『うち、今いじめられててさ……』
「うん」
彼女からいじめられてると聞かされた。
それを聞いた時、僕は君を守りたいと思った。
「それより今日誕生日でしょ?」
『うん、覚えてたんだ』
「どこ行きた……へっしゅ」
『あっはは、なにそのくしゃみ!』
「な、なんだよ、どこ行きたい?」
彼女は周りをキョロキョロ見回すと、
『あ!あそこのお店行きたい!行こう!』
そう言って、信号が赤にもかかわらず、
子供みたいに横断歩道を飛び出した。
「おいっ、危ないぞっ」
『大丈夫大丈夫!早く行こ!』
「えっ、ちょ、まじであぶな……ぃ……」
その時はたまたま、運が悪くて、車がやってきた。
『え?…………あ』
彼女が振り返った時にはもう遅かった。
そして、次の瞬間。
――――――――――キィィィィィィィィィッッ
「―――――っ、あああぁぁぁぁぁあああぁぁぁあぁ」
僕は交通事故で彼女を失いました。
*
彼女は神様を信じていた。
『神様はね、いるんだよーほんとは』
いつか、僕がテストで悪い点数をとったときに、神様は本当はいないんじゃいか?
って思ったことがあって、そのときに言われた言葉だった。
事故の後、僕は何度も神様の存在を否定した。
そのたびに彼女がひょっこりやってきて、
『神様はいるんだよ!』
って言いにきてくれるんじゃないかって、何度も思った。
でも現実になることはなくて、そのたびに悲しんでいた。
3年経っても変わらない。いや、変われないのかもしれない。
僕はまだ彼女のことが、今でも好きだ。
3年前の、あの事故が起きた横断歩道に花束を置いた。
10月5日、彼女の誕生日でもあったこの日。
彼女との思い出を振り返りながらなんども願う。
でも、わかりたくないけど、これだけは揺るがない事実。
彼女はもういない。
どんなに君に会いたいと願っても、
どんなに君と話したいと願っても、
どんなになにを願っても、
君はもういない。
「へっしゅ」
また涙が出てきた。
最終更新:2009年12月28日 16:03