政治番組の顔、ティム・ラサートを偲ぶ
 
6月13日(金)午後3時半、NBCは突然番組を中断し、元アンカーのトム・ブロコウが沈痛な表情で現われた。『悲しいニュースを伝えなければならない。私の同僚であるNBCワシントン支局長のティム・ラサート(58歳)が今日オフィスで心臓発作で倒れ息を引き取った』と全米に向けて語った。

米国はこの日、深夜までラサート氏急死の報道一色となる。NBCとMSNBCは、週末も彼の追悼番組を組んだ。
何人かのTVジャーナリストは、「NBCの追悼騒ぎ」と苦言を呈したが、視聴者は追悼報道を支持したようだ。
ブロコウの発表直後、MSNBCの午後4~5時の視聴者数は約100万人と、通常の同時間帯の220%増しとなった。ライバルのFOXニュースも同時間帯は視聴者数が3%増え約100万人。CNNも16%増えて80万人に達したという。約300万人が、ラサート氏急死のニュースをケーブルで見たことになる。
夜になっても午後8時から11時まではMSNBCは視聴者数が64%上昇、CNNが14%上昇した。

ラサート氏が1991年以来17年間メディエーターを務めていた日曜午前9時のNBCの政治討論番組「ミート・ザ・プレス」は15日、司会者席を空席にし、ブロコウが進行役となって追悼特集を流した。通常の視聴者数は390万人だが、この日は約600万人が視聴したと推定される。同番組の過去最高は2001年9・11直後の日曜で900万人であった。

18日にはワシントンのケネディーセンターで葬儀があり午後4時から1時間半にわたりMSNBCが中継した。

「ミート・ザ・プレス」は、6月22日は全国版ニュース「ナイトリーニュース」のアンカーであるブライアン・ウィリアムスが仮司会を務める。以降、正式な後任司会が決まるまで、アンドレア・ミッチェル、デビッド・グレゴリー、キース・オルバーマン、クリス・マシューズらがローテーションで司会を行う。


ラサート氏はNY州バッファロー出身、弁護士からクオモ元NY州知事のプレス担当を経て1984年NBC入り、88年にワシントン支局長(副社長)になった。今年、タイムズ誌の世界で最も影響力のある100人の一人に選出されたばかり。女性雑誌記者の妻と22歳の息子がいる。

 大統領選挙のさなか、米国は大事なジャーナリストを失った。

最終更新:2008年06月21日 03:23