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先内剣(キャラ) - (2007/01/20 (土) 23:54:01) のソース

&color(green){(2らせん目以降)}
「君の周りの空気は、夏の空気のような
 気がする。
 君とは初めて会った気がしないが、
 それと関係あるのかな。
 …いや、答えたくないなら、
 それでもいいんだ。」


「僕の名前は先内 剣(さくない けん)だ。
よろしく。
この辺では変わった名前だと思うけど、
僕の地元じゃ、それほど珍しくもない。」


先内は、あなたの方向を手探りで探しました。
「ああ、僕は目が見えなくてね。
明るささえも分らない。
もっとも他の感覚が優れているから、
戦闘も、日常生活も、たいして問題ない。
実際、山岳騎兵にもなれたしね。」


「目が見えなくて困る事は、
自然の中よりも人間の作ったものの
方が多いね。
例えば、僕は点字以外読めないが、
実際多くの本は点字で書かれてはいない。
結局、人間が目に頼り過ぎているだけで、
もっとそう、目に頼らなければ、
色々な可能性が出てくるんじゃないかな。」


「来たね。
君の匂いは独特だから、すぐわかる。
ははは、匂わなくても大丈夫。
他の人には、わからないさ。
僕は感情だって匂いでわかる。
今は、恥ずかしがっているね。
ははは。
こういう時は、
第6世代でよかったと思うよ。
戦いのために作られたクローンの僕らだが、
戦い以外で役に立つ事もあるというわけだね。」


「人類が負けるとか、この国が終わるとか、
そういう事を聞くぐらいだから戦況は
悪いようだけど、僕はそう思えないな。
何だろう。
森に出ればわかるけど、
一時期ほど悪くない感じがする。
単に見えていないだけじゃないかと
いう気がするよ。
人間は見えてないだけで文句を言うからね。
そう、丁度、明かりが消えたからって
停電したわけじゃない。
そんな感じだよ。
…わかりにくいか。
うーん。
そうだ、明かりが消えたら窓を開けて
月を見るのはどうだろう。
僕は触った事がないからわからないけど、
形が変わる丸いものらしいよ。
すまない、自分でしゃべってて
訳がわからなくなってきた。」


「…みんな、事ある毎に愛国心とか
言ってるけど、僕は複雑な気分だね。
僕は愛国心がどれだけ人を殺したか
良く知っている。
その名前を出せば、守るべき国民を
殺す理由になりうると思う人も
いるんじゃないかな。
ここにいる人は、
そこまで悪辣じゃないけどね。」


「僕は幸せだな。」
&color(gray){(なぜ?)}
「僕を気にかけて
話しかけてくる人がいるから。
それ以外に何がある…。
ああ、すまない。
目が見えると、以外にあるのかも
しれないね。
僕は最初から見えないから全然気にしないが、
見えるなら見えるなりに、大変かも知れないね。
欲深く生きるという事はきっと、
満たされる事が少ないんだろう。
だからきっと、幸薄いに違いない。」

&color(gray){(そうかなあ?)}
「そうさ。
僕を気にかけて、話しかけてくる人が
いるんだから。
ははは、目が見えると言うのも
色々大変みたいだね。
きっと、色々誘惑があるんだろう。
僕の場合は、君とかが気を遣って
くれているだけで十分だよ。
……あー。
負け惜しみじゃなく、
本当にそう思っているよ。
君が気を遣ってくれているのは本当だ。
そういう匂いがする。
だから……ね。」


「なあ、僕の代わりに見て欲しいんだが、
最近、空がおかしくないか?」
&color(gray){(普通に見えるけど)}
「そうなのか!?
……いや、すまない。
驚きだな、そうなのか。
目が見えているなら、
驚くべき事ではないのかもしれない。
……そうか。
空に穴が開く事は珍しくないのか。
素朴な驚きだよ。」

&color(gray){(どんな風におかしい?)}
「ひどい低気圧になってるとか、
そう、例えば空に穴が開いてるとか、
それくらいのすごい事だよ。
……さすがにないか。
耳に、耳障りな音が時々まじるんだ。
絶対間違いないと思ったんだが。」


「僕は小さい頃、猫には翼が生えていると
思っていたよ。
触った事がなかったからね。
ははは。
話に聞いた猫というのは、
気高くて自由で高い所から人を見下ろしていると
言うじゃないか。
だったら、絶対羽が生えていると
思ったんだ。
今でも僕の心の中では、猫には翼が生えている。
きっと見えないだけだと思うけどね。
スキピオ猫にも生えているかも知れないよ。」


「ふふふ。
君が傍に来ると、自分の心臓の音が
激しくなるのが聞こえる…面白いね。
君が傍に来たと頭がわかる前に、
心臓は動いている。
生命は不思議で満ちている。
僕は、この生命を生んだものが何なのかは
わからないけれど、
それはきっとすごいものだと思うよ。」


「…人間の幸せなんていうものは、
所詮は一人の心の問題だよ。
僕は、そう思うよ。
だって、お金持ちや身分の高い人と話す時も、
その人から幸せな匂いや音が聞こえる事は
めったにないから。
だからといって、みんな勉強したり、
働かないのもいけないけどね。
僕は思うよ。
地獄のような戦場でも、
人はきっと幸せになれるよ。
少なくとも僕は、自分の人生の中でも、
今は幸せな方だと思っている。」


