"クトゥルフ神話TRPG"のゲームの様子を描写し、すでに説明済みのゲームのルールの使い方もいくつか示す。
時代は1920年代である。探索者たちは悪名高いギャングのボス、モーガンがなぜ姿を消したのか調べている。
プレイヤーが自分のキャラクターのことを言うときにプレイヤーによって言い方にいろいろ違いがあるが、
みんなが同じ言い方をしなくてもキーパーはすぐに理解していることに注目してほしい。
キーパー:それで、君のプランは?
ポーラ:ボス・モーガンの家の周りをそっと探し回ってみましょうよ。なんか手がかりがあるかもしれないから。(探索者は全員ポーラのプランに賛成した。)
ジョー:じゃ、行こう! 僕が運転するから僕の発布モービル(20世紀初めの自動車)で行けばいいよ。通りには誰もいない?夜中に出発だ。
キーパー:誰も見えない。
キャシー:私の私立探偵のジェイクは裏口のドアのカギをこじ開けられるわよ
(プレイヤーたちはその計画に賛成した。)
ポーラ:私が見張りをしているわ。
アーノルド:僕はまだしばらく車の中にいるよ。僕の探索者はまだとっても神経質になってるから。
ジョー:僕はポーラと一緒に行く。
キーパー:ポーラ、<聞き耳>でロールして。
ポーラ:成功よ。
キーパー:君は家の正面のドアが静かに開く音を聞いた。<聞き耳>技能にチェック印をつけていいよ。
ポーラ:はい。(ポーラは探索者シートにチェック印をつけた。)私、ゴミの缶の陰に隠れるわ。(彼女はD100をロールした。)
<隠れる>技能はうまくいったわよ。それで、どうなった?
キーパー:いま夜だし、近くに街灯もないから、君はあんまりよく見えないんだけどね。
図体の大きい人影が家から出てきて、そっと通りの方へ歩いて行った。通りの真ん中まで来て、マンホールの蓋を開けて、中へ入って行った。
君は水のはねる音を聞いた。(キーパーは怪しい水音のような音を出した。)
ポーラ:その男はドアのカギを閉めて出たの?
キーパー:鍵を閉めるどころか、ドアは開けっぱなしになっているよ。
ポーラ:私、そっと戻ってみんなに伝えるわ。ところで、私の<隠れる>ロールに経験チェックはつかないの?
キーパー:それは駄目。暗すぎたから――。ほかのみんな、ポーラがドアが開いてるって言ってるよ。
ジョーとキャシー(一緒に):さ、中へ入ろう。
キーパー:君はどうする。アーノルド?
アーノルド:冗談でしょ。僕の教授が中へ入る?とんでもない。
キャシー:私たちが中へ入ってる間、教授に見張っててもらえばいいわ。
アーノルド:たった1人で? いや、彼も行くよ。
キーパー:中は真っ暗だ。
ポーラ:ジョー、あなたの懐中電灯を貸して。私が先頭に立って行くわ。みんなは自分の懐中電灯は決してね。通りから見られたくないでしょ。
キーパー:君たちはバンガローの玄関ホールにいる。左の方へアーチをくぐって行けば、居間に出る。
あるいは右側にある開いたドアを通れば、書斎に出る。
目の前には、上りの階段がある。階段の下には閉まっているドアがある。
懐中電灯の光で照らした床の上に、濡れたところの本は汚れていて、臭い。
ポーラ:足跡はどこから来ているの?
キーパー:それはわからないよ。みんな<目星>ロールして。
全員が階段の手すりの下側にある水滴を見落とした。さて、君たちどうしたい?
ポーラ:私は書斎を調べるわ。
ジョー:僕は居間を調べよう。
アーノルド:教授はホールのクローゼットを調べるよ。
キャシー:ジェイクは2階を見るわ。
キーパー:(みんなが分かれ分かれになったので、キーパーは1人1人別々に対処する。)ポーラ、ここに本棚がある。
でも本はほんの2,3冊しか入っていない。それから、鍵の掛かっていないファイリング・キャビネットが2つと、
鍵の掛かっているデスクが、1つデスク用のいすが1つと大きな皮の安楽いすが3つ。
ポーラ:まず最初にデスクを開けるわ。
キーパー:鍵が掛かっているからね。<鍵開け>ロールするか、抵抗表でSTR9に対抗してみて。
ポーラ:<鍵開け>が成功したわ。
キーパー:よし。君の<鍵開け>技能に経験チェックをつけていいよ。
デスクの中には、興味のある物が2つあった。1つは封のしてある封筒で、「遺言書」と書いてある。
もう1つは小さな会計帳簿で、「インスマス海運」となっている。今すぐ中を見たいかい。(ポーラは中をぜひ見たいと言った。キーパーは次にキャシーに注意を向けた。)
キャシー、ジェイクが階段のいちばん上に来たので、<幸運>ロールをして。
キャシー:成功よ。
キーパー:君は木の手すりの下に水滴が落ちているのを感じた。何か濡れたものが手すりに触れ、その水分が落ちてたまったような感じだ。
キャシー:注意しなきゃ。ジェイクは気をつけながら進むわ。
キーパー:2階にはベッドルームが2つと、風呂場兼便所がある。右側のベッドルームへのドアは開いてるよ。
キャシー:彼は開いたドアから中をのぞいて見ます。
キーパー:部屋中、血が飛び散っている。ちゃんと衣服をつけたボス・モーガンの死体がベッドの上に伸びている。頭のてっぺんが割られて、
中身が乱暴にかき出されている。君には全部がよく見えるよ。淡い緑色の燐光を発している足跡が部屋中についているからね。
ジェイクの<正気度>ロールをして。
キャシー:アーッ。失敗しちゃった。
キーパー:オーケー。ジェイクは正気度ポイントを失う。1D6をロールして。(キャシーはロールする。)ジェイクは4ポイントの正気度ポイントを失った。ジェイクはこのひどい光景に真っ青になって吐いてしまうけど、
その前に仲間に知らせるために大声で叫ぶことは忘れなかったよ。残りの君たちは、2階でジェイクが叫ぶ声を聞いた。
全員:急いでジェイクを助けに行く。
キーパー:よし。君たちも遺体を見るから、それぞれ<正気度>ロールして。(全員はそれぞれロールする。結果はさまざまだ。)
キャシー:ジェイクは気を取り直し、お風呂場を探して、吐いて汚したトレンチコートを拭きました。
ジョー:僕は死体のそばまで行って、死体を調べてみるけど、死体にはさわらないようにするよ。それから、みんなに血を踏まないように注意する。
ポーラ:私は2階のほかの部屋を調べるわ。
アーノルド:教授は君と一緒に行くよ。
キーパー:ジョー、君は死体の上にも汚れた水がかかっているのを見た。水は頭蓋骨の中にもたまっている。それから、死体の顔の残っている部分に、すりむいたような跡がある。<アイデア>ロールしてみて。
ジョー:成功だよ。何があったの?
