第一話 - 在 の 小 説

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今両想いで付き合い始めた彼氏がいる。

でもその彼氏といると気持ち悪くなる。

モヤモヤした黒いものが、心臓から全身に流されていくような感覚になる。

「あ、ちょっとごめん」

彼氏が、携帯電話を持って席を離れた。最近はいつもこう。

私と話してると決まって、携帯電話に電話がかかってくる。

二股してるんじゃないの？

よく友達に言われてる。でもそんなわけない。

両想いで付き合い始めたんだよ？そんなわけない。

二股なんてしないって思ってるから、電話の相手がだれだかなんて聞かない。

でも、気分は悪くなる一方で彼が席に戻ってきたのと同時にトイレに向かった。

「おい亜紀、大丈夫か？」

そういう彼に返事もせずにトイレに駆け込んだ。

便器に顔を向けながらも、なかなか吐けない自分にイライラして、便器を蹴った。

でも、得たのは足の痛み。

好きな人と一緒にいるはずなのに、なんで気持ち悪いんだろう。

そう思うといつも、今日はたまたま具合が悪かっただけと言い聞かせる。

そんな言い訳がましい自分にもイライラして、また便器を蹴った。

でもやっぱり得るのは痛みだった。

気持ち悪い気持ち悪い。イライラする。めんどくさいめんどくさい。

私は吐かずに立ち上がると彼氏のいる場所へ行った。

ずかずかずかと歩いてく。周りの音は気にならない。

煙草の臭いも気にならない。

そして、携帯電話をいじってる彼氏の前に座った。

彼は携帯電話に夢中で私に気づいてない。

あぁ。相変わらず気持ち悪くなる。

私は一呼吸置くと、話を切り出した。

「別れよう」

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