原著論文
Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (MEGA Study): a prospective randomised controlled trial.
Nakamura H, Arakawa K, Itakura H, et al. Lancet 2006;368:1155-63.
Pubmed
論文のタイプ:治療
論文のデザイン:RCT
論文のPECO
- P(patient):高脂血症があり冠動脈疾患や脳卒中の既往のない患者(7832人)
40-70才で体重40kg以上の男性と閉経女性で、総コレステロール220-270mg/dlの人を対象。
家族性高脂血症、冠動脈疾患や脳卒中の既往のある人はあらかじめ除外。
患者背景:平均年齢58才、女性が約68%、高血圧合併率42%(平均血圧132/78程度、39%は降圧約内服中)、糖尿病合併率21%、喫煙者(現在および過去)約20%
総コレステロール平均値243mg/dl、LDLコレステロール平均値157mg/dl、HDLコレステロール平均値58mg/dl
- E(Exposure):食事療法+プラバスタチン(3866人)
プラバスタチンは1日10mgから開始。総コレステロール値が220mg/dl以下にならない場合、1日20mgに増量することができる。
- C(Comparison):食事療法(3966人)
食事療法は、NCEP(National Cholesterol Education Program) stepⅠに基づいて指導された。
両群ともに総コレステロール値が270mg/dlを超えた場合には、スタチン治療を含む別の積極的な治療に変えることが可能である。
- O(Primary Outcome):冠動脈疾患の初発発症(下記複合エンドポイント)
一次アウトカム:致死的・非致死的心筋梗塞+狭心症+心臓死・突然死+冠血行再建術
二次アウトカム:脳卒中、冠動脈疾患+脳梗塞、全冠血管イベント、全死亡
論文の妥当性
- ランダム化か?:されている。PROBE(Prospective Randomized, Open, Blinded Endpoint)試験である。(二重盲検を採用せず、治療をオープンで実施し、治療効果は盲検化して評価する方法)
- ITTか?:されている。 追跡率98.7%
結果(一次アウトカムについて)
平均追跡期間は5.3年。追跡期間中の平均脂質値:食事+プラバスタチン群で総コレステロール215mg/dl(11%低下)(食事療法群2%低下)、LDLコレステロール値128mg/dl(18%低下)(食事療法群3%低下)、HDLコレステロール61mg/dl(5%上昇)(食事療法群2%上昇)
一次アウトカムの実数:食事+プラバスタチン群3866人中66人(心筋梗塞発症数17人)
食事療法群3966人中101人(心筋梗塞発症数33人)
- 平均追跡期間5.3年間での一次アウトカムに対する両群の比較
食事+プラバスタチン |
食事療法のみ |
RRR(95%CI) |
NNT(95%CI) |
2.6% |
1.7% |
33%(9~51) |
119(68~497) |
補足
一次アウトカム:
心筋梗塞のみではRRR48%(95%CI 6~71; p=0.03; NNT255)
アウトカムに血行再建術が入っているが、オープンラベルのためバイアスが入り食事療法群により血行再建術が勧められた可能性がある。診断基準のあいまいな狭心症や血行再建術がアウトカムに入っているが、それでも過去の主要トライアルに比べて心血管イベントの絶対リスクは低く、個人の受ける恩恵は少ない。
二次アウトカム:
脳卒中RRR17%(95%CI -21~43; p=0.33; 有意差なし)
冠動脈疾患+脳梗塞RRR30%(95%CI 10~46; p=0.005; NNT91)
全冠血管イベントRRR26%(95%CI 6~41; p=0.01; NNT91)
全死亡RRR28%(95%CI -1~49; p=0.055; 有意差なし)
副作用:癌の発症率、GOT・GPT値上昇率は両群で変わらない。CK500IU/L以上の上昇は食事療法群で2.6%、食事+プラバスタチン群で3.1%、横紋筋融解症の報告はなかった。
薬の値段:pravastatin(メバロチンR)10mg錠145.5円
最終更新:2008年10月08日 16:52