」
「……ぇ……あ…………」
「いつもはエッチな本とか見ながらだったりするんですか? それとも誰かを想像しながらとか?」
「……ぁ……そ、それは……」
「……でも、今日は目の前に私が居ますから。……私の下着姿で興奮しちゃってください。それに……なんなら胸を触ってもいいですよ? ほら、結構大きいですよね……?」

そう言って、胸を俺の顔へ近づけてくる……。

……そ、そんなことしなくても、もう充分だから……!
……ほ、本当に出るから……もうやめてくれ……ッ!

そう言おうとしたが、唇が震えるだけで言葉にならない。
そして俺は…………詩音の腹部へ……びゅっびゅっ! と、汚いモノを吐き出した。

「…………えっ? ……け、圭ちゃん!??」

詩音は俺が汚した自分の腹部と、どんどん萎えていく俺のモノを交互に見つめている。

「……あは、あははは……圭ちゃん、意外と早くないですか? ……それに、出すなら先に言って欲しかったなー……」

……詩音は粘り気のある汚らしいそれを、ねちねちと指で弄ぶ。

「……いくら私が圭ちゃんを好きでも、いきなりこんな所に出されたら、さすがにショックですよ……?」

俺は詩音の不満げな表情を見て……不意に涙がこみ上げてきた……。

「ご、ごめん……。お、俺、こんな事されるの初めてだから、わけわかんなくて……それで……」

……ああ、くそ、なに泣きそうになってんだよ……!
……情けねぇ……。

「……そっか。……圭ちゃん、緊張しちゃったんですね……」

そう言うと、詩音は俺の頭を優しく抱きしめる。

「……でもね、圭ちゃん。私だって緊張してるんですよ……?」
「……えっ?」
「……ほら、聴こえますよね? ……私の心臓の音」

押し付けられた胸から……バクンッバクンッ……という俺なんかよりも、もっと大きい心音が聴こえる……。

「……聴こえる」
「……ね? だから圭ちゃんも頑張ってください。私も頑張りますから……」
「……うん。……ごめん」
「……よし! それじゃ、ちょっと待っててください」

詩音はパタパタとベッドまで行き、ティッシュペーパーを手に戻ってきた。

「はい、どうぞ。圭ちゃんが汚したんだから、圭ちゃんが綺麗にしてください」
「……うん、分かった」

ティッシュを受け取り、詩音のおなかに付いた汚いものを丹念に拭き取る。

「……圭ちゃんって、自分が悪いと思ってるときは素直なんですね」
「そ、そんなことないと思うけど……」
「…………圭ちゃんみたいな弟が欲しかったなぁ…………」
「……え……?」
「……なんでもないです……」
「………………。……綺麗になったぞ……」
「はい、お疲れ様です。ご褒美に、これを好きにしていいですよ」
「えっ?」

目線を上げると……そこには下着を外した詩音の胸があった。
初めて目の当たりにする、同年代の女の子の乳房。
衣服の上からでも分かっていたことだが、やはり大きい。
そのくせ、先端部分は申し訳程度しかなく……周辺は幼ささえ感じさせる淡いピンクで彩られている。
あまりに扇情的なそれに、思わず生唾を飲み込んでしまった。

……これは……やばいだろ。
不本意だが、一度吐き出しておいて正解だったかもしれない。
何もせずにこんな物を見せられていたら、詩音を無理やり犯していた可能性だってある……。

「……し、詩音。これ、本当に……」

と、そこまで言って詩音の目線がおかしな位置へ向いていることに気づく。
その視線を追ってみると……再び膨張しつつある自分の股間に行き着いた……。

「おわぁあぁああぁあああぁああッッッ!!?!?」

さ、さすがに大きくなる過程は見せたくないぞッ!?
あわててそれを手で隠そうとしたが……詩音に手首をつかまれ、止められた。

「詩音……!??」
「……隠さないでください。どういう風におっきくなるか、興味あるんです」

詩音に手首をつかまれたまま、ふたりで息子の成長を見守る。
すくすくと育った息子は、先ほどよりも猛々しくそそり立った。

「……なんかさっきより大きいですね。ちょっと動いてますし……」
「………………」
「……胸でこれなら……その……アソコを見せちゃったら、もっと……? だ、だとしたら、本当に入らないかもしれませんね……はは、あははは……」
「……………………帰る」
「へっ?」
「もういいッ! もう帰るっ!!」

立ち上がり、ドアノブに手を掛ける。

「……あんなの見られたら、もうお嫁に行けないだろ……ッ!」

ガチャガチャと必死にドアノブを回すが……。

「あ、あれ? 」

ひ、開かない……なんで?