「いい正義、頼もしい仲間、良い上官、いい女。
動物兵器は僕たちを信頼している。
森は歌を歌っている…大地の歌を。
何で皆、そんな事に気づかないのかなぁ。
たとえ平和でも、人を疑い、
動物達を踏みつけながら生きる事は幸せではない。
僕は目が見えないから、それに気づいた。
でもそれはただのきっかけだ。
目が見えていても、わかるはずだよ。
そんなことぐらいは。
このままでは、遠い未来に
あの頃は良かったと戦時中の事を
思う事になるよ。
ひどい倒錯だ。
それはいけない事だ。
どうにかしないと。
…どうにか。
ふ。
…とはいっても、どうしようもないか。
こればかりは、
人に言われて気づくものじゃない。
叩かれてわかるものじゃ、ないだろうから。」


「幻獣には口がないというけれど、
それは本当なのかな。
僕は、時々彼らの会話が聞こえる時がある。
彼らに口がないなら、僕が聞こえているのは
何だという話になる。
…皆は目で見る事にこだわるあまり、
何かを見逃しているんじゃないのかな。
そんな気がするよ。」


「最近、君の心臓の音を聞くのが楽しみでね。
音を聞いていると、幸せな気分になる。
耳をあてなくてもわかるよ。
遠くても間違いようがない。
心臓の音というものは、そういうものさ。
…人が死んでも、親しい人の周りでは、
しばらくその音がする時がある。
そういうものだよ。
僕がその話をすると、みんな急に
鼓動の音がはやくなるけどね。
ははは。
でも、本当なんだよ。」


「僕は、幸せな事に目が見えない。
もっと幸せな事に、それが不利な事に
ならないよう、みんなが気を遣ってくれた。
おかげで、何かを憎む事も、
あまりしないで生きてこれた。
これからもそうである事を願う。
…負け惜しみじゃないよ。
僕は生き方を間違ったら、君のような人を
憎んで生きていたかもしれない。
でも僕は、そんなんじゃない。
それは負け惜しみじゃないだろう。
何かに感謝すべき事だ。」


「幻獣の声が聞こえるという事は…。
敵の言葉がわかる事は、幸せなのか。
それとも、そうでないのか…。
難しいな。
成績はともかく、
本質的に頭の悪い僕には難しい。」


「僕は君が好きだよ。
何かひどく自由なものを感じる。
君の肉体と心は結びつきが弱くて、
時々、ひどく遠くに心があると感じる。
だからきっと、僕は好きなんだろう。
そんな話を、むかしエヅタカヒロの
絵のない本で読んだ事がある。
…そう、エンプという風の妖精だ。
何ものにも縛られず、何人にも縛られず、
未来永劫、悪しきものと戦うただの妖精。
ただの妖精なのに未来永劫戦うんだからな。
格好いい話だよ。
自由を奉じ、悠久不滅の心だけをもった
子供達の守り神。
それは銀の剣をもって、豪華絢爛なる
戦いという名の舞踏を踊るそうだ。」


「武は、矛を止める事こそ極意がある。
強いものが弱いものを、
好きに出来るというのは、僕は違うと思う。」


「君は、すごく強いようだね。
少なくとも、その可能性はある。
ははは、変な話じゃないよ。
君の噂を良く聞くだけさ。
残念だったね。
…君の噂を聞くたびに、風が強くなる。
上昇気流だ。
空に穴があくような、そんな感じだよ。
非科学的だけど、この風が君を連れて行って
しまうんじゃないか。
…そう思う時があるよ。
そういう感じの風だ、これは。」


「もういい、もう十分だ。
幻獣達は恐れている。
それ以上、戦う必要はない。
我々は、武を汚すために
生きているわけではない。
…だから、いいんだ。
戦いを、やめてくれ。」


「すまない、この間は変な事を言った。
でも、悲しく思ったんだ。
君が、ただ殺すだけの存在だと
言う事を僕は認めたくなかった。
だから、敵への哀れみではなく、
ああ言った。
君が強いのは知っている。
だが、それだけじゃない事も
僕は知っているから…。」


「…すまない。
しばらく考えさせてくれ。」


「僕は、自分の外見を気にしないでよかった。
雪子が世話してくれたし、そんな事を
構わなくても、皆気を遣ってくれた。
だから、自分を偽る事も飾る事も必要なく
ここまで来た。
今幸せだから、だからきっと偽る事も飾る事も
必要ないというのはすごく幸せなんだろう。
だから、正直に言おう。
君が好きだ。
返事は、いらないよ。
これは告白じゃないから。
ただの意志表明だ。
嘘をつかないでこれたから、
これからもそうしたいと思ったまでの話だ。」


「あの事なら…、
僕の言葉なら気にしないでもいい。
今は戦争の事だけを考えていればいい。
考えるならそう…この戦いが終わった後ででも、
それで十分だよ。」


&color(gray){(エンディング)}

僕は普通でしたよ。
僕はね。

ー山岳騎兵の述懐



その日、撤退を支援するヘリの群れが来た日、
貴方は先内を支えて、最後のヘリに乗りこもうと
していた。
この地とも、お別れだ。

「…どうしたんだい?
妙にドキドキしているようだけど。」

&color(gray){(返事を考えていて)(そ、そう?)}

「ああ、僕が好きだって君に言った事の返事か。
……いや、赤面しないでも。
ああ、わかるんだよ…近くだから。
頬が温かくなっている事くらい、わかる。
……距離とらないでも。
まあでも、そうだな。
じゃあ、返事はヘリの中で聞かせてもらうよ。」

そう言うと、剣は優しいような
意地が悪いような、そんな笑顔を浮かべた。



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