「黒田の奴、ルカに何を相談したんだか…氷はこの位でよしと…」
妹に頼まれた氷水を用意した春樹。
「…あれ、貴子ちゃん。大丈夫なのかい?」
「!?……春樹さん…!!」
階段をまさに今駆け上がろうとする貴子と目が合った。
「…ルカさんは?」
「黒田の部屋に…いやちょっと待って」
何かを感じとったのか、春樹は貴子に近付き、話し続ける。
「ちょっと居間においでよ、貴子ちゃん」
「…?……はい…」
ソファーに貴子を座らせると春樹は貴子の頭をじっくりと見つめる。
「あ、あの…」
「でかいタンコブができてたから心配したけど、大丈夫みたいだ」
「は、はい。どうも…」
「で。何で喧嘩したんだい、姉妹でさ?」
「……………」
まさか正直に言うわけにもいかず、貴子は黙る。
「言えない?」
「…大した理由ではないです……喧嘩…は…」
「…豆田と早く仲直りできる?」
「……はい」
貴子の返事にある程度満足した春樹。手が貴子の頭を優しく撫でる。
「!?…(///)………ごめんなさい…」
「いいさ。豆田も貴子ちゃんの事を心配してたから、すぐ仲直りできるよ」
「えっ…嘘…」
「本当さ。殴って後悔したって。謝りたいけど、許してくれるか悩んでた」
貴子の脳裏に陽子の笑顔がよぎる。うるさくて、落ち着きがない、えぐれ胸のおばかな姉。
でも自分には優しく、大事にしてくれる姉。
「…………さい」
「えっ?」
小声で聞き取れなかった春樹が聞き返す。
「…ごめんなさいお姉ちゃん、ごめんなさい、ごめんね………」
後は言葉にならず、静かに泣く貴子。春樹は優しく頭を撫で続けた……
一方夕圭の部屋で春樹を待つ夕圭とルカ。
「ハル…遅いな…」
「ほんと春樹くんどうしたのかな?」
下着姿の二人が首を傾げていると……
ダッダッダッ
階段を駆け上がる音が。
「あ、来たわ」
「もうせっかちさんなんだから、春樹くんは」
しかし部屋に突入したのは招かざる客二名。
「無事かぁ!!春樹ぃ!!」
「はるくん!!……な、なんでふたりはしたぎなんですか!!」
真智子と陽子の目は驚きから疑惑、そして怒りへと変わっていった。
ちなみに二人の眉間は赤く腫れた状態だ。
「えっ…!?…あ、あは。汗かいて暑くなってさ…あは、あはは…」
「夕圭はまあいい…でなんでルカまで下着なんだか言ってみろ!!」
「…わ、私、家ではいつも下着で……」
「うそです!!」
後は坂を転がり落ちる様に、不毛なバトルが始まったのは言うまでもなし。
では春樹は何処へ?
「困った…」
ソファーで身動きの取れない春樹であった。
腿の上には泣き疲れた貴子の頭があり、シャツの裾をしっかり握られている。
「貴子ちゃん起きて…」
先程寝返りを打ってから、貴子の頬が春樹の敏感な部分を刺激している。
『耐えろ俺!!負けるな春樹!!……煩悩を断ち切るんだ!!…』
目を瞑り、必死に煩悩と戦う内に春樹は眠りに落ちていった…
しばらくして…
「…う、うん?私は……!!『は、春樹さんに膝枕されて(///)……
!!!!!…は、はるきさんの股間に顔が!!』(プシュー)……はうっ!!」
目覚めた貴子も興奮で失神してしまった。
余談ながら、不毛なバトルで風邪を悪化させた夕圭に、風邪を移された三人が完治したのは三日後だった。
最終更新:2008年07月15日 00:22