22 名前: 774RR 投稿日: 2008/01/26(土) 12:19:16 ID:vaauLX5w
全部、実体験のガチ話です。
大学にまだ入ったばかりの頃、体育館で、履修についての説明を受けていた。
上京したばかりだったオレはまだ友達もおらず、ひとりで説明を聞いていた。
周りには沢山の都会っ子。みんな地元の仲間とはやはり雰囲気が違う。
ベタな感想だが、「これが東京かぁ~」という感心にもとれる印象だった。
やはりひとりで行動するのは寂しい。友達を作りたいと考えていた。
同じ学科の人間は、同じ色の履修科目表を持っているのでそれを目印に思い切って声をかけてみることにした。
すぐ隣にオレと同じように、ひとりで説明に聞き入る奴がいた。
それがタクだった。
オレは話し掛けた。
「ども、ひとりですか?」
するとタクは
「あはは、地方から来たばっかなんで」と
苦笑しながら答えた。
同じ境遇の人間に出会えた。それだけで大きな安心感に包まれた。
話し込むうちに、お互いのいろいろな共通点がわかった。
東北人であること、一人暮らしの家がすぐ近くであること…
それからはお互い親友のようにいつも一緒の時間を過ごした。
昼は一緒に取り、受ける講義もふたりで相談して決めた。
時には揃ってサボったりもした。まるで恋人同士だった(笑)
やはりまだまだ高校生とは変わらない会話も当然ある。
今までの恋愛経験や、趣味の話など、他愛もない話だらけだった。
いつしか、タクの彼女の話になった。
話を聞いていると、決して談笑とはなり得ない内容だった。
タクの彼女は地元の子なのだが、悩んだ挙げ句、東京の大学への進学を決めたらしい。
遠距離になってしまうのが嫌な彼女とは、一時別れ話にまでなったらしいが、
最後には理解してくれたようで、今も遠距離で連絡を取り合っている。
しかし、彼女は白血病だった。そう長くはないらしい。
その話を聞いた瞬間は、正直、心の中で"冗談だろ"とつぶやいてしまった。
しかし、話を聞いていると、どうやら冗談という雰囲気ではない。
そんなドラマみたいなことが本当にあるのか?
からかわれてるのかな?
でも本当なら、なんで彼女を置いてきたんだ?
その夜は、そんな想いを交錯させながら、眠りについた。
次の日もその後も、あの話が冗談だと打ち明けられることはなかった。
このモヤモヤ感を打ち払いたいと思っていたオレは再度聞いた。
「ああ、ホントだよ。ドラマみたいっしょ?でもちゃんと連絡とれるからさ」
タクはどこか寂しそうな笑顔でそう答えた。
しばらく気まずい雰囲気が流れたが、いつの間にかいつもの二人に戻っていた。
オレには彼女がいなかった。その当時はいたが、ろくな恋愛ではなかった。
タクと彼女の話を聞いていると、とても羨ましかった。
ただ、彼女を地元に置いてくるなんていう気持ちは、
まだ子どものオレには到底わからなかった。そのことでタクと討論したこともあった。
でも、しあわせになってほしかった。
ある日の深夜、ケータイが鳴った。タクからだ。
電話に出た瞬間、いつもと違うタクの様子に気づいた。
「どうした?もしもーし」
……。
タクは何も言わない。
オレは電話を切り、すぐ近くのタクの家に走った。
インターホンを鳴らすと、くしゃくしゃの顔のタクが出てきた。
タダごとじゃない…と誰もが悟れる様子だった。
「どうした?何があったんだよ?ちゃんと聞くから」
何度もそう呼びかけ、タクはやっと口を開いた。
「アヤカ(タクの彼女)が、危篤だってさ」
一瞬半笑いに見えたほど、ショックな様子だった。
オレは固まって、動けなかった。どうしたらいいかわからなかった。
かける言葉も見つからなかった。頭の中で、次の言葉を必死に探した。
やっと出た答えは、
「行こう」
だった。
タクは意味がわからない様子だった。オレにもわからない。
ただそれは、彼女に会いに行こうという意味以外の何ものでもなかった。
「行きたいけどさ、真夜中だよ?バスも電車もないし」
タクはあきらめていたが、オレは朝まで待てなかった。
「バイクがある。オレので行こう!実家からここまで来たから、道は大丈夫!」
内心不安はあったが、直感でそれが最善だと思った。
幸い、まだ夏が後半に差し掛かった8月の下旬だった。
否応なしにふたりで福島を目指し、夜の闇に消えた。
間に合うかはわからない。でもジッとしているよりはマシだと、何度も説得しながら走った。
彼女が死ぬなんてことは考えない。だけど、もう会えないかもしれない。
まるで自分の彼女のことのようだった。
オレは昔、付き合っていた彼女を振った。
嫌いだからとか、ネガティブな理由で振ったわけじゃない。でも、なんとなく自由になりたかった。
そのときは、"好き"なんて言葉の意味はわからなかったのかもしれない。
別れてから、別れたことを後悔した。またやり直そうと思った。
でも、彼女にはもう別に好きな人がいた。手遅れだった。
そんな過去をヘルメットの中で思い出していた。
後悔はもうしたくない。
しかし、栃木県に入ったあたりで、タクのケータイが鳴った。
彼女のお母さんからだった。
彼女は亡くなった。
最後にタクと話した言葉は、
「ディズニーランドに行きたい」だった。
オレはタクの顔を見て、状況を悟った。
間に合わなかった。ドラマと現実は、やっぱり違った。
国道の傍らで、数十分、途方に暮れた。
タクは泣きながらの笑顔でオレにこう言った。
「ありがとう。ツーリング最高だった」
そんなタクを見て、オレは立ち上がり、真っ暗な空を見上げて号泣した。
どうしても二人を会わせたかった。
どうしてそんなに急に彼女は逝ってしまったのかわからなかった。
どうしてタクがこんなに悲しまないといけないんだ。
こんなに良い奴なのに、なにがいけないんだ。
あまりに酷い運命だ。何にあたれば良いのか全然わからなかった。
最終更新:2008年02月24日 22:41