ニューヨークの街を歩いていると、「これって何だろう?」と、思う物をよく見かける。
最近の「?」な物は、歩道に登場した、鉄の棒をクネクネと曲げて作ったとみられるオブジェ…?!靴の形や女体など、全く違った形の物が、いくつか見られる。
さぁ、一体これらは、何でしょう?
五番街の高級デパート前に靴の形をした物が。グラマラスな女体は、タイムズスクエアのど真ん中。そして、抽象的な形をした物が、ニューヨーク近代美術館(MOMA)前に設置されている。その他、コーヒーカップ、犬、ギター、人、車、ドルマークと、全部で9種類の形があるようだ。
新たな公共アートか?と、思いきや、実はこれ、自転車をつないでおく駐輪用のスタンドなのだ。
ニューヨークは、一昔前に比べると格段に治安が良くなったが、今でも、自転車の盗難は起きている。鍵をかけていても、何かにしっかりとつないでおかなければ、数時間後には跡形もなく姿を消してしまう事があるのだ。その為、街の各所には、日本でも見られるようなM字型やU字型の鉄製の駐輪スタンドが設置されている。そんな中、ニュースタイルの駐輪スタンドが登場したのだ。
ところで、茶目っ気たっぷりの駐輪スタンドは、誰が制作したかと言うと…。70年代半ばから80年代にかけて人気を博したバンド、『トーキング・ヘッズ』を覚えているだろうか?  そのメンバーで、ボーカルとギターを担当していたデヴィッド・バーン氏が手がけたのだ。『トーキング・ヘッズ』は、ニューヨークにある伝説のライブハウスと言われた『CBGB』でデビューを飾り、世界中にその名を知らしめたバンドで、メンバー全員が、名門美術学校の出身者。中でも、デヴィッド・バーン氏は、バンドの解散後、アートの分野でも活躍を続け、この駐輪スタンドを作ったのだ。作った理由は、「今までの駐輪スタンドがあまり面白くないから…。」明快な理由だ…。そして、ニューヨーク市がこうした、茶目っ気溢れる駐輪スタンドを気に入り、今の所完成している9個全てを正式に採用する事にしたのだ。
しかし、数年前に、デヴィッド・バーン氏は、マンハッタンの自転車専用道路の事故多発箇所に、勝手に“ストップサイン”を描き、ニューヨーク市から厳重注意を受けた事がある為、今回の依頼を「冗談だと思った。」と、語っている…。ちなみに、デヴィッド・バーン氏は、熱心な自転車愛好家としても有名で、ここ数年は、エコロジーの観点からも、自転車利用を強く勧めている人物だ。
季節はもう間もなく芸術の秋を迎える。街中を散策中に出会える小さな芸術作品として、話題になりそうだ。
最終更新:2008年08月30日 03:45