「もぅ、さっき鍵を掛けたじゃないですか」

あぁ、そうだったっけ……。
詩音に引きずり倒されながら、思い出した。
……俺はすぐに身を起こし、あぐらをかきダンマリを決めこむ。

「ねぇ、圭ちゃん。機嫌直してください」
「………………」
「私はぷりぷりしてる圭ちゃんより、にこにこしてる圭ちゃんが好きだなぁ」
「………………」
「こんな所じゃなくて、やわらかいベッドの上で楽しいことしましょうよ~」
「………………」

詩音に肩を揺さぶられるが、断固無視。
……我ながら幼稚な抵抗だとは思うが、これ以外に方法を思いつかないのだから仕方ない。

「そうだ、これならどうです? えぇい☆」

詩音は俺の背中に抱きつき、胸をむにー、っと押し付けてくる。
その感触に、下半身は素直に反応するが……。
……ふん、だが心までは堕とせると思うなよ……?

「ふぅ……しょうがないですねぇ」

背中の感触が無くなった……と思う間もなく浮遊感。

「……えっ、ちょ、うそっ??!」

お、俺は、その……詩音に……いわゆる、お、お姫様抱っこをされている……。

「圭ちゃんって男の子の割りには軽いですね。私やお姉よりも、少し重いくらいです」
「……だ、だからって……こんな軽々と……」
「私はこれでもお姉くらいなら簡単に投げ飛ばせますよ?」

……それにしたってなぁ……。
詩音はそのまま俺をベッドに運ぶ。
この格好は恥ずかしいが、抵抗しても無駄っぽいのでやめることにした。

「圭ちゃん。誰にもお婿に貰われなかったら、私が貰ってあげますよ」
「……そんときゃ俺が結婚式でウェディングドレスを着て、こうやって抱っこされるわけか。……最悪だな」
「でも意外と似合うんじゃないですか? そうなったら私はタキシードですね」
「あぁ、そっちは似合うかもな……」

ふたりして下らない話で盛り上がる。
……うん、やっぱりこいつは悪い奴じゃない。
魅音とはタイプが違うけど……話してて楽しいし、会話の相性も悪くないと思う。

「ほいっと」
「おわっ!??」

ベッドに放り投げられた……。
さ、最後はぞんざいな扱いだったな。

「まったく……って、お前なにしてんだぁーーーッッ!!?」

詩音が俺のズボンを脱がそうとしている。

「え? だって私だけ脱いでるなんて不公平じゃないですか。それに圭ちゃんが私の服を脱がせたわけですし」
「んなことはしてねぇッ! お前が自分で脱いだんだろっ!?」
「そうでしたっけ? それなら圭ちゃんも自分で脱いでください」
「…………は?」

詩音はニィ……と笑いながらこちらを見つめている。
し、しまった……ハメられたッ!!?

「さぁ、早く脱いでください。一番恥かしい部分は見られてるわけですし、そんなに抵抗はありませんよね?」
「……分かったよ。脱げばいいんだろ、脱げば……う……うぅ……」

まさか女の子に鑑賞されながら、自ら服を脱ぐはめになるとは思ってなかった……。
自分の衣擦れ音なんぞ聴いても全然嬉しくねぇ……。

「……綺麗な肌ですね。お姉がメイド服やスク水を着せたがるのも解ります」
「いやぁぁあああ!! そんなこと言わないでくれぇ!!」

これ以上の辱めは精神衛生上よろしくないので、さっさと脱いでしまおう。
さて、残るはパンツだけだが……。

「あの……さ。パンツは」
「全部です」
「………………はい」

俺はやけくそ気味にパンツを脱ぎ捨てる。
さぁ、これで全裸だ。
もうなんでも来いってんだ、ちくしょうっ!!

