「……8.5℃。結構熱がでてるな。大丈夫か?」
「うん…(ゴホンゴホン)…頭いたい…」
「ちゃんと寝てろよ。今何か作ってくるから」
「うん…」
春樹は部屋を出て、階下の台所へと向かう。
『にしても…黒田が熱を出すなんてな』
「理菜の逆襲」事件翌日のこと。中々起きてこない夕圭を心配し、春樹が見に行ったところ、
赤い顔をしてだるそうな夕圭を発見。
体温計で計ってみれば、熱がありいわゆる風邪の症状。
病人を一人放っておく事もできず、学校を休んで看病する春樹。
『…疲れがでたのかな?いつも黒田に面倒かけちゃってるしな』
実際のところは、自分で池に落ちたのが原因なのだが、春樹は知らない。
『まずはお粥とリンゴを持って行くか』
「何だと!?テンメンジャンが風邪!!更に春樹まで休みだって!!!」
「…春樹さんから聞いたから…間違いない…」
驚いた陽子だったが、日頃感情を表さない貴子の心底悔しそうな表情で、我に帰る。
「かーっ!!こうしちゃいられねぇ!!貴っ、あたし達も行く…」
「…春樹さんから念を押された…『俺が見てるからちゃんと学校へ行きなよ』と…」
貴子からすれば気が気ではない。二人が急接近する可能性は十分ある。
『…夫を信頼するのは妻の役目…でもテンメンジャンは策士…心配…』
『…あのクサレおっぱい女…春樹さんに手を出したら………!!』
妹の危険な表情に気付いていない陽子がある一言を漏らす。
「策があるにはあるんだけどな…でもな…」
「…お姉ちゃん!!」
ガシッと肩を掴んで姉へ迫る貴子。
「教えて!!その策を!!」
「た、貴!?き、キャラ違わないか!?」
「…早く!!」
『春樹…貴が怖いよ…』
内心で春樹に助けを求める陽子だった。
「…真智ちゃん、ちょっとお菓子食べ過ぎよ」
「…はるくんのごはんじゃないと、はらもちわるいんです」
「ハルも、何も休まなくてもねえ…心配なのは分かるんだけど」
教室で朝からお菓子を食べ続ける真智子と夕圭の代わり、お守り役ルカ。
『夕圭ちゃんも大変なのね…真智ちゃんのお守り役なんて』
「……るかさん、しつれいなことかんがえてます?」
「べーつーにぃー」
ムッとした真智子だが、ルカは気にしない。
「ゆかさん…だいじょうですよね…」
「まあねぇ。ハルもいるから特に問題は…」
「……しまったです」
「どうしたの?」
「えいごのれぽーとをわすれてきました。とりにかえります」
そう言うと慌てて支度を整え、真智子は教室を出ていった。
……鞄を持って。
「…………逃げたな」
呟いたルカの表情に
「私も帰ろう」という色が浮かんでいた。
最終更新:2008年07月11日 23:08