野望編「天然策士 無意識な離間の計」

青山家近くのコンビニで黄昏ている少女二人。
「るかさん…。どうしましょうか…?」
「どうしよ…。完全に八方塞がりだよ…。……最悪、晩御飯抜きかな。」
「……ひじょうにまずいです!!るかさん!!
「………謝って許してくれるかな?…………あんなに怒ったハル、何年ぶりだろ。」
食事抜きくらいで済むなら、まだ良い。
以前…かなり遠い昔に怒らせた時は、3日間も口をきいてくれなかった。
『ハルに嫌われる…それだけは嫌…。』

一方、妹と血で血を洗いあった豆田陽子。
己の一撃で昏倒した貴子を担ぎ上げ、意気揚々と青山家への道を進む。
「しかし、具合が悪くなった貴をダシにして春樹の家に行く…か。
 さすが貴、良い策を練ってくれたじゃないか!!」

そして青山家玄関。己の策と妹の策…この二つがあれば、自分の頭脳でも春樹を言いくるめられるはず。
…だったのだが。
「生徒会役員は、正当な理由があれば早退できる権利…ねぇ。
 …で、貴子ちゃんはでっかいタンコブ作って倒れた訳は何だよ?」
「…あ(しまった~~~!!誤魔化し利かない場所殴てた~~~!!)」
「まったく…。また喧嘩でもしたのか?
 お前も貴子ちゃんも嫁入り前の女の子なんだから…。キズモノになったらどうするつもりなんだ?」
「…(嫁入り…///)…も、貰ってくれるなら(ぼそぼそ)。」
「ん?何か言ったか?」
「…いや…なんでもない。」

それでも結果オーライらしく、屋内に導かれる陽子。
「ともかく、貴子ちゃんは客間のソファに寝かせてやれ。俺は黒田の容態が安定するまで、もう少し診る。」
「え!?貴は放置!?」
無論、春樹とてそんな事をするつもりもない。携帯電話を取り出し、通話開始。
「ルカ、近くに居るんだろ?戻ってきてくれないか?力を貸して欲しい。」


数分後、帰って来たルカは気まずそうに春樹の様子を伺う。
「…怒らないの?」
「授業を抜け出したのは良くない…。でも俺も学校休んだし、人のことは言えないからな。」
「……私でいいの?」
「ルカを頼りにしてるからだ。…この前温泉に行った時だって、凄く助かったしな。
 貴子ちゃんを頼むぞ?」
そう言いつつ、ルカの頬に手を当てながら真っ直ぐ見つめる春樹。
「ハル…。…うん、しょうがないね。」
不安げな顔が、次第に笑みを取り戻す。
「私にバ~ンと任せて。…ハルは夕圭ちゃん診てていいから。」
「…ゴメンな。面倒ばっかりかけて。」
「埋め合わせはデートがいいな。…今度、二人っきりであの公園に行こ?」
「お安い御用だ。…弁当のリクエストはあるか?」

兄妹の会話にしては妙に甘ったるい雰囲気にげんなりとする真智子と陽子。
「…はるくんとるかさんが、すごくなかよしさんなのはわかりました。…で、わたしたちはなにをすればいいのですか?」
「そうだぞ!ここまで来てあたしと囲炉裏だけ蚊帳の外ってのはないだろ!?」
そんな少女たちに一つの土鍋を差し出す春樹。
「…そうだな。俺の代わりに理菜の見舞いに行ってくれ。何故かアイツも風邪引いたらしくてな。
 これ、お見舞いの品のお粥だから、温めて食べさせてやれ。帰ってきたらおやつくらいは出す。
 プリン、冷蔵庫でひえてるぞ。」
「いそいでいきましょう!!!」
「ちょ!ま、待て!!なんでプリン程度のエサに!!…おい!引っ張るなって!!」

青山春樹と黒田夕圭を分断するまでは味方に付くと見ていたルカ、真智子もあっさりと篭絡された。
妹の貴子も昏倒させてしまった今、戦力になりそうな駒は思い当たらない。
『ちっ。へんな小細工せずに、力押しの正攻法で行けばよかった!!』
何が悲しくて憎き遠山理菜の見舞いなど…。…いっそ見舞いの品のお粥、この場で食べてやろうか。
捲土重来の機会を待ちながら、豆田陽子は囲炉裏真智子とともに遠山家に向かう羽目となった。

一方その頃…。
眠りに落ちていた夕圭は目を覚まし…少し前の自分の行動に悶える羽目になる。
『え~と…。私、一体………。春樹…くんの前で泣いちゃって…抱きしめられて、そのまま寝ちゃって…。
 熱……上がっちゃった……かも(///)』
平熱だったら遠慮なく床の上を転がりまわっていただろう。
それが無理なので、布団に潜り込むだけで我慢しておく。

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最終更新:2008年07月11日 23:10
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