「全部脱ぎましたね。それじゃ、これ着けてください」
「……なにこれ?」

えぇっと、コンドーム?
……着け方がよく分からんが……被せりゃいいのかな?

「あ、説明書に正しい着用方法が書いてありますよ」
「本当か? 見せてくれ」
「ちょっと待ってください。私が着けてあげますから」
「は? え、ちょ……」

詩音はコンドームを包みから取り出すと、俺の股間をいじり始めた。

「ちょっと待て、なにをそんなに触ってるんだよっ!?」
「だって、ちゃんと勃起してないとダメって書いてありますよ?」
「いや、ここまで大きくなってりゃ充分だろ」
「そうなんですか? えぇ~っと、それじゃあ次は……」

詩音は真面目な表情で説明書を読みながら、俺にコンドームを着けている。
その姿があまりに真剣なので、不意に苦笑してしまった。

「……何がおかしいんですか?」
「いや、別に。……真剣だな、と思ってさ」
「当たり前じゃないですか。ちゃんと着けなきゃ危ないんですから。……はい、これで大丈夫です」

そう言うと、詩音はベッドへ仰向けに寝込む。

「それでは。改めまして、どうぞ」
「……む」

自分の胸を両腕で持ち上げている。

「さぁ、好きにしていいんですよ」

好きにしろって言われても……どうすりゃいいんだ。
も、揉めばいいのかな……?
詩音の胸を掴み、少し強めに揉んでみる。
……や、やわらかいな……。
よく見ると肌は白く、透き通るようで……食い込んだ俺の指が不釣合いだった。

「あっ!? ……け、圭ちゃん……その……い、痛い……です……」
「え……うそっ?!!」

とっさに胸から手を離す。
い、今のでも痛いのか……?

「ご、ごめんッ!! その……わざとじゃないんだっ!」
「………………」

詩音は困ったような表情で俺を見つめている。
お、怒らせた……かな?

「圭ちゃん……ごめんなさい。……私、嘘をつきました」
「え? な、なんのことだ……?」
「……さっきは好きにしていいって言いましたけど……本当は……やさしく……して欲しいです……」

詩音の遠慮がちな……恥じらうような表情に、後頭部をガツンと殴られたような衝撃を受ける。
……あぁ、やさしくするよ、やさしくするさ、やさしくするに決まってるだろッ!!?

「……分かった。やさしくする。……だから、どういう風にしたらいいか……教えてくれ」
「……はい。……えぇっと……もっとこう、下から……」
「……こう……か?」

詩音の胸を下から持ち上げるように……やさしく揉みしだく。
詩音がほんの少しだけ身をよじらせた。

「……痛いか?」
「……え……っと……その……逆です……」
「………………気持ちいい?」
「………………はい。……気持ちいいです……」
「……それなら、このまま続けるぞ」
「……はい」

丁寧に丁寧に。
大切な物を傷つけないように。
詩音の胸を愛撫し続ける。

「……う……ん……ふぅ……ふっ……」

詩音の呼吸が少しだけ荒くなってきた。
……目を閉じているってことは、少しは信頼してもらえてるってことかな……。
……なら…………そろそろいいかな……?

「……詩音。その……さ」
「……?」
「……その……舐めてもいいか……?」
「……む、胸をですか……?」
「ああ。……絶対に……絶対に痛くしないから、さ……」
「………………」
「い、いや……なのか……?」

