青春編「貴子強襲」

校内をあちこち探し回るルカ。
もっともサボりは後で春樹に怒られるので、休み時間のみの探索。
これでははかどらない事この上ない。
「ハルのばかぁ…一体どこ行っちゃったの?」
「るかさーん!!」
「あ、真智ちゃん…ってお菓子食べながら歩くなんて……」
真智子の口の回りには、様々なお菓子の食べかすが付着している。
「どんだけ食べたのよ…あーあ、こんなに口の周り汚して(ふきふき)」
「ありがとです。(もきゅもきゅ)でもしゅうちゅうして(もきゅ)さがすとおなかが…」
ルカとの会話中も食べ続ける真智子と呆れた顔で見つめるルカ。
すると……

『あにもえー♪すきすきまいぶらざー♪』

「な、なんですか!?」
「あ、メール。マナーモードにするの忘れてた」
「ちゃくしんおんがきになります!!」
「ま、まぁいいじゃ……豆田姉からだ」
「まめあね?」
「うん。えっ…『春樹が狙われ…(略)』って、どうゆーことなの!?」
「わ、わたしにも」
事情の分からない二人はうろたえるばかり。
「夕圭ちゃんならハル達の居場所が分かるみたいだけど…」
「ゆかさんとごうりゅうです!!」






「…麻里愛、話ってなんなのかな?」
「夕圭にゃん、誰もいないし何時もの喋り方でいいんじゃないの?」
夕圭はとある建物の屋上で同僚である麻里愛と話していた。
「…ううん。決めたからもう……」
「?」
麻里愛の顔に疑問の色が浮かぶが、すぐにある事を悟り愕然とする。
「ま、まさか!?」
「うん…テンメンジャンでいるより、黒田夕圭として春樹くんに向き合いたいから…」
「で、でも!!四天王脱退って!!あなた奨学生としてなんだから!!」
「…学校は辞めて働くつもりなの。これ以上青山家に迷惑を…」

麻里愛は夕圭の意思の堅さを感じとったが、呼び出した本題で食い下がる。
「こ、今回は静観してなよ。トウバンジャンだってむざむざ…」
「ううん。陽子だけでは校長には勝てない。私と貴子ちゃんがいて勝てるかどうか…」
「わ、私も!!」
「駄目。麻里愛までいなくなったら、学園の守りはどうなるの?」
「………」
麻里愛は悲しげに溜め息をつく。
「ふぅ……ならひとつしか方法はないね」
「えっ?」
「…コード・グランドクロスよ」



コード・グランドクロスとは?

現四天王結成時、痴女クール校長は四人を前にこう告げた。
『諸君らは私の配下となり働いて貰う、忠誠の見返りに十分な報酬と学園内での安全は保証しよう』
『だが、私の意に反する場合にも四天王の意思統一があれば、特権として覆す権利も与えよう』
『但し、その時は身を持って私に捧げる事も忘れないで貰おう』

つまり、校長の決定を覆すべく四天王の貞操を代償とする、ある意味諸刃の剣たる最強のカード。
なお、名前の由来は学園創設時に遡るらしいが、そこまでは彼女達も知らない。


「……なんでよ…?」
夕圭の声が震える。
「なんでそこまでしようなんて言うのよ!!」
「ん?当然でしょ」
麻里愛は気楽げに言い放つ、ただし若干の演技力を要して。
「私達、同志でライバルで戦友じゃない。仮に私が夕圭にゃんの立場なら、夕圭にゃん達も…」
「馬鹿……!!」
泣き出した夕圭を麻里愛は優しく抱きとめた。


「…んだありゃ?夕圭と麻里愛じゃねーか?」
実妹貴子と対決するべく、部室棟の屋上へとやって来た陽子。
そこで彼女が目にしたのは。


「夕圭が…震えてる!?」
そう、夕圭は身を震えさせて泣いていたのだが。
「…!!…そうか…麻里愛に絞め技食らって!!」
相変わらずの早合点ぶりでそう判断した陽子。死角から一気に近付くと、

