ジリリリリリ…
あまり心に優しくない、きわめてレトロな目覚時計の音で目覚めた。
「ふわ~…時間か」
パジャマの上に上着をはおり、朝食を取りに階下へ移動する。
途中、妹を叩き起こすという日課を忘れずに行う。
「うにゅ~…あと五分…」
毎日繰り返される返答、そしてギリギリまで寝る妹はいつも遅刻寸前の登校。
しかし、俺は懲りる事なく毎日妹を起こす。
兄だから。
台所へ下りると余り見たくない光景が目に入る。
男女のキスシーン、それも中年男女だ。
毎朝見てるが、げんなりする事には変わりない。
しかし、俺は両親という中年男女の邪魔はせず、黙って朝食を取る。
息子だから。
玄関を出て真っ直ぐ正面の家に向かう。呼び鈴を押し、しばし待つ。
「ごめんね、遅くなって」
別の学校に進学した幼馴染みと途中まで一緒に登校する。
幼馴染みの話は途中飛躍し、時に理不尽に責められる。最近付き合いが悪い、冷たいだの。
しかし俺は腹を立てる事なく、穏やかに会話する。
幼馴染みだから。
そんな俺を最近振り回す存在。それは…
「おはようです、はるくん」
この一見小学生な同級生の転校以来、俺は振り回されている。
しかし不快ではない。
今は…
ギューッ
「はやくいきましょうです」
「だから、手を握るんじゃねぇ!!」
「ちがいます、うでくんでるのですよ」
「なお悪いわ!!」
最終更新:2008年04月27日 17:50