詩音はふるふると首を横へ振った。

「じゃ、じゃあ……いいんだよな……?」

今度はこくりと縦に振る。

「それじゃ……痛かったら言ってくれよ」

俺は詩音の右胸の乳首をはむ、と丸ごと口に含む。
そして、舌先でちろちろと舐めてみた。

「んんっ……!」

詩音がシーツをきゅ、っと掴む。
……痛いわけじゃないよな……?
悪い反応ではないと断定し、色々と試してみる。

乳首の周りを、円を描くように舐めてみたり。
ちゅっ、ちゅっ、と軽く吸ってみたり。
舌の先でピン、ピン、と弾いてみたり。

「……んん、はぁっ……あ……んんっ……!」

そのたびに、詩音は素直に反応してくれた。
……詩音の身体が火照ってきたように感じる。

「……け、圭ちゃん……。……は、反対側も……」

……こっちは……少し強めに吸ってみるか。
ちゅちゅー……と、わざとらしく音を立てながら吸い上げる。
最後にちゅっ、と口を離すと……胸がぷるん、と波打った。
………………。
……も、もう一回やってみよう……。
適当に舌で転がし、最後に吸いながら口を離すと……さっきと同じように揺れる。

……これはいい……。
なんというか……これを見られるのは一種の特権だよな。
俺はこの芸術的とさえ言える現象を見るために、何度も何度も詩音の胸を吸った。
左右の胸を平等に。
もちろん、吸っていない側の揉む手も休めない。

「はぁっ……はっ……あ、あの、圭ちゃん……」
「……ん?」
「その……そろそろ……」

そう言いながら、股をもじもじさせている。
つまり……その……。

「……圭ちゃんが脱がせてください……」

そういうことらしい。
詩音の恥部に視線を向けると……下着がぐしょぐしょに濡れていた。

「それじゃ、脱がすぞ……」
「……はい。あ、で、でも……いきなり挿れたりしないでくださいね……?」
「し、しねぇよ、そんなことっ!!」

詩音の下着に手を掛け、するすると下ろしていく……。
その途中で、まだ靴下を履いていることに気づいた。
もちろん、それを脱がすような無粋なマネはしないが。
そのまま下着を取り去り、詩音のソコへと目を向けた。

産毛と見まがうほど薄い陰毛は愛液でぬらぬらと湿っている……。

「……詩音……広げてもいいか……?」

詩音はどこからか取り出したクッションを抱きしめていた。

「……は、はい。でも、恥かしいんですから、あんまりジロジロ見ないでください……」

そう言ってクッションで顔を隠した。
……かわいい奴め。
俺は両の親指で詩音のソレを押し広げる。
……そこは赤く充血し、つやつやと濡れていた。

「……指、入れてみてください」
「……え……っと、ここだよな?」
「……そこです」

そこへ中指をつぷ、と入れてみる。
充分に濡れていたので抵抗はほとんど無かった。
そして、少しずつ指を動かす。
にちり、にちり、といやらしい音を立てながら。

「……どうだ?」
「……その……くすぐったいです」
「へっ!? うそぉ……」

俺のやりかたって間違ってるのか……?

「あ、いや、その……気持ちはいいんですけど……やっぱり他人の指だと、違和感があるというか……」
「つまり自分の指なら違和感はないわけだ。……詩音もオナニーするんだな」
「えッ!!?」

詩音はクッションから半分だけ見せていた顔を、再び引っ込める。

「そんな事はどうでもいいじゃないですかっ! 馬鹿っ!!」

悪いが、こんな状況で馬鹿と言われても興奮するだけだ。
俺は詩音の中を適度に引っかきまわし、淫らな糸を引かせながら指を抜いた。

「これだけ濡れてれば、もう挿れても大丈夫だよな?」

詩音はクッションをぎゅっと抱きしめ、うなずく。
俺は詩音の腰を引き寄せ、脚を抱え上げた。
……そして、お互いの性器を密着させる。

「……念のために聞いておくけど、本当に俺でいいんだな……?」
「……はい。圭ちゃんじゃなきゃ嫌です……」

そこまで言われて躊躇う必要はない。
っと、その前に聞いておくことがあったな。

「その……詩音も初めてなんだろ? ちょっとずつ挿れた方がいいか、それとも……」
「……一気に挿れちゃってください。痛いのは一瞬の方が気楽ですから」
「……分かった」