キーパー:壁の上の方2mほどの所に、血と水で濡れた手の跡がついているんだ。かぎ爪の跡がよく見える。
手の平の幅は少なくとも20cmはあるけど、指は短くて太い。
こすれて消えたような所はないから、手の跡の輪郭を描くことができる。
ジョー:オーイ! 僕は今はなるべく声を殺すようにしてジェイクとポーラと教授をここへ呼んでるんだ。アーノルド、教授はカメラを持ってきている。
アーノルド:しまった! 何か忘れてきたと思っていたんだ。あ、そうだ、教授はノートのページを破って、手の跡に押し付けて、型をとることにした。
キーパー:教授は型が取れたよ。それからアーノルド、教授は反対側の壁に妙な記号のようなものが書かれているのに気がついたよ。近づいてよく見ていると、記号は催眠効果があるような渦を巻いているように見える。
アーノルド:ほう。彼はもっとよく見ていいかな。
キーパー:いや、その時間はないよ。みんな、自分の探索者のために<聞き耳>ロールして。(ジョーとアーノルドとキャシーは失敗。ポーラは成功。)ポーラ、君は通りでガランガランというような音を聞いた。ほかの者は何も聞かなかった。
ポーラ:あの音は何かしら。マンホールのふたが弾んで転がったんじゃないといいけど。
アーノルド:僕の教授は窓から外へ飛び出すことにするよ。
ポーラ:私は懐中電灯でベッドルームのドアの外を照らして、何物ががってくるのか見るわ。
キャシー:ジェイクは38口径スナップ・ノーズを抜いて、ポーラの肩越しにのぞいているわ。
ジョー:僕はジェイクとポーラのうしろで縮こまっているけど、何かあったときのためにトレンチ・ナイフだけは取り出したよ。
キーパー:アーノルド、君の探索者は窓の方を向いてうしろ向きになっているから、みんなのすることが見えないわけだ。僕がみんなに場面を説明する間、ちょっと隣の部屋へ行っててくれないか。(アーノルドは素直に台所へ缶ジュースを飲みに行った。)
キーパー(は続ける):部屋に入って来たのは、人間のパロディのような、恐ろしい奴だった。身の丈は2mを超え、手足は変なぐあいにねじ曲がっている。顔はシワの塊と言っていい。
目鼻だちは全然見えない。ブヨブヨした気持ちの悪い茶色がかった緑色の皮膚をしていて、手足の先から腐った肉が垂れ下がっている。
しかも汚い茶色の水を滴らせている。前に見た水と同じだ。君たち3人は<正気度>ロールしてくれ。失うポイントは1/1D10だ。
ジョー:僕は成功。
キャシー:駄目だったわ。でもジェイクが失ったのは3ポイントだけよ。
ポーラ:ワァ。どうしよう! 私どうなるの?9ポイントも失っちゃった。
キーパー:ちょっと見せて。キーパーは彼女の探索者シートを調べた。ポーラ、君の探索者には正気度ポイントが76ポイントあったから、彼は不定の狂気にはならないよ。
でもD100で[INT×5]より高い値を出さないとたちまち気絶して倒れることになるよ。ポーラはロールで「04」を出したので、彼女の探索者は気絶した。
キーパー(は続ける):ポーラの探索者は懐中電灯を持っていたから、懐中電灯は床をゴロゴロ転がって、部屋のあちこちを乱暴に照らしだした。
アーノルドの教授もこちらを向いた。窓には鉄格子がはまっているのがわかったんだ。前に調べておけば、ちゃんとわかったはずだったんだけどね。外へ出る唯一の方法は、奴のそばを通り抜けるほかはないということだ。
一同(混乱状態で):いすで鉄格子をガンガンたたいて開けよう! 私たちの懐中電灯はどこ? あれ何者だか知ってる? 顔を狙って撃ってやる。 助けて! 助けて!
窓の鉄格子には鍵が開いて前後に動かすことができるのだろうか。
壁に書かれている記号は《門》なのだろうか。モンスターは襲ってくるだろうか。
ポーラの探索者は会計帳簿と法的書類を持ってくることを忘れなかっただろうか。ジェイクの38口径リボルバーはモンスターに対して効果があるだろうか。さあ、どうだろう。
「繰り返し述べるが、抑え難きものを招来してはならぬ。招来された者は何時に仇なし、汝の最強の秘法をも無力するからだ。
招来するは力なきものにせよ。強大なるものは応うる事は欲さず」
――H.P.ラヴクラフト『チャールズ・デクスター・ウォード事件』
最終更新:2016年07月06日 15:03