一方、黒田夕圭の部屋の中では…。
「ともかく黒田、熱が上がってきたなら横になれ。
さっきも解熱剤を飲む前に寝ちまっただろ?今からでも飲め。」
必死に照れ隠しをしている青山春樹。
『マズイ…。黒田が普段の3割り増しで色っぽい…。
…風邪で弱ってるのに、不謹慎だよな、俺。』
「…うん。でもその前に、ちょっと肩を貸してくれないかな?」
「…いいけど、どうした?」
「……トイレよ。」
「す、スマン…。」
上体を起こしていた夕圭だが、そんな彼女の肩に腕を回して立たせる春樹。
当然密着しているので、彼女の柔らかい感触や匂いを普段よりも強く感じてしまう。
『黒田の匂い…。囲炉裏や豆田姉妹とは違う、女の匂いだな…。』
そんな彼の様子に、当然気づいてしまう夕圭。
「…春樹くん?…やだ。あんまり匂い嗅がないよ。…熱のせいで汗かいてるんだし。」
「あ、ああ。…身体を拭きたいなら、後でルカに手伝ってもらうか?」
「……なら、春樹くんにお願いしようかな?」
「…はぁ?」
「…春樹くんなら…いいよ。」
普段の軽い調子なら、『冗談言ってないで寝てろ』とか『さっさとトイレに行くぞ』とでも受け流せるのだが…。
妙に潤んだ瞳で見つめる夕圭に対して、春樹は適切な返事が思いつかなかった。
最終更新:2008年07月14日 22:46