ある夫婦が郊外にある中古の家を買った。
郊外だが駅までは近いし近所にはスーパーなども多いし日当たりも良好。
それに値段が格安といっていいほどの絶好の物件だった。
友人たちに引っ越しを手伝ってもらい、
飲み会をしたあと遅いのでその日は友人を含めて一緒に新居で寝ることにした。
しかし、夜中バタバタバタ……子供が廊下を走るような音を聞いて何人かが起きた。
気のせいだと思ってまた寝ると、今度は子供の話し声が聞こえて目が覚めてしまう。
そのために朝まで熟睡できたものは誰もいなかった。
誰もが夜に体験したことを不思議がった。そして思った。この家には何かある―と。
全員で廊下を調べていると、青いクレヨンが落ちていた。もちろん夫婦のものでも友人たちのものでもない。
そして、とてもおかしなことに気がついた。
この家の間取りが奇妙なのだ。
クレヨンを拾ったあたりの廊下は突き当たりになっているが、
家のつくりを考えるとそこにはもう一部屋分のスペースがあるはずなのだ。
壁を叩くと中に空洞がある音がする。壁紙をはがすと扉が現れた。
おそるおそるその扉を開ける。
もしかしたらとんでもないものがあるのではないか……
しかし、部屋の中には何もなかった。
ただ部屋の壁すべてに青いクレヨンでびっしりとこう書かれていた。
おとうさんおかあさんがごめんなさいここからだしてください
おとうさんおかあさんがごめんなさいここからだしてください
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ここからだしてここからだして……
女「いや書いても外には伝わらんだろう」
男「野暮なこと言うなよ」
女「密閉されて真っ暗な中でよくそんなに書けたもんだ」
男「野暮なこと言うなって」
深夜、タクシーが赤いコートを着た女を乗せた。
女が頼んだ場所はここからとても離れている山奥だった。
バックシートに座る女はうつむいて表情がまったく読み取れない。
運転手は怪しんだが、言われたところへ女を運んだ。
あたりは人の気配などはまったくなく、あたりはうっそうとした森のようなところであった。
女は料金を払うと木々の間に消えていった。
「なぜこんなところへ…?もしや自殺では?」
運転手は不安になり、好奇心にかられ女の後をつけた。
しばらく行くと目の前に一軒家が現れた。
そこへ女が入って行った。
自殺の線はなくなったが、運転手はこんな一軒家で女が何をしているのだろうと別の興味を持った。
悪いことと知りながらも、鍵穴から中を覗き込んだ。
家の中は真っ赤だった。女も見当たらない。
何もかもが真っ赤で他の部屋への扉も見えない。
なんだか奇妙なその光景に恐ろしくなった運転手は急いでその場を立ち去った。
おなかも空いていたので、山を降りてすぐのさびれた定食屋に入った。
運転手はさきほどの奇妙な女のことを店主に話すと、店主も女のことを知っていた。
「彼女はね、あそこで隠れるように住んでいるんですよね。
かわいそうに、病気か何かわかりませんが彼女眼が真っ赤なんですよ。」
ということは運転手が鍵穴からのぞいた時、女も同じように鍵穴を覗き込んでいたのだ。
女「意義あり。二人の人間がお互い鍵穴に張り付いてみろ。
暗くってなんにも見えないはずだぞ」
男「却下」
男「あー、メシどうしよっかなぁ……適当に出前でいいか」
プルルル……プルルル……ガチャ
男「はいもしもし?」
?『わたし、メリーさん。今あなたの家の前にいるの…』
男「え……。い、今親いないけど……いいの?」
?『………///』
男「………///」
最終更新:2008年02月11日 01:23