「裏切り者のトウバンジャンを取り押さえました…。」
昏倒している陽子を引きずり、たどり着いた第三会議室。
テンメンジャンは、やがて訪れるであろう機会を待ちつつ、はやる心を落ち着かせる。
その標的である恥女校長こと千所玲。今は黒田夕圭と向き合う形で彼女の報告を聞いている。
「…それよりも青山春樹はどうした?」
「……単独で行動しているようです。私が会敵したのはトウバンジャンのみでした。」
「そうか。…下がっていいぞ。」
やがて踵を返し、机に向かうであろう校長。
その無防備な背中…とくに急所である延髄付近を狙って渾身のストレートを打ち込む夕圭だったが…。
「…甘い!!」
あっさりと避けられ、挙句には腕を取られて肩関節を極められる。
「ぐっ!!」
鈍い音に鋭い痛み…。容赦なしに肩関節を外されたようだ。
激痛のあまりに視界は霞み、脂汗は止まる気配も無い。
「不意打ちをやるなら殺気はもっと隠すべきだ。もっと鍛錬を積め。
しかし、腕一本では屈さないか…。それでこそ四天王だ。及第点くらいならやってもいいぞ。」
退くわけにはいかない。外された関節を無理やりに押し込み、肩を戻す。
春樹を守護していたはずの陽子は、己の手で倒している。麻里愛も戦闘不能のであり、四天王で健在なのは自分と貴子のみ。
その貴子もこの場に居ない以上、自分一人でカタをつけるしかない。
囲炉裏とルカが春樹と接触している可能性もあるが、彼女ら二人も春樹と同じく『大切な人』。
全身全霊を賭けて、守りきってみせる。そして…。
「校長先生…。いえ、BB。貴女を倒す。…そして偽りの仮面を外した本当の私を春樹くんに見てもらうの!!」
「夢を持つのは結構だが、お前の力で実現できる事かよく考えろ!!この馬鹿弟子!!!」
校長の左ハイキックを右腕で流し、左のフックでカウンターを狙う。
しかし利き腕ではない一撃では、必殺の威力を期待できるはずもなく…。
「その程度か!!」
夕圭の拳を避けつつしゃがみこんだ玲の、さらにカウンターとなる八極拳の体当たり【鉄山靠】。
「っ!くはぁ……。」
勁を込めた一撃に吹き飛ばされる夕圭。その彼女の前に立ちふさがる影。
しかし、その影は追い討ちをかけに来た恥女校長ではなく…。
「そこまでだな。姉さん。」
「…舞。何のつもりだ?」
405 :名無しさん@ピンキー :2008/07/05(土) 11:19:39 ID:CWPhl71n
姉の行動を妨げる妹の姿…。
「姉さん。…私は姉さんのやり方が正しいとは思えない。」
「…舞。どういう事だ?」
ちらりと夕圭に視線を投げかけ、再び玲に視線を戻すと、舞はこう言い切る。
「性行為はこの場でするべきでない!」
「「はぁ!?」」
話はまるでつながらない…。…一体、何なんだ?
「いや、説明が不足していた。最初のデートは手を握るまで、3回目のデートを目安にキス。
性行為に及ぶのは10回目のデートの帰りに、彼か自分の部屋でやるべきだ。ということで、ここで事に及ぶのは邪道だ。」
「…………舞先生?」
「…やれやれだ、舞。今時の小学生ですら、悠長な心構えではないぞ。
大人の恋はスピーディーなモノだぞ。つまりは獲即食だ。」
「姉さんは黙っていてくれ。…ともかく、黒田くん。この場限りでは手を貸そう。
そしてこの騒ぎが収まった後、私は青山春樹に交際を申し込み、最終的には私のものになってもらう!!」
予想外な寝返りに、思わず固まる恥女校長とテンメンジャン。
会議室での戦いが新たな局面を迎つつある頃、
新醤油学園校門前には新たな2つの人影。
「おばさ…痛たたたたたたた!!す、すみません、校長先生!!
だからアイアンクロー止めて下さい!!……………また、来ましたね。」
「ああ。新醤油学園だな。」
桜吹雪女学園からの刺客たち。青山春樹を巡る騒乱は、まだ終わらない。
最終更新:2008年08月23日 20:32