「えへっ…ハルと二人でお出掛けなんて、久しぶりだね。天気も良いし」
「ああ。本当だ」
腕を組み、晴れた休日の下を歩く青山兄妹。
彼らを知らない人間が見たら、83%の確率で『バカップル』認定される仲良さげな二人である。
春樹の左腕はルカの右腕に抱えられており、そこから伝わってくる感触が。
『ルカ……胸が当たってるんだが…』
勿論ブラコン妹はわざと当てているのであって、抱える腕には力が篭っている。
『うふっ、ハルったら意識してる…まずはここまで順調ね』
○○市立総合公園。
そこは広大な敷地内に豊かな緑と綺麗な水辺を持つ、近隣でも有数のデートスポット。
だが、そこに待ち受ける刺客の影が。
「…しかし弱った。相手がルカだから、本気で殴る訳にもいかねぇ…」
「………」
小型無線機で会話をする陽子と貴子の豆田姉妹。
「貴、とりあえずあたしは足止めだけでいいんだな?」
「…お願い。私が麻酔銃で狙撃するから…」
豆田姉妹と遠山理奈の共同作戦とは、
1.陽子が春樹を足止め
2.貴子がルカを麻酔銃で狙撃する
3.デートを中断させ、春樹とルカは青山家へ戻る
4.陽子、貴子、理奈の三人で決闘し、勝者が…
という物だった。
「ま、遠山にはこの前の借りもあるしな。後で全てのケリを!!!!」
しかし熱く闘志を燃やす姉とは対照的に、貴子は疑惑を抱いていた。
『…遠山理奈。彼女の最も得意なのは、地形的な利点を生かした強襲……この公園では不利?』
『…もし私が彼女なら…まず私がルカさんを攻撃した直後に私を無力化させ、後でお姉ちゃんを…?』
『…彼女を信頼できる?……無理。できない…』
貴子の中で一つの決意が固まった。
『…まずは彼女から』
「真智ちゃーん、ちょっと早いけど朝のおやつ…………あれ?」
夕圭がケーキとココアを持って真智子の部屋へ入ると、ベットで大人しく
寝ているはずの真智子の姿が見当たらない。
「まさか…春樹くん達の後を!?……抜け駆けな……じゃないルカちゃんの邪魔をさせる訳には!!」
慌てて身支度を整え、青山家を飛び出す夕圭。
しかし………
「ふにゃあ…はるくんのいいにおいですぅ」
当の真智子は春樹のベットに潜り込み、至福の時を味わっていた。
暫く掛け布団にくるまって、ゴロゴロと転がって楽しむ状態が続いていたが。
「なんだか…ねむく…」
やがて聞こえる静かな寝息の音。やはり体調は万全ではなかった様だ。
遠山理奈は疾走する。
『今度こそ全ての障害を乗り越えて、私と春くんはひとつになる!!』
ただその一念だけを胸に抱きながら。
最終更新:2008年07月15日 23:55