198 名前: 1/3 [sage] 投稿日: 2008/04/05(土) 11:53:51 ID:uxmaTieM
私のバイクの師匠がとあるSNSに投下した話を許可もらって転載します。
海外出張から帰り、なんとか自分を取り戻しつつ有った先週火曜日。
疲れた精神と肉体を癒す為有休を取り、朝寝を楽しんでいた午前10時。
古い友人から数年ぶりの電話が鳴った。
「久しぶり!元気でやってんの?」
俺が問いかけると、彼が答える。
「俺は元気だけど...」
言い淀む彼を不振に思いつつ、俺が返す。
「もしかして、いよいよ彼女と結婚か?」
彼女は、自分が東京に住んでいた17年前からの友人で、東京在住時は自分と付き合っていたこともある。
彼女の実家は京都であり、自分と別れて京都に帰ってから今の彼と付き合いだした。
その後、いつの間にか二人と自分はつかず離れずの気の置けない友人となっていった。
しかし、懐かしい電話は訃報だった。
彼女がガンで亡くなったと彼の声が伝えた。
俺は彼女がガンに冒されていた事すら知らなかった。
驚き、詰る俺に彼は答えた。
彼女が、誰にも知らせないで欲しいと言っていたと。
ガンなんか治して、再会した時に「実はガンだったんだよ~」
と驚かせるつもりだったと。
そして、最後まで諦めずに闘い、愛車であるヤマハ・ディバージョン600の車検も今月頭に更新したばかりだったという。
葬儀への出席を伝え、電話を切った俺はしばし呆然としていた。
会社に電話し、休みを貰う。
そして、喪服をバッグに詰め込んで新幹線で京都へと向かう。
駅には彼が迎えに来てくれていた。
車の中で彼がポツリポツリと彼女の事を話してくれた。
もう一度、バイクで北海道へ行きたがっていた事。
ディバージョンのオーバーホールを俺に頼む積りだった事。
東京に住んでいた時のバイク仲間と朝まで飲みたいと言っていた事。
通夜、彼と俺で一晩彼女のそばで過ごす。
彼は、来年ガンを克服したら結婚する筈だったと言う。
その時、彼女は俺に友人代表の挨拶を頼む積りだったそうだ。
新婦の友人代表に男、それも元彼がスピーチするなんて前代未聞じゃないのかと俺達は笑った。
ひとしきり笑った後、彼が話し出した。
彼女がこう言っていたと。
彼女にとって、俺は元彼や友人という域を超えた、
言うなれば戦友とでも言うべき存在なんだと。
共に笑い、泣き、喧嘩し、仲直りし、離れて暮らし始めてからも
ずっと気に掛けてきた、戦友なのだと。
その言葉を聴いた途端、俺の目から涙が止め処無く溢れ出してしまった。
翌朝、出棺し、火葬場へ向かう。
あっという間に彼女は壷に納まってしまった。
そして告別式。
広い庭に面した客間が開け放たれ、彼女の遺影に対峙するかのように庭へ置かれたディバージョン。
彼女がこよなく愛し、共に8万キロを歩んできたバイク。
主を失ってしまったディバージョンは、途方に暮れ泣いているようにも見えた。
葬儀が終わり、彼と彼女の家族に挨拶してから俺は浜松へと帰ってきた。
なんだか自分が本当に日本に帰って来たのか実感も無いような状態で呆然としながら家でボケっとしていると、彼から電話が入った。
彼女の家族と、彼の意向で彼女の愛車だったディバージョン600は遺品分けとして俺に貰って欲しいと言う事になったと。
俺はちょっと迷ったが、それが彼女の遺志でも有ったと聞き
謹んで頂く事にした。
元々、彼女が中免取ったばかりでバイク選びで悩んでいた時に俺が勧めたのがディバージョン400で、その後限定解除した彼女は400から600へと乗り換えたのだ。
14年間、8万キロを彼女と過ごしたディバージョンは
一昨日、彼が乗って俺の元へとやってきた。
風・旅・美をテーマに開発された、ウインドツアラー・ディバージョン。
戦友から託されたこのバイク、維持できる限り、ずっと走らせ続けていこうと思う。
さらば、戦友。いつか、また逢おう。
END
ちなみにもちろん実話だそうです。師匠、大好き(つДT)
最終更新:2009年01月18日 14:01