「ふぅ 少し休憩するか」
疲れた足を休める為に大木の木陰に腰を下ろした。あたりを見回すと美しい森林が広り、小川の流れる涼しげな音が聞こえる。
この島はこんなクソみたなゲームとは似つかわしくない場所だ。綺麗な砂浜もあり、少し開発すればそれなりのリゾート地にはなるだろう。

そんな場所で俺はというと開始早々タカオミ殺されてみんな散り散りになったあと、殺し合いを如何に切り抜けるか考えていた。
そして今のところの作戦は・・・
まず俺を除いて残り1,2人くらいになるまでコソコソ隠れながら行動する。
残りの奴らが戦って弱っているところを襲撃して俺の勝ち。
少々卑怯かもしれないがこれが
ない頭をフルに使って考えた勝ち残る為の労力、罪悪感がもっとも少ない方法だ。

パージュン「やぁ!」
「うおっ!?」

後ろから誰かが肩をポンッと叩き声を掛けて来た。
俺は極力人に見つからないように行動していたので発見されたことに相当焦った。
慌てて腰の鉈を掴んでそいつに振り返る。

パージュン「ちょ、ちょっと待って!僕は戦うつもりはないんだ!ほら、武器だって持ってないし!」
「何?じゃあ何の用なんだ?」

コイツは見た目からは想像出来ないことを言った。いつも「戦いましょう」とか言ってそうなのに・・・

パージュン「えーとね、僕の計画に協力してくれる人を探してたんだ」
「計画?何しようってんだ?」
パージュン「こんなくだらない殺し合いを止めさせる。そんな計画さ」
「そんなこと、できるのか・・・?」
パージュン「確信は持てないけど・・・戦いたくないって人を集めて主催者側に何か仕掛けられれば・・・。
      君だってそんは所に隠れてて戦いたくないって思ってたんでしょ?
「ま、まぁな・・・」
パージュン「君みたいな人を探してたんだ。力を貸して欲しい」

何やら買いかぶられてるみたいだな・・・
だいぶアバウトな計画ではないみたいだけど、人殺しをしないに越したことはない。
とりあえず乗っておくか。

「分かった。俺も協力するよ」
パージュン「ありがとう! じゃあこれからどうするか考えよう。
      この島に何個かある小屋の一つを見つけたんだ。僕の支給品には食料があるからそれでも食べながらさ!」

そうして少し歩いているうちに俺の頭を様々な疑念がよぎる。

コイツは本当に見方なのか? 俺を油断させておいて殺そうとしているのかも知れない。

実際俺だって最後に弱った奴を殺して勝利を掠め取ろうとしていた。

生き残るためなら殺しても罪にはならない。生きて帰らなければ意味がない。

そうだ コイツは俺を殺そうとしている。殺される。

疑念は恐怖と不安に変わり俺の頭の中を埋め尽くそうとしていた。
これを取り除く方法は一つしかない。

殺られる前に先手を打つ。コイツは、いや他の奴は全て敵だ。殺す以外に何がある?

「騙されないぞ」
パージュン「え?」

その一声を聞いただけでもうパージュンは喋らない。
彼の頭には渾身の力で叩きつけた鉈がスイカを割るようにめり込んでいる。もう喋れるはずがない。

「これでよかったんだよな・・・」
俺は初めて人を殺した感触に圧倒されながらしばらく呆然としていた。
だが何時までもつっ立ってるのは危険だ。次は俺が殺される番かも知れない。

死んだパージュンから荷物だけを奪い再び生い茂る森の中に入った。
荷物を漁って出てくるのはカンヅメ、レトルト食品やら食料ばかり。

「ホントに武器を持っていなかったのか・・・?」
次第に後悔の念が湧き上がってくる。だがそんなものはすぐに打ち消される事となった。

「これは・・・」
食料に混ざって出てきた小瓶。中身は粉末でラベルが貼ってある。

「夾竹桃・・・」
夾竹桃。有名な有毒植物だが普通に栽培されていることもある。うちの学校でも花壇にあったはずだ。
それはさておき、夾竹桃の粉末ってことは毒薬に違いない。
食事に混ぜて毒殺するつもりだったのだろう。
ほらみろ!やっぱり俺は正しかったんだ!

自分がやったことは正当防衛。そう思いたかった・・・


-夾竹桃の花言葉は「危険、用心、油断大敵」だよ。毒があるから気をつけてね-

前にアオイが言っていたそんな言葉を思い出した。

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最終更新:2009年04月26日 04:50