夕暮れの中、新醤油学園高等部の校長室。
室内は緊張と奇妙な静寂が支配していた。
『あの校長がまともな服着てる!!』
第三会議室の会談後、そのまま連れてこられた豆田姉妹に、保健室で手当てを受けた後、
訪れた夕圭と麻里愛は驚きの光景を目にしたのであった。
「こ、校長…いった…」
「…トウバンジャン」
「は、はひぃ!!!!」
静かながらも威厳のある声に圧倒される陽子。
「今回は私の過ちだ。許せ」
「………は、はい…」
「それと…テンメンジャン。お前の反逆行為も不問だ」
「は、はぁ…」
あっけに取られる四人を前に玲は更に驚愕の事態を告げる。
「『囲炉裏ちゃん…(略)計画』は破棄する。まあ今まで忘れられていた気もするがな…」
まさに今までの校長とは思えない言葉に四人はうろたえるばかり。
「こ、校長先生。そりゃ構いませんが、一体どういった風の…」
「チーマージャン、言うな。私にも答えにくい事だってある…」
椅子をクルリと回転させて窓の外を見る玲。
彼女の目には、妹と幼馴染みに腕を取られ、小柄な少女に詰め寄られる少年の姿が。
『春ちゃん…やはり君は青山先生の息子だな』
再び椅子を反転させ、四人へと向き直った玲。
「改めて指令を出す。
まず…お前達。卒業するまでに春ち…青山春樹を落としてみろ」
再び椅子を反転させ、四突然突拍子もない玲の発言に更に驚く四天王。
「わ、私は関係ないんじゃ!?」
「チーマージャンは別の男で構わん。…ただ一人仲間外れでは肩身が狭いかもな」
「何ですかその指令…」
「まあ、お前たちの体たらくを見てな。あまりにも情けなくて涙がでた」
「……」
「…見事達成の暁にはスペシャルな報酬だ。反対に誰も達成出来なければ……」
「…ペット…ですか?」
肩を抱いて震える夕圭。どうやら先程の体験がトラウマとなった様だ。
「一年間千所家のメイドになってもらう、もっともペットの可能性もあるかもな」
ニヤリと笑う玲。年長者三人がガクブルとなるのを尻目に、貴子は質問を投げ掛ける。
「…報酬の内容を…」
「…流石XOジャン。冷静だな。春樹との『二人きり』同棲用のマンションでどうだ?」
「…承知」
一言を残し、校長室を出ていった貴子。慌てて後を追おうとする陽子を玲の声が止める。
「待て、まだ話は終わってないぞ」
「貴に先を越されるじゃないですか!!」
「…まだ先は長いんだ。もう一つの指令を聞け」
「う~……」
渋々従う陽子。
机の中から一枚の書類を取り出して、玲はやや低めの声で説明を始めた。
「…東部味噌工業の動きが妙だ」
「妙って……春樹くんのお父さんが建て直して以来、平穏な学校になった筈じゃ?」
「青山先生が退任して約二年…反動が出てきた様だ。不穏な空気がある」
報告書を片手に玲は眉をひそめ、報告書を三人へと差し出す。
「…桜吹雪女学園の生徒が何人も被害にあったらしい」
「ウチにも…?」
玲は改めて指令を出す。
「新醤油学園四天王に命ずる。学園生徒へ危害を及ぼす者を排除せよ!!」
思わずその威厳溢れる姿に見とれてしまう三人だったが…
「そうそう。誰も落とせなかったら、青山春樹は自動的に私が頂くからな。
…羨ましがるなよ」
最後の一言で台無しにしてしまう玲、だがそれが痴女クールクオリティ……
新醤油学園 青春編
「不穏なる東部味噌工業高校」
最終更新:2009年01月24日 02:20