野望編「総合公園の死闘 幕開け」

とある土曜日…。とある民家の玄関にて、一人の少女が一人の少年を誘う。

「えへへ…。ハル、行こ?」
「そうだな。囲炉裏に黒田、留守番頼んだぞ?」
ちなみに、彼らの父母も外出中だったりするため、そう同居人たちに声を掛ける。

そんな彼らを見送る同居人たち。
「……む~~~~~。」
「あ、あはははは。二人とも、行ってらっしゃい。」

凄い勢いで睨んでくる真智子と、乾いた笑みを浮かべている夕圭。
この状態の囲炉裏を置いていったら末代まで祟られそうな勢いではあるが…。
『二人だけで、公園に行くって約束したからなぁ…。』
もっとも先日の【貴子の看病を手伝ってもらったご褒美】という名目だけに、彼女との約束を反故にするわけにはいかない。
『そういえば、貴子ちゃんにもちゃんとお礼しないと…。
 頭撫でてるだけじゃ、不十分だよな。…あと豆田にも手伝ってもらってるしな。』
満面の笑みを浮かべる妹の顔を見ながら、もう一人の頼れる妹分、さらにはその姉の事をぼんやり考える春樹。

一方、夕圭とルカはアイコンタクトを交わす。
『ルカちゃん。できる限り、真智子ちゃんは私が抑える…。…だからGood luck!』
『夕圭ちゃん…。…ありがと。』
彼女らは、同盟の保持を選択しているようだ。
先日の【誠意の証】は、ルカの左肩に掛けられたバッグの中に厳重に収められている。
そして空いている右腕を春樹の左腕に絡ませ、幸せそうに寄り添う。

しかし、囲炉裏もそんな彼らを追ってはいけない己の事情に、改めて心で泣く。
『…囲炉裏だけ微熱が続くな。黒田も豆田も、ルカも治ったのに…。
 …黒田、迷惑を掛けるが看病頼む。お前の時ほどの熱じゃないが、何かあったら呼び戻してくれ。』
今朝、春樹によって【本日も静養】するよう通達された真智子。
…実は、囲炉裏にしてみれば、風邪など既に完治していた。
しかしながら、身体だけでなく体温まで子供規格な彼女。
加えて食事量が多く、代謝量が高い体質までが仇となってしまったようだ。
(反面、その体質ゆえに太らずに済み、さらに見た目と異なって身体能力は高い訳だが…)
それなりに楽しそうな夕圭とは対照的に、かなり沈んだ足取りで寝室へと向かう真智子。
『おのれ~~~。あいるびーばっくです!!』


さらに別方向から、その玄関先の光景を苦々しげに見つめる一人の少女…。
遠山家が令嬢、理菜である。
…きつく歯噛みしているのか、唇の端からは血が滴っており、何気に鬼気迫る表情でひとり呟く。

「泥棒猫ばっかりに気を取られていたけど…。…貴女が獅子身中の虫になるなんてね、ルカ。」
先日は【仮病】という策を弄したものの、釣果は囲炉裏のみ。
挙句には誤食しかけた囲炉裏に倒され、自慢の胸に落書きされるという屈辱まで味わった彼女…。
そんな理菜からすれば、いまのルカはただただ嫉ましい。
まさに燎原の火の如く、燃え盛るは嫉妬の炎…。

そんな彼女は懐から小型無線機を取り出し、何者かに連絡を送る。
「豆田姉妹…。春くんとルカが動いたわ。」
【敵の敵は味方】
彼女たちは、一時停戦の道を選んだ。
当面の最大の障害であるルカを、全力をもって排除する…。
そしてその後は…春樹の覇権をかけてのガンダムファイト、レディーゴーである。
通信を終えた理菜は手早く身支度を整える。
飛び苦無に忍者槍、煙球に吹き矢を鞄に押し込み、目的地に向けて疾走する。
「春くん…。待っててね、今ルカから引き離してあげるから…。」

周囲の敵意に気づかず、手と手を取り合って仲睦まじく歩を進める兄妹。
そんな彼らが向かう公園正門にて、指関節を鳴らしながら待ち構えている少女。
「春樹!!ルカじゃなくてあたしと遊べ!!」
一方、茂みの中に身を潜める少女。
彼女のスコープは二人の姿を捉えている。…有効射程距離まであと150m。
「…ルカさん。…先日の借りは返す。」

公園という戦場にて、新たな戦いが始まる。

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最終更新:2008年07月15日 23:54
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