夜の帳が下りた山道にて、一人の少女が疾走していた。
遠山理奈。幼馴染で想い人の青山春樹の後を着けて来た…までは良かったのだが。
「何でこ~なるのよぉ~~~~!!」
追われまくっていた。…赤色灯を回転させる多くのパトカーに。
おそらくはあの泥棒猫どもの差し金なのだろう。うん。帰ったら春くんの見てない所で絶対しばく。
…もっとも無事に帰れたらの話だが。
不整地ならばパトカーを撒ける…と考え飛び込んだ先の林の中では更なる事態の悪化が待っていた。
木々の間をすり抜けた時、何かに足をとられる感触。
「うそ!こんな所にトラップなんて!?」
後悔する暇もなく、爆音と閃光にその身は包まれる。
しかし硝煙が薄れ行く中、現れた姿は無傷そのもの。
「…舐められたのもね。たかが音響手榴弾一つで私を止められると……。…え?」
追跡していた警官たちが大慌てで無線連絡している様子が見える。
「え~と。もしかして、今の私ってテロ実行犯とか、潜入工作員みたいな扱われ方されてるのかな~?
うん、そりゃ今、すっごい爆発が起こったようにみえたよね?…あははははは、マズイわね。」
警官からの活発な追跡は収まったが、代わりに数機のヘリが到着し、何人かの人影がロープを使って降下している。
残った機体はサーチライトで周囲を照らしているあたり、本気で洒落にならない。
「えぇ~~~!?本格的に山狩りなのぉ~~~!?」
遠山理奈。彼女の戦いは終わらない。
とりあえず目の前の障害を乗り越えて、泥棒猫たちから青山春樹を取り戻すその日まで。
銃声と爆風の嵐の中、少女は走りぬける。
「ぅううおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
最終更新:2008年04月27日 18:12