サっとその場から離れると、その男の姿を見た。
そこそこの身長で、あたしより少し大きいくらい。
「うっ助けて…くれ…」
後ろから、私が射殺したはずの標的がこの男に助けを求めた。
「もしかしてあそこにいる死に損ないが今回の標的?
……もしかして、君が殺したの?」
私が持ってる銃を見ると、そういった。
笑顔だったのが、少し無表情になった。
私は銃を相手に向ける。でも、打つ気はない。
「……それがどうしたのよ」
「困るんだよねーそういうの。俺の仕事をとってほしくないわけ」
男がじりじりと近寄ってくる。私は、出口の方へ少しずつずれる。
男はニヤリと笑うと、さっと私にまたがった。
「君を殺さなくちゃいけないな」
「……なんで?」
できるだけ時間を稼ぐように、質問を長引かせた。
男は、口角を下げることなく続ける。
「でも、君はかわいいんだ。もったいない」
私の長い髪を手ですくうと口に持っていった。
どうしよう、逃げられない。
ここから出口まで最低でも30秒はかかる……。
その間に絶対殺されてしまう。
「せめても、一回俺のものになってからでも……」
そういうと、私を押し倒した。
「手が早くないかしら」
「そんなこと関係ない」
男の手は、私の頬を伝う。
「あなたの名前は?」
「在江」
リョウスケ……あとで調べよう。
「あたしの職業知ってる?」
「んー、興味ないな」
リョウスケの返事と同時に、出口の方へ移動した。
「ありゃ、逃げられた」
「つかまるつもりはない」
注意深く周りを見回す。リョウウケと私以外、だれもいない。
……よし、逃げるぞ。
そう決心すると、出口から外へ飛び出した。
「でも……また会うよ、きっと」
涼介は呟いた。
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最終更新:2010年05月20日 19:47