470 名前: 774RR [sage] 投稿日: 2008/04/27(日) 22:17:15 ID:GdxXjIcT
ごめん。みんなはGW華やかなりし状況だろうけど、この連休中仕事尽くめなサービス業の俺が負け組覚悟で書き込んでみる(w
もう8年前の雪解け時期だね、母方の祖父が90年ちょっとの生涯を終えたんだ。
孫の俺が言うのも何だが、物心ついた頃からとにかくこの祖父の笑顔なんてものを見た記憶が全くない。
同じ敷地内に住んでいるためちょくちょくすれ違う機会もあったけども、
俺が挨拶しても祖父は杖をつきながら口をへの字に曲げて
「うむ」
と軽く呟く程度だった。
この祖父、裸一貫からの叩き上げで財を成し、経営する会社を地元じゃそこそこの企業にまで持ってきた人物である。
しかしその手のワンマン経営者にありがちなタイプで非常にお金に煩く、強引な経営手法も相俟って勢い、敵も少なくなかった。
まるでディケンズの掌編「クリスマス・キャロル」に登場する守銭奴スクルージを地で行くようなじじいだったよ。
そんなわけだから俺も当然、この祖父を忌避してた。何しろ顔を合わせると前述の如くムスッとしてるか、
たまに口を開くと25過ぎて所帯を持たずにお前は何やってんだとか、口の利き方ちゃんとしろとか、
親が馬鹿だからお前は生半可なんだとかね、もう
「いい加減にしてくれよ」
ってな感じ。
だから祖父の訃報を聞いた時も、その3日後にバイクツーリングを計画していた事もあり、
「間の悪い時にくたばるなあ。最後の最後まで迷惑なんだよもう」
と、不謹慎ながらも思ってしまったものだった。
葬儀ん時には案の定、商売がらみの弔問客しか来なかったな。友人なんてほんの数えるくらいしか・・。
「ま、あのじじいだから仕方無いか」
と俺は心の中で苦笑してたね。
そうこうしているうちに慌ただしい葬儀も終わり、俺たち遺族が今は亡き祖父の家でひと息ついていた時のこと。
祖父の部屋を整理していた俺の叔母が突然素っ頓狂な声を上げたもんだ。
「ありゃ、父さん(=祖父)のお棺にこれ入れてあげるの忘れちゃった!」
叔母の手には、みすぼらしい革製の紙入れが握られている。
「これね、父さんが若い頃、奉公先から初めて貰ったお駄賃で買った財布なんだって。もう70年以上も使ってきたんだそうよ」
「へ~え、物持ちがいいんだな。吝嗇家だった爺さんらしいや」
と、何の気無しにその財布を受け取る俺。
財布の中を覗いてみると、いくらかのお金と名刺、そしてセピア色にくすんで縁がボロボロになってる一枚の白黒写真が入っていた。
「何だ?この写真・・」
その写真を見てみたら、そこには俺が未だかつて見た事も無い、弾ける様な笑顔で幼児を肩車している初老の祖父の姿があったんだ。
そして、肩車されてる幼児は
・・・遠い昔の俺だったよ。
呆然としてその写真を見つめる俺に向かい、今度は祖母がひと言漏らす。
「その写真ねえ、爺さんがいつも肌身離さず持ってたんだよ。この他にもアルバムもあるよ」
そう言って祖母が引っ張り出してきた古ぼけた一冊のアルバム、その中には俺を背に乗せて楽しげにお馬さんをしたり、
俺を膝に抱えて笑ったりしている祖父が何人も何人も・・・。
「このアルバムはね、『俺とあいつとが一緒に写ってる写真だけを貼っ付けた俺だけの宝モンなんだ』って
爺さんよく言ってた。何しろ初孫だっただろ?お前が生まれた時のあの人の喜びようったら凄かったんだから」
「ふざけちゃ困るよおい。あの傲慢でぶっきらぼうを絵に描いたみたいな爺さんがだぜ?」
「嘘じゃ無いよ。あの人、お酒を呑むといつも決まってお前の話ばっかり。
最近じゃあ、
『あいつ、いつ結婚するんだろうな。俺はあいつの子供を抱いてみたいんだ、誰よりもあいつに授かった曾孫と一番遊んでみたいんだよ』
って愚痴ってたねえ」
馬鹿なじじいだな。曾孫なんか親族にいくらでもいるだろうが。何で俺なんかの子供を一番見たいなんて言うのかよ・・・。
「爺さんね、今のあんたよりちょっと歳くってた頃にバイク乗ってたことがあったんだよ。所帯持って何年目だったろうね、
商売も調子に乗り始めてあの人も調子に乗ったもんか、陸なんとかってなバイク大枚はたいて買っちゃってね。
2年以上乗り回した挙げ句の果てに道端から出てきた荷役馬を避けようとして転んじゃったの。
あれからずっと杖ついてるのはその時の怪我のせいなんさ。この写真見ると笑ってるけど、お前を背中に乗せてお馬さんしてるあの人、
本当はちょっと膝を曲げてるのも痛かっただろうにねえ。バイク好きなあんたを見てると、
昔の自分を思い出してひとこと言いたくなっちまうのかね、爺さん」
これまた初耳じゃねえか、そんな事・・。
「こんな事も言ってたよ。
『俺もな、正直あいつに慕われる生き方してきたわけじゃないし、そんな俺をあいつが避ける気持ちもわかるんだ。
俺は口下手だからなあ、どうしてもあいつを見てると小言が先に出ちまうよ。
けどな、憎まれてもいいからあいつにだけは俺みたいな嫌われ者になって欲しくなくてつい、な・・・』
って。ちょうど良かった、お前、形見分けだと思ってその紙入れ、貰ってやってくれないかい?その方が爺さんも喜ぶと思う」
「・・・ちょっと外の空気吸ってくるわ」
居心地悪すぎるよこの雰囲気!
踵を返して表に駐めてあるポンコツ中古SR500のキックアームを蹴り込めば、単気筒独特の重苦しい咆吼が春の大気を震わせる。
大通りを抜け、俺は郊外のワインディングを路面の残雪を除けながらひた走りに走り続けた。
ちょっとシールドが曇ってきたな。シールドどころか自分の瞼もちょっと、な・・・。
「おい、じじい!今さらながらそんなエピソードを遺族に語らせるなよこの野郎!俺が生まれるのが5~60年ほど早けりゃあ、
いいバイク仲間になってたかも知れねえってのに。・・・いずれ俺もそっちに行くだろうから、
その時は一緒にツーリングでもしましょうよ。明治生まれのツ○デレじじい!」
追伸:まだ爺さんの墓前に曾孫を連れて行けない己の女運の無さを呪う orz
最終更新:2009年01月18日 21:13