俺は詩音の入り口に亀頭をつぷり、と差し込んだ。
あとはこのまま一気に奥まで挿れるだけなのだが……。

「詩音。そんなに力むと余計に痛いんじゃないか? もう少し力を抜いた方が……」
「だ……大丈夫ですよ」

いや、身体をそんなに強張らせてたら絶対に痛いって。
単純に緊張もあるのだろうが、それ以上に破瓜の痛みへの抵抗が強そうだ。
……しょうがない。

「詩音、やっぱりやめようぜ」
「……えっ!? な、何でですかっ??!」

詩音が緊張を解いた瞬間を見逃さずに……一気に奥まで貫いた。

「ひぐぅッ!!? ……ぅ……い、痛い……痛いです……」

詩音は表情を歪め、目には涙を浮かべている……。

「詩音、大丈夫か……?」
「大丈夫じゃないですよッ! なんでこんな事するんですか!? 痛くしないって……やさしくしてくれるって言ったのに……!」
「ごめん……でも、あのままだとこれより痛かったはずだし……」
「……ひっく……ひっ……わあぁあぁぁんっ……!」

結合部に目をやると、純潔を失ったことを知らせる血が流れ出していた。
俺は泣き出した詩音を慰めるために、その身体を抱きしめてやる。

「俺が悪かったよ。謝るから、泣かないでくれ……」
「……うっく……うっ……」
「……お詫びにさ。今日だけは詩音の言うことをなんでも聞くから」

そこでぴたりと泣きやんでくれた。
……少し甘いかもしれないが本当に悪いと思ってるんだから、これくらいはしてやりたい。

「…………なんでも?」
「あ、いや、俺に可能な範囲で」
「……じゃあ……私が痛くなくなるまで抱きしめててください」
「……そんなのでいいのか?」
「はい。私が痛くなくなるまで、ずっとですよ?」
「……分かったよ」

この程度でいいのならお安い御用だ。
もともと痛くなくなるまで動かすつもりはなかったわけだし。
……詩音の顔を見やると瞳を閉じ、満足そうに微笑んでいた。
機嫌も直ってくれたようで一安心だ。

「…………ん?」

……あれ?
詩音って、その……こんなにかわいかったっけ……?
いや、美人だとは思ってたけど、なんで急に……こんな……。

「……圭ちゃん? どうかしましたか?」
「え!? いや、別に。なんでもない……」
「…………?」

詩音は怪訝な表情で俺を見つめている。
……目を合わせると……その……息が詰まるというか……。
……俺って……もしかして詩音を……?
「圭ちゃん。そろそろ大丈夫みたいです」
「そろそろって……? あ、ああ。分かった……」

俺はゆっくりと腰を動かし始める。
そして、そこから得られる快感に身震いした。

(これは……オナニーとは全然違うな)

己の肉欲を満たすために何度も何度も腰を振る。
そのたびにお互いの粘膜が薄いゴムを隔てて擦れあう。
にちゃ、にちゃ、と淫らな音を立てながら。
抱きしめた詩音の身体が火照っている。
そして、お互いの体温を感じることが、さらに情欲を深めていく。
……もう……そろそろか……。

「詩音。そろそろ……」

詩音が頷いたことを確認すると、今までより深めに突き挿れる。
詩音を強く抱きしめ、何度も何度も突く。
そして最後に奥まで突いた瞬間にびゅる、びゅる!と白濁液を吐き出した。

「…………っはぁ……はぁ……ッ!」

詩音の中からずるりと引きずり出し、コンドームの先に溜まった精液の量に驚く。
これ……さっきより多くないか……?
二度目の射精なんだから、さっきより少なくて当然なんだが……。

「圭ちゃん……もう…………………よね……?」
「え、悪い。なんだって?」

意識が逸れていて、詩音の発言を聞き逃してしまった。

「もう一回くらい、できますよね?」
「なっ!? ちょ、待て。さすがに三度は……」
「そんなに出せるんだから大丈夫ですよ。いやだなんて言わせませんよ? さっきの約束があるんですから」
「馬鹿、ちょ、やめろ、そんなとこをさわ……いやぁあぁぁああぁああああああ!!!!!!!!!!!!」

続く

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最終更新:2008年12月30日 23:40