2年11ヶ月目>>380から抜粋。
380 :379:2009/12/08(火) 00:50:24.87 O
我が家の朝は賑やかだ。キッチンには新垣の声が響く。
摘み食いをした道重を怒りつつ、手伝いに来た高橋は邪魔になると追い返したようだ。その横で光井はせっせと皿を運んでいる。
一方リビングでは、バナナが無いとジュンジュンが俺を殴り、その様子をリンリンが撮影している。
そんな騒ぎを余所に、亀井はコタツから顔だけを出し、その隣で田中は丸くなり、2人で寝息を立てている。
皆が顔を合わせる、いつも通りの朝。だが、この少しの違和感は何だろう。
ふと、新垣が誰かを呼ぶ声が聞こえる。この家にはいない誰かの名前が家中に響いた。
一瞬の沈黙の後、皆の動きが止まってしまった。
・・・ガシャーン!!
光井の手から滑り落ちた皿は、沈黙を切り裂くように轟音を立て、床に散らばった。
光井が手を滑らせることなど無いことは、皆知っている。
しかし、皆でぎこちなく光井をからかい、いつも通りを装った。動けなくなっている新垣の姿が、皆に精一杯の努力をさせた。
新垣にかける言葉は無いか。必死に考えるも、すぐにそれは無駄だっだと気づいた。
高橋が1人キッチンへ向い、優しい笑みを浮かべて新垣に声をかけていた。
新垣は強がって高橋を追い返そうとするも、涙が溢れて言葉が出てこないようだった。
高橋は黙って新垣の頭を撫でると、不慣れな手つきで料理を始めた。
リビングでは、皆と一緒に光井をからかった俺が半殺しにされかけ、それをリンリンが撮影している。道重とジュンジュンは皿を片付け、亀井と田中は再び寝息を立て始めた。
そこには、いつも通りの騒がしさが戻っていた。
いつもより少し遅い朝食。
焦げた目玉焼きも薄味の味噌汁も、どんなに高級な料理よりも良い味を出していた。
何故か1人分余った料理。
誰の分でもない朝食が、誰も座らないテーブルに置かれていた。
最終更新:2010年03月17日 17:12