今日もタンポポを乗せる仕事が始まる。
同業者には会ったことがないけど、大抵は刺身のパックの上にお箸でひとつひとつ乗せていくらしい。
そこへいくと、僕なんかは特殊な例になるんだろうか。
正直、僕は刺身パックの方がよかったなぁ。
確かに、給料はそれなりにいい。
サラリーマンやってる同級生と飲んだとき、
何故か僕のほうがお金をもっていることが判明して慌てて話を変えることになった。
やっぱり手先を使う、職人気質な仕事だからだろうか。
それに、使っている仕事道具だって豪華だ。
タンポポは阿坊宮という食用菊。それも地下3000メートルから掘り出した土で育てた特注品。
お箸は屋久島の千年杉で作られた漆塗り際高級ブランドもの。
それでも、僕は刺身パックの方が良かった。
何故って?
だって、僕がタンポポを乗せなくちゃいけないのは―――裸の女の子なのだから。
そう、僕は女体盛り専用タンポポ職人なのだ。
うらやましいって?だったら代わってください。
裸の美女を前にしてタンポポを乗せるしかできないこっちの身にもなって欲しいものだ。
それにちょっと、いや大分困ったことになる。
“器”のお姉さんに聞く話によると、この仕事を長くやっているとパブロフの犬よろしく、
タンポポ=えっちなことっていう身体になってしまうらしい。
タンポポを見ると下半身がままならないことになってしまうし、
タンポポがないと勃起しないようになってしまうのだ。
冗談じゃない。僕は嫌だ。
そんな変態になる前にこんな仕事やめて、通常の性癖に戻らなくては……なんてことを考えてもう一年。
就職格差のご時勢に、やっとありついた職業をそうそう手放せるものか。
まったく、タンポポを乗せる仕事も楽じゃない。
……そういえば、セイヨウタンポポはビッチだってよく言うけど、
あのカールした部分を使いこなせてこそ一流、むしろそこから話が始まると思うんだよね。
最終更新:2007年08月24日 00:40