青春編「クイーン登場」

妹の思わぬ裏切り行為に驚いた痴女クール校長こと千所玲だったが。
「…くっ。ははははっ!!あははははっ!!!!」
突然の姉の高笑いに妹たる舞は戸惑う。
「姉さん、何がおかしいんだ?」
「ははっ。いや大した決意だ、我が妹よ。しかし実力の差は考えていたのか?」
「見くびるな、私だって千所家の娘。むざむざやられるものか」
そう言って舞は戦いの構えを取る。低く腰を落とし、相手の攻撃を
受けつつも決定的なカウンターを狙う。

「さあ…来い!!」
「舞、それが甘い!!」
言葉と同時に投げつけられた幾本かの試験管、舞は辛うじてそれらをかわす。
「くっ!!薬物か!!」
「お前は真っ直ぐ過ぎなんだよ!!」
校長・玲は無駄なく妹との距離を詰め、矢継ぎ早に攻撃を繰り出す。まさに流水の如く滑らかに。

「オラオラ!!どうした!!口だけなのか!?」
「な、舐めるな!!」
玲の攻撃に対して時折カウンター攻撃を繰り出すも、舞の拳や蹴りは空を切るばかり。

時計の秒針が時計を五周した後、はっきりと差がつき始めた。
舞は全身傷だらけなのに対し、玲は涼しい顔でいやらしい笑みさえ浮かべている。
『ここまで実力差がついていたとは…しかも姉さんはまだ遊んでいる。
現に私が今、立っていられるのがその証拠だ』
『何か…気を反らす物があれば……いや…』



肩で大きく息をつきながら、必死に舞は勝つ為の策を練る。

「舞、覚悟はいいか?」
「『来る!!』…ああ」

そこで舞は胸元に手を入れる。
「何だ、その構えは?」
「姉さんを倒すための秘策……さ」
シニカルな笑みを浮かべて姉に向き直る舞。
「気に入らないな…その笑い方は。あの女の笑いを連想する」

『あの女?』
肩の痛みに耐えて戦況を見守ってきた夕圭。
四天王でも情報通の彼女だが、校長が不快感をあからさまに示す女性の存在は初耳だった。

「では…!!」
正面から舞が突進する、しかし疲労が蓄積してか相手の虚をつく程のスピードがない。
「…終りだな、舞!!」
その時、玲へ舞の胸元に入れた手から何かが投げつけられる。

「…ぶ、ブラッ!?」

投げつけられた物体、舞の薄い水色のブラ(推定Eカップ)はフラフラと玲の顔面に張り付き。

バシュッ

舞渾身の右フックが玲のこめかみを打ち抜いた。



「大丈夫か?黒田くん」
「舞先生…ほんと無茶しますね。私は肩だけ…」
「そういった意味では私の体の方が傷だらけか。…一応嫁入り前の身なんだが」
真顔でとぼけた事を言う舞がおかしく、夕圭はクスリと笑う。

「面白い人ですね、舞先生って。ちょっと手強いライバル出現かも」
「ははっ、お手柔らかにな。だが青山春樹を手に入れるのは…」
「あいたた…くぅ~、あっ夕圭、手前よくも!!」
長い気絶から目覚めた陽子が夕圭に食ってかかる。
「なによ、いきなり麻里愛を殴ったあなたが悪いのよ」
「あたしは夕圭が締め技食らってると思って!!」
「お馬鹿っ!!!!」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞぉ!!!!この垂れ乳女!!!!」

安心感からか、つい軽口の応酬になる少女達。
その時だった。

「危ない!!」
強い力でいきなり突き飛ばされる夕圭と陽子。
「きゃっ!!」
「痛え!!何しや……こ、校長!!」

起き上がった二人の視線の先には、憤怒の表情の校長・玲とうずくまって肩を抑える舞の姿が。

「…痛かった、今のは痛かったぞ…舞いぃぃ!!」
妹の腰へ容赦なく二、三回ローキックを入れる玲。
「ぐぅっ!!」
「…この私がまさか拳を入れられるとは思わなかった。油断大敵だな…」
先程のキックで倒れこんだ舞の背中を足で踏みにじる。
「ぐぅぅ…!!」
「まあ、身内だからこの程度で許してやる。……しかしお前達は覚悟しておけ、四天王」
玲は両手を顔の高さまで上げて、指をわきわきと震わせる。
「この所欲求不満なんでな……たっぷり可愛がってやるさ、二人とも。
この先男に二度と興味が湧かなくなる位にな…」




夕圭と陽子は思わず抱き合って震えだす。
「や、ヤバいぞ…」
「こ、怖いよぉ…」

ゆっくりと近付く玲。
「どちらに…よし。まずは…二人いっぺんだな。その後、失神するまでトウバンジャンを……」
ぶつぶつと妄想を口にしながら、鼻血を流す妙齢の女性。下手なホラー映画より恐い。

玲の手が夕圭の制服にかかるが、恐怖のあまりに夕圭の体は金縛り状態。陽子も同様だ。
「い、いやぁ…は、春樹くん…たすけ…」
「…は、春樹ぃ…」
「ふん、青山春樹も私がいずれ飼ってやるさ……安心してお前達も」

「…お取り込み中に悪いんだけどさ、千所校長。手を離して貰えるかな、二人からさ」
「…!!き、貴様!!遠山の!!何故ここまで!!」

慌てて玲は距離を取り、突然の来客に対する。
「えっ、と、遠山理菜!!なんであたし達を…?」
「…あんた達が襲われてるのを助けたんじゃないわよ。千所校長は私の敵だから」
「…何の用だ」
「春くんのピンチに颯爽と登場するのは、彼女だからよ!!(ピシッ)」
指を突きつけて主張する理菜へ、陽子が抗議の声を上げる。
「春樹はあたしの恋人だぞぉ!!」
「なに勝手な事を!!」
「まあまあ…三人とも。その話題は後でね」
「あっ、おばさま…(ギリギリ)…ギブギブッ!!」
「げぇ!?あ、青山夏実!!な、何故貴様まで!?」
玲の声に隠し切れない憎しみ、恐れ、妬みの感情が渦巻く。
「あらあら。久しぶりに会ったのに。でも元気そうね」
反対に夏実の声は平素と変わらず、のんびりとしたもの。
「…まあ、たまには母親らしくしないとね。秋くんに怒られちゃうし」
「くぅ!!!!!!」
玲の表情が一段と険しさを増す。



「あ、あの…春樹のおばさ…じゃない青山先生…」
「何?陽子ちゃん」
「『秋くん』て誰?」
夕圭が呆れた表情で相方を見やる。
「あなたねぇ…青山秋彦さんよ。春樹くんのお父さんの事」
「なぁんだ…春樹の父ちゃんかよ……で何でウチの校長はあんな悔しそうなんだ?」
「さ、さあ?」
夕圭もそこまでの事情は知らない。
「んー昔ね、秋くんにそこの玲ちゃんがちょっかいかけて来てね。それ以来よ」
淡々と事情を語る夏実。もっとも握り締めた拳には相当の力が込められている模様。
「わ、私の方が先に知り合ってさえすれば!!貴様なぞに青山先生を!!」
「あらあら。秋くんに想いを気付いて貰えなかった女の台詞ではないわねー、仔猫ちゃん」


陽子、夕圭、理菜は共通の想いを抱いていた。

『夏実さん怖い!!そして春樹のニブチンは父譲りなのか!!』


先程までとはうって代わり、余裕のない表情の玲とのんびりした顔で笑う夏実。
二人の間である一つの決着がつこうとしていた…

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最終更新:2008年08月23日 20:35
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