野望編「テイクアウト」

春樹とトウバンジャンが退場した新醤油学園高等部の屋上。
乙女たちの緊急会議は、わりとあっさりと結論を迎えつつあった。

真「で、どうするのですか?」
ルカ「ん~。何となくだけど、お肉食べさせたら治るんじゃない?」
XO「………そうね。お姉ちゃん、お馬鹿で単純だから。」
甜「……何それ。いくら陽子が単純でえぐれ胸だからって。」
真「ゆかさん!むねのはなしはしてないです!!」
XO「……………………私は構わない。まだ、成長期。」
ルカ「あははは。真智ちゃんみたいな可愛いサイズしか駄目な人も世の中には居るからねぇ~。
   あ、でもさ、ハルがおっぱい星人だったらどうするの~?」
真「ひ、ひどいです!ルカさん!!」
甜「ま、まぁまぁ…。ともかく、陽子の件は貴ちゃんに任せていいのね?」
XO「……………(コクリ)」

黒田はひとりごちる。
甜『そんな下らない事のために放課後に待っている重要な仕事を放棄する訳にはいかない。』

そして帰り道、『重要な仕事』の為に少年は少女に拉致される。
甜「あ!青山くん!!ちょうど良いところ所に!!(がしっ!!)」
春「く、黒田!?(ちょっ!胸!胸が!!)」

辿り着いた先は某スーパーマーケット。
時は夕刻、修羅の巷に少女達は身を躍らせた。

そして数十分後…。多大な戦果を挙げた少女は、激しく損耗した少年に満足げに礼を述べる。
甜「…あ~助かったよ~。ありがとね!」
春「そうだな。お1人3箱限りじゃ、頭数あった方が有利だもんな。…でもさ、何でカップ麺をこんなに?」
甜「だって便利じゃない?すぐ食べれるし、保存利くし。それに値上がりするみたいだから、早めに買わなきゃ損じゃない。」
春「………黒田。…もしかして、料理できないのか?」
甜「…………………うん。」
春『で、カップ麺だけなのか…。…絶対、栄養が偏るよな。』
春「その、なんだ。この荷物だし、お前の家まで送っていく。」
甜「うん。ありがと。」

15分ほど歩いてたどり着いたテンメンジャンの部屋。
簡素といえるワンルームマンションには、最低限の家具しか置かれていない。
賑やかなくらいに縫いぐるみが飾られているルカの部屋とは全く対照的である。

甜「あは。何もないけど、お茶ぐらい出すよ。」
春「…なぁ。一人暮らしなのか?」
甜「…うん。家の事情でね。」

春『こいつ、ずっと一人きりだったんだな…。誰かの面倒を見るのが好きなのも、コイツ自身が人との接点を求めていたからなのか?
  割りち生真面目なタイプのコイツはきっと無理をする。でもこんな食生活をしてたら、いつか倒れる。…一人のコイツが倒れる前に助けられないのか?』
そんな孤独を抱えた彼女を、自分は助けたい。そう思った瞬間、春樹の口は勝手に動いていた。

春「なぁ、黒田。お前さえ良ければ俺の家に来ないか?」
甜「えっ?い、良いの?」
春「ああ。一人分くらい増えても大したこと無い。…一人で10人前食べる居候と比べたら可愛いものさ。」
甜「…うん。じゃあ、お世話になろうかな?」

XOジャンこと豆田貴子。青山春樹の実質通い妻である彼女はいつもの朝の様に、春樹と並んで台所に立っていた。
そこで彼女はある違和感に気付く。
XO「…春樹さん。いつもより一人前多い…。」
春「いや、これで良いんだ。」

まぁ1人前位なら誤差の範囲なのだろう。…先日の騒ぎ以降、青山家で朝食を食べるようになった姉の陽子も居るわけだし。
その姉は激しく中華鍋を煽って炒め物を作っている。肉を食べさせたら元の性格に戻った彼女だが、家事技能は保持していたため貴重な戦力として弁当の準備に勤しんでいる。
XO『…………私の通い妻の立場が。』

そして食卓に着いた時、違和感の正体に気付く。…そして自分のアドバンテージが随分と失われている事も。

甜「えへへ~。貴ちゃん、おはよ。」
XO「………………なんで貴女が?」
母「ん~。昨日、春樹が連れ込んだのよ。"彼女を守りたいんだ!"なんて言って。あら?これってプロポーズ?」

XO『春樹さんが、テンメンジャンを、連れ込んだ?…何で?……身体目当て?……プロポーズ?』
衝撃的な事実と言葉にショックを受ける。しかし、未来の義母の前で取り乱す訳にはいかない。自分は貞淑な妻となる女なのだから。
XO『…………耐え忍ぶ。夫を信じるのは妻の務め。……でも悲しい。腹立たしい。』
とりあえず義母から見えない位置で、思いっきり春樹の腕を抓っておく。
そして、当面の敵であるテンメンジャンに敵意の眼差しを向けてみた。
真「(もきゅもきゅ)」
甜「あらあら。真智ちゃん、口の周りが汚れてるわよ。(ふきふき)」
当の本人は幸せそうに囲炉裏の面倒を見ている。…が、眼差しはしっかりXOジャンに返しており…。
甜『貴女に売られた喧嘩、決着はついていないからな。…ふふ、せいぜい楽しませて貰うよ。』
XO『…………………陰険クサレおっぱい女には負けない。』

言葉無き宣戦布告。平和な食卓の裏で、燻っていた火種が燃え上がる。
その空気を感じ取って戦慄しているのは春樹一人だったりするのだが…。

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最終更新:2008年04月27日 20:25
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