囲炉裏真智子と青山春樹に対する、恥女クール校長からの魔の手は消えた。
しかし、ここに気炎を上げる一つの影…。
「はっきりいっておかしいです!!わたし、めいんひろんのはずなのに!!」
囲炉裏真智子である。
「なんなのですか、まったく!!さいしょのとうじょうじんぶつは、わたしとはるくんだけだったのですよ!?
でもるかさんにがちれずさん、まめあね、まめこにゆかさん、あげくにはまいせんせいとこうちょうせんせいにまでふらぐたてて!!
しかもわたしいがいのひとのきゃらがこいから、いつのまにか、くうきすんぜんのあつかいなんて、ひどくないですか!?」
冷やし甘酒を自棄飲み(肴は豆大福)しつつ大いに管を巻いていたが、しかしひとしきり憤慨した後には不気味を浮かべる。
「…しかし、だがしかしですよ。きょうのわたしはひとあじちがうのです。
われにひさくあり…。きょうはほんきで、はるくんをおとしにいきます。」
『さくせんだいいちだん…どきどきねおきあたっくです!!』
「はるくん…あさです。おこしにきまし………た?」
春樹の起床時間直前を狙い、彼の部屋に侵入を図る真智子。
…しかし、目標以外の人物と遭遇(エンカウント)。
「…………………なんで、あなたが春くんの部屋に?」
「……こちらのせりふです。がちゆりさん。」
先客:遠山理菜としばらく睨み合い、やがて取っ組み合いの闘争へ発展するのは時間を要さなかった。
なお、死闘を始めた彼女ら二人は春樹の布団が普段以上に膨らんでいることに気付かなかった。
「ん~~。ハルぅ~~~~(ぎゅっ)」
今を遡る事3時間、寝ぼけて部屋を間違えてそのまま寝てしまった春香がベストポジションをしっかり押さえていたりする。
この展開は豆田姉妹が乱入し、春樹が目を覚ますまで続くこととなった。
はいいん:しょどうのおくれがはいいんにちょっけつしました まる
『つぎこそ…。さくせんだいにだん。ちょうしょくじにべたべたあまえて、とっぱこうをきりひらきます!!』
「はるくん!!あ~んしてください!!こいびとどうしがやるよ…うな……。」
普段より3割り増しの甘え成分を混ぜつつ催促を行った囲炉裏だったが…。
次の瞬間、彼女は信じられない光景を見ることとなる。
「夕圭、口開けろ。」
「べ、別に大丈夫なのに…。…でも、あ~ん。」
「な、なんでわたしじゃなくてゆかさんにやってるのですか!?」
「だって夕圭、右肩を脱臼してるだろ?左腕で食べるの大変そうだし。」
「ごめんね。治ったら真智ちゃんにあ~んしてあげるから。」
『そ、そっちじゃないんです、ゆかさん~~!!』
はいいん:ゆかさんのけがをしつねんしていました まる
『…でも、いままでのさくはしょせんおーどぶる!!めいんでぃっしゅのだいさんだんです!!』
しかし、彼女は決意を新たに立ち上がる。囲炉裏真智子はうろたえない。
「はるくん!!いいおてんきですから、おさんぽいきましょう!!」
「あ~~。悪いが後にしてくれ。貴子ちゃんと買出しにいくからな。」
「…(新婚二人の)チャーミーグリーンな雰囲気に水を注すのは無粋。
…ちびおばさん、ここからは若い二人に任せるべき。」
「むきーーー!!!ちびなのはまめこもおなじなのです!!」
「まぁまぁ。…ただ、囲炉裏は買い物に連れて行けないな。」
はいいん:いぜんかいものにいったときに、かごのなかにこっそりおかしをいれたのがしっぱいでした まる
『れんぱいがつづいていますが…まださくはあります。きしかいせいのだいよんだんです!!』
「はるくん!おやつつくってほしいのです!!」
「あ~~。スマンが今、豆田の勉強を見ててだな…。…貴子ちゃん、悪いが頼めるかな?」
「そういうことだ!!あ、どうせならあたしの分も頼むぞ、貴!!
よく冷えた白玉ぜんざい、待ってるからな!!」
「いいですね、しらたまぜんざい!!まめこ!!おねがいします!!」
はいいん;しらたまぜんざいのゆうわくにまけました まる
『ずいぶんおいこまれてしまいました…。けんこんいってきのさいごのさくです!!』
「はるくん!!ちかくのゆうえんちではなびがあるそうです!!いっしょにいきましょう!!」
「あ~~。スマン。玲姉ちゃんに別の花火に誘われてたんだ。舞先生運転のサイドカーで行くから、定員は3人までだし。」
そして表から聞こえてくるバイクのエンジン音。やがてそのエンジン音が遠ざかっていったことで、囲炉裏は己の敗北を思い知らされた。
「わ、わたしのさくが…すべて…。そんな…orz」
ショックのあまり、意識がブラックアウトしてゆく。
・・・・・・・・・・・・・・・・
差し込んできた朝日に、囲炉裏は目を覚ます。
「あれ?…たしか、わたし。」
見慣れた自分の部屋…。時間を確認すべく昼内に目を巡らせると、昨日までにはなかった物が目に止まる。
「ん~~?あれ?なんです、これ?」
枕元に置かれていた、一つの風鈴とメモ。
『お前の行っていた花火、今日もやっている。一緒に行こう。 春樹 p.s 夏とはいえ、居間で寝てたら風邪ひくぞ』
「…えへへ。はるくん…。」
きっと居間にいた自分を抱きかかえてベッドまで送ってくれたのだろう。
風鈴を抱きしめる彼女の頬は、幸せそうに綻んでいた。
やがて囲炉裏主観ではあっという間に夜の帳が下りてきて…。
「はるくん!!はなびにいきましょう!!」
「あぁ。ルカたちの仕度も終わったみたいだし、行くか。」
「………………………」
「…?何だ、どうした?」
「るかさん…たちもですか?」
「ああ。みんなで行った方が楽しいだろ?」
囲炉裏真智子…。青山春樹を攻略する道程は、茨の道よりも険しいことを知った15の夜だった。
新ジャンル「レコンキスタ」新醤油学園野望編
最終更新:2009年01月24日 02:36