2年11ヶ月目>>298から抜粋。
298 :名無し募集中。。。:2009/12/06(日) 23:19:03.41 O
「ない!!ないー!!」
引っ越しの準備をしている久住の部屋から声がする。
どうしたものかと行ってみると、半ベソをかいて部屋中を探し回る久住がいた。何を探しているのか聞いても、もはや聞く耳など持たない。とても大事なものを無くしたようだ。
「なあ、一度冷静になって思い出してみろ。」
「うるさい!いつでも小春は冷静!」
こんな押し問答を繰り返し、もう俺にはどうすることもできない。そんな時、騒ぎを聞きつけた光井がやってきた。
「そんな大事なものやったら、もうバッグに入れたんちゃいます?きっと入れたんを忘れてるだけですわ。」
なるほど。さすがは光井。とても久住と同い年とは思えない。光井はバッグの中を探し始めた。
「ジャージにタオルに、これは化粧品ですやろ、あ!これなんですの?」
光井はバッグの一番下から小さい袋を取り出した。と同時に、久住が嬉しそうな声を上げて光井に駆け寄る。
「これこれ♪」
そう言って久住は袋から何かを取り出した。
星形のピアスだ。
「久住さんこれ…」
「みっつぃが小春の誕生日にくれたやつだよ。絶対無くせないんだから。」
誕生日の前日には喧嘩をしていた2人を仲直りさせたピアスだ。同い年の2人の絆を象徴するようなものだろう。
すると、久住はその袋の中からまた何か取り出した。
「みっつぃ、お願いがあるの。これ、頼んでいい?」
「これは…朝顔の種ですやん!」
「そう!今年2人で育てたやつのだよ。でも、よく考えたら小春のアパートじゃ育てられないから、小春の分もお願いしていい?」
「任せてください!きっと、久住さんみたいな元気な朝顔を咲かせますよ!」
「じゃあ、来年の夏になったら見に来てもいい?」
「もちろんですやん!来てください!約束ですよ。」
「うん!約束ね!」
2人はそう言って笑いあった。
来年の夏。
光井が育てた立派な朝顔を見上げる、少し成長した久住を見る事ができるようだ。
最終更新:2010年03月17日 16:56