ザクッ

「ぎゃんっ!!」
「ま、麻里愛!?」

腹部への一撃で麻里愛を気絶させてしまった。

「ったく、危なかったな夕圭。麻里愛が校長に付くなんて…ってその握り締めた拳はなんd?」
「くぅおのぉ……お馬鹿ずん胴パ○パ○えぐれ胸!!!!(ドムッ)」
「ぐふぅっ!!」


気絶した二人の少女を前に夕圭は決意する。
『どうせ一度は身を捨てる覚悟はしたんだ』
『陽子を連れていき、油断した校長を倒し…あの人に全てを打ち明けよう…』


「…どこにもゆかさんいないですね…」
「携帯にかけてみよっ」

『もしもし?』
『夕圭ちゃん、今どこ?ちょっと…』
『ごめんね、今無理なんだ。また後で…』
『ちょ、ちょっと!!じゃあG08ポイントってどこにあるの!?』
『中等部の四階、空き教室の横よ。じゃあ』
夕圭の電話はそこで切れ、無機質な音が鳴るだけ。
「…でもさ、変な場所の示し方するのね。生徒会は」
「どうでもいいですよ、はるくんがいるなら!!」
「うん、行こ。真智ちゃん!!」



真智子達が中等部へと向かう10分程前のこと…


授業を聞き流しつつも豆田貴子はPCを使い、春樹と姉の居所を探っていた。
勿論級友と教師は気付いてはいたが、何も言わない。
『豆田関わるべからず』
それが中等部一貫しての貴子への対応だった。
もっとも貴子は気にすることもなく、自分の作業を続行する。

『…馬鹿姉が春樹さんを連れて行く場所、それは高等部からはそう離れていない筈』
『しかし、チーマージャン配下の偵察隊には発見されない所…』
『…となればある地位以上の人間が知っている場所…隠し部屋…』
『…電力供給がいつも以上の所に二人はいる…』

ブゥーンブゥーン…

マナーモード中の貴子の携帯が振動する。

『メール…居所が?……いや…お姉ちゃん!?』

姉陽子からのメール。
『あたしは部室棟の屋上で待つ!!捕まえられるなら捕まえてみな!!』

しかし貴子は裏を読む。
『恐らく真実…でも逃走を考えれば、春樹さんとは別行動…ならば春樹さんを……!!』


そわそわと落ち着かない風で部屋を見回す春樹。
「しっかし…部屋もそうだが、この部屋の存在を知ってる豆田って一体…」
思わず『豆田』の名前を口に出した途端、春樹の顔が赤く染まる。
「豆田ともキスしちゃったよ…俺どうすればいいのか…」

ガチャガチャ…ピー

突然物音が部屋の外で起こり、扉の解錠が行われる。
「…豆田か?無事なのか?」
「………春樹さん」
「た、貴子ちゃん!?」
突然この部屋に現れた貴子に驚く春樹。
「ど、どうして…?」
「…………」
「あ、ああ。豆田が教えたのか」
「……違う!!」



語気を強める貴子。
「えっ?じ、じゃあどうやって…」
「…春樹さんがどこに行っても私は……見つけます……私…の大切な人、だから…」
「貴子ちゃん…」
しばし無言になる二人。しかし…

シュルルル…

貴子が胸のネクタイをほどき、ブレザーを脱ぐ。
「ど、どうしたのさ!?」
春樹の問いかけには答えないまま、続いて貴子はシャツのボタンを外していく。
「た、貴子ちゃん!?」
「……春樹さんは…む、胸の小さい…子は嫌い……ですか?」
「へっ!?そ、そんな…」
「…答えて……」
「い、いや嫌いじゃ……ない…けど」
「…良かった」
答えにある程度の満足が得られたのか、貴子は滅多に見せない微笑を浮かべる。
何度見てもドキリとする春樹だった。
『か、可愛い笑顔…』
その間にも貴子の手は止まる事は無く。

スーッ……

ホックを外されたスカートが、白く細い腿を滑り落ちた。

「だ、駄目だよ…」
「…私を春樹さんだけ…のものに…して…」
正面からゆっくりと近付く貴子を、春樹はボンヤリと見つめるのみ。

『春樹さんは…頂いていく……ね』

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最終更新:2008年08月23日 20:28
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