海風に吹かれ、ほどいた髪がそよぐ。XOジャンこと豆田貴子は海岸線の散策を楽しんでいた。
PPP…
自然の中にはふさわしくない電子音。
舌打ちを一つし、貴子は電話を取る。相手は……盟友だった。
「……はい。何?」
「愛想無いんだから……それより連絡よ」
「…囲炉裏の件は私達に一任されている筈………何故貴女が?」
先程春樹に見せた照れやたまに姉たちの前で見せる年相応の表情はなく、
ただ冷徹な諜報員がいた。
「う~ん、違うんだけど外れでも無いし…教えておいた方がアンフェアじゃないかなと」
相手の歯切れは悪い。貴子は少しだけ語気を強める。
「…簡潔に言って」
「はいはい……実は…」
温泉を楽しむ真智子と夕圭、そして陽子の三人は湯船につかっていた。
そこで真智子と陽子は驚愕の事実を知る…
「ゆかさんのおっぱいがういてます!!」
「あんな重いのが……!!テン…じゃねぇ夕圭!!
お前まさか、そのウシ乳で春樹に毎日ちょっかい掛けてんじゃ!!」
夕圭は同性の嫉妬には慣れているのか、わざと陽子を向いて胸を持ち上げる。
「悔しかったら陽子もやってみるといいよ~♪♪…出来ないとは思うけどね~」
「うきーーっ!!!!」
怒りの余り飛びかかろうとする陽子を真智子は必死に止める。
「はなせ囲炉裏!!こいつ泣くまで殴ってやるんだ!!邪魔すんな!!!!」
「だめです!!けんかはだめです!!」
にやにやと笑う夕圭に真智子は予想外の一言を発する。
「あと10ねんです」
「…は?」
「あと10ねんたてばたれてます。そうなればわたしたちのかちです!!」
「お、おう…」
愛しい真智子にある種の予言をされた夕圭は、かなり落ち込んでいる。
「うぅっ…ひどいよ…真智ちゃん…」
しかし、次の瞬間
「!?」
突如真剣な顔付きへと変わる。
「ゆかさん?」
「あ、ごめんね。なんでもないよ~」
「なんだよ…ん?『テンメンジャンの手が………暗号か!!……』」
「『敵の気配あり。用心せよ…XOジャンにも伝えないと』」
「『了解!!』」
突然黙りこんだ二人を真智子は不思議そうに見つめる。
「ふたりともどうしたんですか?」
「ん、なんでもねぇよ。そうだ囲炉裏、あたしが持って来た饅頭食っていいぞ」
「ではおさきです!!」
夕圭は意外そうに傍らの陽子を見る。
「真智ちゃん気遣うなんて見直したよ~」
「んなんじゃねーよ。囲炉裏に何かあれば春樹が心配するだろ…それだけだ」
夕圭はそれには答えず、タオルを胸と腰に巻き陽子へ二枚タオルを投げて渡す。
「…でもこの気配には見覚えが……まさか……」
「気付いたみたいね。やはり只者じゃないとは思ってたけど。
ちょっと一人じゃ大変かな?でもね……」
「春くんは私が頂いていくわ」
動きやすい黒のボディスーツ姿の少女が不敵に笑った…
最終更新:2008年04月27日 20:41